放浪者
次の実験体は
佐藤政人 19才
中学校卒業、高校校卒業、大学生
自殺志願者
今回の実験場所は京橋駅付近
今日、標的が電車に飛び込む予定
その前に捕獲、実験開始となります。
“標的発見、接近開始“
「そちらに行かれる前に近くにオープンしたカフェに寄って行きませんか?」
「…誰?」
「カフェの店員です」
「放っておいてくれない…」
「あなた様のお探しの答えが見つかるかもしれませんよ」
「……本当に?」
「こちらへ、どうぞ」
“標的確保、移動開始“
「こちらの椅子にお座り下さい。」
「これは何?」
「椅子の様なカプセルでございます。座って頂ければ解りますよ」
「はい。座りました。」
「行ってらっしゃいませ」
意識が薄れていく…
俺、死ぬのかな…
まっ初めから死ぬつもりだったし
死ぬ時って呆気ないもんだな…
次に目を開けて見たら見たことのない景色が広がっていた…
空気も綺麗で木々もキラキラ輝いて見えてる
なんて、美しいんだろう…
息苦しい…
俺は、どこに居るのかな?
布団の様な…
頭が痛い…
「この御方は命定めでございます。」
そんな言葉が聞こえた…
また意識が薄れていく…
俺は、どこに行くのかな?
命定めって、なんだったのかな…
まっどうでもイイや…
どうせ俺なんか生きてる意味ないし…
次に目を開けて見たら田畑が広がっていた
田畑の緑色が綺麗だ
「こっちに来て手伝いなさい」
知らない叔母さんが手招きしながら呼んでいる
「はい」
返事をして走り出した瞬間に、凄い揺れが起きた
あっという間に、地面の間に体ごと墜ちていった…
また意識が薄れていく…
不思議と涙が出てきた…
なんで泣いているのか意味も分からずに…
次に目を開けて見たら眩しい…
「御免…」
痛い…
輝いて見えたのは刀?だったのか…
痛みと共に温かい紅い血が流れていく…
綺麗だな…
そして、また意識が薄れていく…
なんだったのかな…
今まで見てきた?ものは…
綺麗な風景に恋い焦がれ…
涙が出るほど戻りたい場所…
俺は…
目を開けて見ると、さっきの女の人が立っていた…
「お疲れ様でした。いかがでしたか?」
「なんだ…俺、死んだ訳じゃなかったんだ…」
「はい。記憶を再生しているだけですので。」
「記憶?」
「はい。佐藤政人様の魂の記憶でございます。不思議と現世での記憶が出てきませんでしたが。」
「そりゃそうだろうね。今の人生に悔いもなければ思い出したい人たち何て、俺には居ないから…」
「そうでしたか。」
「さっき見せられたモノってなんだったの?」
「前世の記憶でございます。一番始めは飛鳥時代、歌人でした夢なかばで病に倒れ亡くなりました。次は鎌倉時代、
農民の息子さんとして産まれ母親の仕事を手伝いながら生活していましたが、地震で出来た間に墜ちてしまい亡くなりました。
次は戦国時代、武士として戦に参加していましたが心の優し過ぎる方で刀を抜かず、そのまま切り捨てられました。そして、現在でございます。」
「そうか…俺は…多分…今の時代に満足出来てないのかもしれない…」
「そうかもしれませんね。この世界を変えたいですか?変われると思いますか?」
「無理だろうね。破滅に向かっていってる様な
気がする」
「もし、少しの可能性があるとしたら、どうしますか?」
「どうだろう…分からないや…」
「前世の記憶に触れて変わった事はありますか?」
「信じられないぐらい綺麗な、あの風景をまたみたい…俺は、あの世界で生きて居たい…」
「そうですか。それでは、しばらくはあちらに行かれてみてはいかがでしょうか?」
「また行けるの?」
「ですが、記憶の再生ですので産まれてから亡くなるまでの期間の20年間ですが宜しいですか?」
「はい」
「それでは、こちらの移動式の椅子にお座り下さい。」
「移動式?」
「はい。私共は一つの場所に長くとどまりませんので。申し訳ありませんが、佐藤政人様には一緒に来て頂きます。」
「イイですよ。あの世界に居られるなら…」
「かしこまりました。それでは行ってらっしゃいませ」
“標的保護”
“引き続き監察”
「閣下、標的が保護されました。もう少し噂を拡大して標的を増やしていく方向に決まりました。閣下のお望み通りに進んでおります。もうしばらくお待ち下さい。」




