心
次の実験
桜木 奈美 25才中学校卒業、高校卒業、大学卒業
現在、OL
人の痛みを知ろうとせず、自分優先に物事を考え周りが見えない
今回の実験場所は博多駅付近に設置
標的が現れるのを待つ
“標的発見”
“接近開始”
「お客様、素敵なカフェが近くにオープンしたんです。今ならコーヒー一杯無料なんですが、いかがですか?」
「えっ、本当に?!無料なら行く!どこにあるの?」
「ありがとうございます。ご案内します。」
「ラッキー」
“標的確保”
“移動開始”
「こちらになります。新感覚のカフェになっております。こちらのカプセルにお入り下さい。」
「?えっ、何もないじゃん…」
「こちらに座って頂ければ解ります。」
「コーヒー無料っていうから来たのにカフェも何もないじゃん。帰る…」
「座って下さい。」
「貴方、頭おかしいんじゃない。離してよ。」
“標的が拒絶したため第二段階に入ります。”
「何するの。さわんないで…」
「いってらっしゃいませ。」
“確保完了”
急に意識が薄れていく…
なんで、私付いてきちゃったんだろう…
あんな言葉を信じて付いて行く様な人間じゃないのになぁ…
今日の私はなんかおかしかったんだ…
このまま死んじゃうのかな…
「姫様。姫様、起きて下さい。姫様」
誰?このおばさん。
なんで起こしてくるの…
「姫様、殿がお呼びでございます。」
「起こすな。起きたくない。」
「ですが、殿がお呼びでございますので。起きていただけねば困ります。」
「分かった…起きればよいのだろう…」
なんか、身体がダルい…吐き気がする…
「吐きそうじゃ…」
「姫様、どうなされました!」
意識が薄れていく…
「やっと…効きおったか…」
えっ…
なんだったのかな…
あの言葉…
なんだか聞いた事のあるような…
「奥方様、奥方様」
「なんじゃ」
「お茶の時間にございます」
「いらぬ…」
「側室様からの贈りものにございますので、召し上がって下さい。」
「毒でも入っているのではないか?」
「その様な言葉を誰かに聞かれでもしたら大変な事になりますよ。毒味も終わったものでございますので大丈夫でございます。」
「食べたくない。」
「その様な事言わずに召し上がって下さい。」
「そちが、そう言うのであれば…」
「奥方様の好きな、お茶もご用意いたしましたので。」
「うっ…なんじゃこれは…」
「奥方様…医者を呼んで参れ…奥方様、どうなされました。奥方様、なんで…毒味も終わっておるのに、なんでじゃ」
苦しい…
なんで、こんな何回も…
もう嫌だ、こんなの…
意識が薄れていく…
なんか、夢で観たような景色だったり…
話しだったような気がする…
その夢をみるたびに心が締め付けられる思いがした…
私は居てはいけない存在だったのだと…
そして、人を信じないと決めた…
どうせ裏切られるくらいなら誰も信じず、自分だけの事だけを考えて生きていこうと…
「お疲れ様でした。いかがだったでしょうか?」
「ここは?」
「初めにご案内した、部屋でございます。」
「そっか、本当に死んだ訳じゃなかったんだね…」
「記憶を再生しているだけですので桜木奈美様には何もおきません。桜木様は前世を覚えておいでだったんですね…」
「何度も何度も夢をみてた…起きると断片的にしか覚えてなかったんだけど…今、全部思い出した…母親が私に嫉妬して徐々に毒を盛られた事、手助けしたのが私が一番大事に思っていた側近だって事…一度ならず二度までも私は毒を盛られて死んだ…だから、今回こそは……そう思ってたんだと思う…私は間違ってたのかな…?」
「間違いではないと思います。自分を守れるのは自分だけだと思います。桜木様は生きたいと本気で願ったからこそ、前世の記憶が現世に反映してしまったのだと思います。」
「でも、やっぱり変わらなきゃいけないよね…前は、あんな死に方してしまったけど…今は違う…私の夢は幸せな結婚なんだ…だから変わりたい…この記憶消す事は出来るの?あの人の苦しみや辛さが私にも分かるけど、私は前を向いて歩いて行きたい…」
「桜木様が望むのであれば出来ます。こちらでお預かりいたします。もう夢に出てくる事はないと思います。」
「良かった…夢をみるたびに自分が自分じゃないような気になってくるんだ…」
「それでは一度カプセルに入って下さい。違う記憶を入れますので…」
「ありがとう…」
その後、新しい記憶を手に入れ
笑顔で彼女は施設を後にした
新しい記憶で彼女は幸せになれるのかは
まだ不明である
“要観察”
『閣下、新しい記憶を入れ替える事により桜木奈美様は笑顔を取り戻し帰って行きました。やはり、少なからず前世の記憶が現世に影響する事が分かりました。これから、観察して経過を確認したいと思います。我々の探すものではありませんてしたが、興味深いデータが採れました。次の実験体に期待します。』




