入浴
そろそろ大きく動くかも?
俺が目を覚ましたのは王城の自室にあるベッドの上だった。窓から外を見ると既に日は落ち、満天の星が輝いている。クローゼットにある腕時計を確認すると、21時頃を指していた。
もうこんな時間なのか。今頃他の奴らは夕飯食ってんのかな。腹減ったわ。
「失礼しまーす」
声を潜めながら入ってきたのは、もちろんサネルだった。その手にはお盆に乗せられた料理が。
「カズマ様!目が覚めたのですね!よかったです」
「あぁ。随分長い時間寝てたみたいだな、俺。」
「昼前からずっと眠ってましたからね。皆様心配されていましたよ」
「そんなに寝てたのか。道理で腹が減ってるわけだ」
「あ、失礼しました。ここで召し上がりますか?」
「そうするかな。せっかく持ってきてくれた訳だし」
「わかりました!少し待っていてくださいね」
そういうとサネルは食事をそっとベッドの上に置き、クローゼットを開けて台を取り出した。
「クローゼットにそんなものが入ってたのか」
「そうなんです。食事は自室で取りたい、という方もいらっしゃるのですべての部屋にありますよ…はい、どうぞ!」
あっという間に机と椅子が組み上がり、テーブルクロスが引かれた。流石メイド、恐るべき手際の良さ。
そうして俺が夕食をとっていると、ドアが空いて秋人、沙那、榎本が入って来た。
「よぉお前ら」
「和馬!目ぇ覚めたんだな」
「ああ。お陰様で腹が減っててな」
「まあ、1日中寝てれば誰でもお腹減るよね」
「それで、怪我とかはしてないのよね?」
「大丈夫だ。少し体はダルいけど、怪我はしてない。あ、サネルありがとう」
コップに冷たい水を入れてくれたサネルにお礼を言いつつ、話を続ける。相変わらずご飯が美味しい。
「そうだ!お前、あのシルバーウルフにどうやって勝ったんだよ。調べてみたらAランクの魔物だったぞ」
「いや、俺なんて何もしてなくて。何回か攻撃はしたが、倒したのはバランさんだぞ?」
「嘘つかない。バランさんは貴方を連れて帰ってきてくれたの。そのバランさんが貴方が倒したと言ったのよ?あれを使ったの?」
おい沙那ぁ!身体強化の事は黙ってろと!
「ん?あれって何だい?」
「いや、何でもないぞ榎本!
そ、そういえば!シルバーウルフの素材って回収できたのか?」
榎本がいぶかしげに聞いてくるが、強引に話題を変える。少し強引すぎたかも知れないけど。
「騎士団の人達が回収してたぞ。あの毛皮凄く貴重だから需要があるんだってな」
「やっぱりそうなのか。少し貰えねえかな…カッコいいから」
「とにかく、体は痛まないのね?」
「ああ。心配させて悪かったな」
「明日にでも話聞かせてくれよ!」
「食事中に押しかけて悪かったね。ちゃんと休むんだよ?」
「りょーかい。また明日な」
ドアから出ていく3人を見届け、俺はため息を吐く。
「明日面倒くさそうだな…」
「ふふっ、カズマ様はお友達と仲がよろしいんですね」
「まあ、そうだな。ずっとつるんでるから。ごちそうさまでした」
微笑むサネルに返事をしながら、フォークとナイフを揃えておき、ナプキンで軽く口を拭う。
「それでは片付けて来ますね。お風呂にははいられますか?」
「そうだな。入っておきたい」
「わかりました。先にそちらへ行きましょう」
「それではごゆっくりして下さい」
「おう、ありがとうな」
俺は脱衣所で服を脱ぎ、浴場へと足を踏み入れる。見ると、そこには先客がいた。
「国王様とバランさん?」
「カズマじゃねえか。お前、目が覚めたんだな」
「ええ、お陰様で。バランさんもお元気そうで何よりです」
「…国王様がいらっしゃるからその口調なのもわかるが、気持ち悪いなお前」
国王様は柔らかい笑みを浮かべつつ、話しかけてきた。
「そういえば初日にバランが名前を呼んだものがいると聞いたが、あなただったか」
「そうです。あと俺のことは呼び捨てで、軽い口調で大丈夫です、国王様」
「そうか、わかった。ならカズマと呼ばせてもらおう。カズマもこの場においては素でいいぞ」
「良いんですか?では遠慮無く」
「お前遠慮なさすぎるだろ…」
切り替えの早さにバランさんが苦笑を浮かべる。そう、これが俺の持ち味だ!
「まあいいだろうバラン。ところでカズマ、シルバーウルフの件だがよくやった」
「ああそうだ。あれ、バランさんが倒したって言っといて欲しかったんですけど」
「ふむ。カズマには何か秘密があるのか?それも他の勇者殿達に言えないような」
「まあ言ってる奴は居るんだけどな」
そう言って俺は二人に二度目の異世界であることを説明する。
「道理で。戦い方はわかるのか?」
「いや、そうではなく。スキルはあるんですけど、記憶は封印されてるんだよ」
「それは神に、なのか?」
「本人はそう言ってた。俺の心も読んでたし、何より力を分けてもらったからな」
「神の力だと!?そんな事をサン=テスタの重鎮たちに知られたら、大変なことになるぞ...」
サン=テスタというのは、四大国の一国で正式名称は『聖国サン=テスタ』。唯一神を信仰してるそうだが、神に名前は無いという。
神は自分たちの心の中にいる、という教えだそうだ。都合よく解釈されないよう、取り締まりはされてるらしいが。
「え、マジ?」
「ああ。これはマズイな…」
「そこまで?一体何があるんだ?」
「…下手すれば国際問題だ」
「…へ?」
「とにかく面倒くさいんだよ、あいつら。バレたら使徒に担ぎ上げられるぞ」
「そうなんだよなぁ、徹底的に隠さねぇと」
宗教って怖いのな。俺は使徒なんて柄でもないし、やっぱり隠していかないとダメみたいだな。
あ、終わりの台詞言ったの国王様ね。国王様、結構素が出て来たのかも。
「ところでカズマ、レベルはどうなった?俺は久しぶりに2も上がったぞ」
「あ、そういえば見てない。ステータス」
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カズマ イガラシ ♂ 1*歳
人間ヒューマン レベル:24 21↑
生命力:430 210↑
魔力:545 315↑
筋力:430 210↑
物攻:265 105↑
物耐:265 105↑
魔攻:311 147↑
魔耐:311 147↑
俊敏:430 210↑
持運:***
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《普通技能ノーマルスキル》
・魔力操作 Lv6 2↑
・探知 Lv2 1↑
・思考加速 Lv3 1↑
・並列思考 Lv2 1↑
・鑑定 Lv6
・看破 Lv1
《戦闘技能バトルスキル》
〈随時発動型アクティブ〉
・火魔法 Lv2
・水魔法 Lv2
・風魔法 Lv6 1↑
・雷魔法 Lv3
・土魔法 Lv2
・聖魔法 Lv2
・属性魔法剣 Lv5 1↑
〈常時発動型パッシブ〉
・剣術 Lv6 1↑
・詠唱破棄 Lv6 1↑
・戦況把握 Lv4 2↑
《超常技能エクストラスキル》
・偽装 Lv−
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「うわぁお」
思わず声が出た。「祝福」のおかげか、レベル、ステータス共に上がり方が尋常じゃない。今の状態で筋力ブーストをかけると、430×6=2580の筋力値になる。
「おいおい、これは…でも、これなら…」
「俺は成長率も人並み以上に高かったが、自信なくすぞ。ってか、スキルレベル6って何だ。上限超えてるじゃねぇか…」
この二人になら見せても大丈夫だろう。ただ、先に俺のステータスを見た国王様が、腕を組んで自分の世界に入っている。何か不味かっただろうか。まあ、上限超えてるから今更な話だが。
「ところで、さっきから気になってたけど、国王様とバランさんはどんな関係?ただの主従じゃ無さそうだけど」
「ん?ああ、バランと俺は同い年でな。一言で言えば幼なじみになる」
「やっぱりそうなのね。そんな感じがしてた」
「シャルルも若い頃はヤンチャしてたかんなぁ」
「若気の至りだな、ハッハッハ」
信頼し合ってるんだな。見ているとこっちの胸も熱くなってくる。固く結ばれた男の友情、みたいな?
少し羨ましい。
「さて、その話はさておき、カズマ。今話していて思ったが、お前に会ってもらいたい者が居る」
「…シャルル、まさか!?」
「彼になら任せられる。会ってくれるか?」
バランさんが驚いてる。それだけ珍しい事なんだろう。
俺に会わせたい人っていうのは、いったいどんな人だろうか?




