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第五章 1(後)

 次の工程作業と思われる場所に入る。そこでは、さきほどはいだ羊の皮を水につけていた。


「行きましょう」

「何? どうしたの?」

「あれを見てもうわかったわ。ここは羊皮紙を作る工場よ」


 羊皮紙という言葉は聞いたことがある。樹のパルプから作る紙とは違い、その名の通り、羊の皮から作る紙だ。


「なんで、羊皮紙を作ってるんだろう?」

「それより、さっきもおかしいと思ったんだけど。この工場、魔物が動かしているのかしら?」


 さきほどの工程にゴブリンが携わっているところを見れば瞭然だ。


「でも、どうして羊皮紙なんか使うの? 言っちゃ悪いけど、あいつらに学なんて必要なさそうだし」

「そうね、ゴブリンは調教しても簡単なことしかできないし、まして文字が読めないしね」

 紙がどうして必要になるのか。


 その後、この街の全容がわかってきた。

 時々、わけのわからない薬品溶液を作っている工場があったけれど。羊皮紙を作る工場がほぼすべてであった。中には羊の屠殺から羊皮紙を作るまで全てを自動化してある工場すらあった。


「いったい、この街はなんなんだろう?」

「魔物はいったい何のために工場を使ってるのかしらね」

 そこで僕の頭にクリスの声が脳裏をかすめた。


 だから貴様は知恵が足りないのだ。


 考えよう。


 中央に巨大な工場が聳えていた。最後に残して、僕たちはそこへ向かった。


 中に入ってみると、そこにあったのは、ベルトコンベア。

 そして、そこに見慣れたものがあった。


 活版印刷の機械だ。しかも、キルシェの印刷所よりも精密そうだった。

 さらに目についたのは、羊皮紙だ。羊皮紙がどんどんと印刷機に巻き込まれていき、何かを印刷している。


「新聞でも印刷しているのかな?」

「そんなわけないでしょ」


 僕たちは深く立ち入って、何が印刷されているのか見ようとした。

 しかし、印刷物に手を伸ばそうとすると、機械に手が巻き込まれそうだったので、印刷物ができあがる最終工程の場所まで踏み込んでいく。


 果たして、目的の場所まで着いて、僕たちは目にした。


 それは一冊の本になっていた。


 僕はそれに近づいて、興味が惹かれた。


「迂闊に触らない!」

 キルシェから注意を受けて、僕は直前で手が止まった。

 彼女は本をハンカチを使って手に取り、目を閉じる。精神を集中させるように。


「黒魔道士の本ね」

「クリスが燃やした、あの本?」

「そう。間違いないわ」


 キルシェは本を地に落とし、火の魔法でその本を燃焼させた。


 しかし、本は次々に出版されていく。


 そして、最終工程の場所だと思われたが、次の場所へと続く通路らしきものがあった。


 キルシェとともに僕は進んでいく。


「これは……」


 多量の羊皮紙が印刷されていく。そのたびに、紙から魔物の姿が現れてくる。


「棟一郎。魔物っていうのは精霊のなれ損ないと言われているので、不完全で人にもなれず動物にもなれず神にもなれないもの」

「その魔物がどうして、あんな風に現れて?」

「召還」


 なるほど、そういうことか。


「この工場は魔道書の出版所と同時に、魔物生産工場だったのよ」

「じゃあ、もしかして『故郷の星』が魔物に占領された理由って」

「その通り、貴様の考えている通りだ!」


 突然の声に僕とキルシェが目を向ける。


「クリスか!」

「答えに辿り着いたことを褒めてやろう。ここがすべてのはじまりなのだ。心して聞け、棟一郎」

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