欲する心
次の実験体は
吉田美桜 15才
中学校卒業、高校生
万引き常習犯
渋谷駅付近に施設を設置
標的が万引きをする所を捕獲
”標的発見“
「どうかなさいましたか?」
「何もありません。」
「鞄の中に何か入れませんでしたか?」
「…」
「一緒に来て下さい。」
「…」
“標的確保”
“異動開始”
「ここはどこですか?」
「貴方に必要な場所です」
「?意味がわからないのですが…」
「椅子にお座り頂ければ、お分かり頂けると思います。」
「分かった…座るよ…」
「それでは、行ってらっしゃいませ。」
えっ…なんなの…
あたし、どうなっちゃうんだろう…
意識が薄れていく…
目を開けてみると綺麗な森と畑が広がっていた。
ここは、どこなんだろう…?
あたしの服も見た事のないような着物?浴衣?
に泥がいっぱい…
手足にもドロがついてる…
「また、このガキャ家の畑荒らしやがって」
えっ?畑?
「何回、言えば止めるんだ」
「すみません…もうしませんから…許してください…」
「今度という今度は容赦しねぇ。盗っ人は腕を切られて二度と盗みが出来ないようにすんだ」
「もうしませんから…許してください…」
「ダメだ…」
光る物が手に当たった瞬間、綺麗な赤い血が飛び散った…
痛い…
そう思った瞬間、意識が遠のいていく…
次に目を開けてみると見なれた部屋の景色…
「美桜ちゃん寝んねしてたのかな?」
「いっぱい寝てご機嫌ですねぇ」
「お母さんのかわいい美桜」
お母さん…
「早く大きくなってねぇ」
「お母さんといっぱいお話ししようねぇ」
家には小さい時から父親が居なかった…
お母さんにお父さんの事を聞くと怒られたのを覚えてる…
周りの子には父親がいるのに…なんで家にはいないのか聞きたくなるのは普通の事なのに…
気になった私は、おばあちゃんに聞きに行った。
誰が父親なんだか、おばあちゃんにも分からなかったらしい。
結局、知るすべもなくなってしまった…
中学校を卒業する少し前に一枚の写真を見つけた、男の人とお母さんが映ってた…
お母さんに聞いてみると
「貴方には関係ないものよ」
「じゃなんで隠すの?お父さんの事ちゃんと教えてよ!」
「美桜にはもっと大きくなったら話すつもりでいるのよ…だから今は話さないだけ…」
「十分、理解できる年だから話してよ…」
「まだ、ダメなの…」
「お母さん意味が分かんないよ…」
「美桜!」
家を飛び出して来たけど何も持ってなくて、お腹空いてコンビニのお菓子を盗んだ…
それから盗んだりする事が普通になった。
お金がなければ盗めばいい。
何回も万引きで捕まって、その度にお母さんが謝って…
盗むのはお母さんのせいだとかおもったりして…
私は自分を正当化したかっただけなんだ…
自分が悪い事は頭では分かってた…
お母さんが私にお父さんの事言わないのも何か意味があるのかもしれないのも分かってる…
でも言ってほしかった…
「お疲れ様でした。いかがだったでしょうか?」
「…あれは、いったい何だったの?」
「あなた様の前世と現世で御座います。」
「前世?」
「奈良時代に生まれ貧しさ故に盗みを働き腕を切り落とされました。盗みはいけないことですが、貴方は弟のために食べ物を盗んでいました。切り落とされた腕の傷が元で亡くなりました。そして現世で御座います。」
「そして今も万引き常習犯…昔も今も変わらないんだね…」
「貴方が本当にしたかった事なのですか?ただ、お母さんにみてほしかっただけなのでわ?」
「私は…私は…」
「ですが、盗みはいけない事です。貴方はどうしたいですか?」
「もうしません。誤りにいきます。」
「お母さんとは、どうしますか?貴方が望むのであればお父様をお教えする事も出来ますが…」
「お母さんが話してくれるのを待ちます…やっぱりまだ私には受け止められないかもしれないし…」
「かしこまりました。」
「ありがとう…これから頑張ってみるよ」
「お気をつけて」
“標的に変化あり”
その後、万引きをしてしまったお店で働き罪を償い、母親との関係も修復しつつある。
“引き続き観察”
『閣下、今回の標的は素直な子でした。これからに期待です。東京の支店の中に気になる記憶を発見しました。本人も薄々、感じる所があったとの事でした。これから、そちらにお送りさせていただきます。』




