第三章 2(中)
「囲まれたわね」
「キルシェ、こいつらってもしかして、この村の……」
「そうね、この村にいた人間たちのゴーストね。『故郷の星』から『月』へ行くことができず、取り残された人たちもいることを、私は聞いたことがあるわ」
「なぜ僕たちに敵意を持ってるんだろう」
「私たちが『月』の住人となったから、その怨念で動いているか……」
「成仏してもらいたいものだ」
「成『仏』って何?」
「いや、なんでもない」
この世界に似つかわしい言葉を出して後悔する。
「こういうゴーストとかをアンデッドと言うわ」
「僕もその用語はRPGで……いや、小説で聞いたことがある」
こういうときってどうすれば勝てるんだっけ、ドラキュラは太陽の光を浴びれば肌が焼け焦げて昇天する。僕のRPGとかゲームブックのソースだから怪しいけど。
でも使ってみる価値はあるんじゃないかと思った。
――神がはじめに言われしこと。
――混沌に秩序を与えしもの。
――闇を砕きて、道しるべとならん。
――光あれ!
僕は光源を発生させ、夜の暗闇に包まれたこの場所が明るくなった。
アンデッドたちは顔を背ける。よし効いているぞ。僕はにやりと笑みを浮かべる。
が、しかし、僕たちを囲むアンデッドはこちらの光源を見るのを躊躇する様子を見せてはいたが、徐々に目を薄目に開けながら、こちらへの直進を開始する。
「あんまり効いてないみたいね」
「なんで? キルシェ」
「棟一郎、光は確かにアンデッドが嫌がるものと言われてるけど、相手を消滅させるだけの力はないの。あとそれから、これだけ大多数のアンデッドがいる中で使うのはよくないわ」
「なんで?」
「だって……」
遠くのほうから、蠢くゴーストの群れが近づいてくる。不気味にも足音は聞こえなかった。
「光の魔法を使うことは、ここに生きている人間がいますよって知らせるようなものなのよ」




