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第四章 1(後)

 沈んだ気持ちで迎えたクリスマスイヴ。


 僕は黄昏の空の見える、半分薄曇りの空を見ながら、街を歩いていた。


 外は細かく砕かれたような雪が舞う。そこでおもちゃを買うでもなく、いくつか店を回った後に街のはずれに出た。


 ここはスラムが近いから、両親から近づかないように言われていた。


 六歳になろうかならないかの年頃の僕が、こんな時間にほっつき歩いているなんて……。でも、両親は僕の心配をする余裕がなさそうだし。でも、もし僕に何かがあって僕までいなくなったら、きっと父と母はさらに気分が落ち込むだろう……。だから、思いとどまり、家に帰ろうとした。


 そのとき、一人の女の子が壁にもたれて震えていた。十四歳か十五歳くらいの女の子である。


「ねえ、君。どうしたの?」

 女の子は僕を見つめてくる。そして、何か外国の言葉を話していた。英語や日本語ではなかった。よくここの界隈で聞かれるスペイン語かとも思ったが、アクセントが違う。


「こんなところにいると風邪引くよ」

 スラム街ではこういう光景も珍しくないが、僕はこの子のことが無性に気になった。心が寂しくて、誰かがそばにいることを求めていたのだろう。


 すると、彼女は僕の額に指を当ててきた。


「去れ、私は死ぬためにここにいるのだ」

 それはテレパシーというのだろうか、生の意味として彼女の意思が僕の頭を貫く。


 今の感覚は何なのか? そういう疑問はあったが、それよりも女の子が発した言葉が許せなかった。


「バカ! どうして命をわざわざ捨てようとするんだ!」

 彼女は僕の発した言葉の意味を理解したのか、それを受けてもう一度僕の額に人差し指を当てる。

「死にたくないさ、でも、ここで私が生きることは他人に迷惑をかける。去れ、貴様は子供ではないか」

「子供だからってなんなんだよ、僕だって今日プレゼントをもらえるはずだったんだ。イエス様は嘘つきだ、大嫌いだ!」

「貴様が何を言っているのかわからないが」

「お前にわかってたまるもんか!」


 僕は涙をせき止められず、溢れ出てくる。


「悪い、私は貴様の心を悪くするつもりはなかった」


 険悪な雰囲気が僕と相手のあいだで流れる。

 鼻をすすりながら、頬がすり切れるくらい涙を袖で拭う。


「僕は死ぬなんてことは許さないよ!」

「……」

「わざわざ死ぬなんて、『ぜいたく』だよ!」


 そのとき、『ぜいたく』なんて言葉をよく知っていたと思う。その意味するところもほとんど知らなかったけど、そんな言葉がはっきりと出た。


「死ぬことが贅沢か、なるほど」

「僕はお前を絶対に死なせない」


 そのとき僕はこうも実力行使するとは思ってもみなかった。

 僕は彼女の冷え切った手を握った。


「何をする?」

「僕の家に来るんだ。話はそれから」


 こうして僕は彼女を家に連れ帰る。聖夜に起こった僕に起こった出来事だった。

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