衝撃
服部さんに、とって閣下という人がどんなに大切な人だったのか……
この実験が僕の子孫の考えで…その意志を継いだのが閣下…そして服部さんへと意志は受け継がれていく……
上手くいくか分からない……そんな事に命をかける……僕には理解出来なかった……
「新垣様、それではモニタールームにご案内致します。」
「はい…」
「モニタールームに入りましたら、頭に機械を装着させていただきます。」
「機械ですか?」
「はい。電波にふれないように装着していただきます。装着しなければ、他の方と同様に眠ってしまいますので…」
「ここには電波はこないんですか?」
「ここは特殊な機械を設置しておりますので電波は届かないんです。」
「そうなんですか。」
「こちらをお使い下さい。」
「はい。」
「只今戻りました。その後の経過はいかがですか?」
「お帰りなさいませ。変わりなく進んでおります。無料で配布しておいたバンドのおかげで、心電図も見る事も出来ますので身体に害がない事も確認出来ました。」
「そうですか。」
「館長…?お身体の具合でも悪いのですか?顔色が悪いですよ」
「少し疲れてしまったみたいです…申し訳ありませんが引き続き経過観察を三輪に任せます。新垣様、申し訳ありませんが少し席を外しますので、何か分からない事がありましたら三輪にお聞き下さい…」
「あっはい。」
「三輪です。宜しくお願いします。」
「新垣です。」
「それでは失礼致します。何かありましたら連絡下さい。」
「はい。」
やっぱり、相当応えたんだろうな…
館長さん大丈夫かな…
「新垣様、こちらのお席にどうぞ。」
「あっ、はい。ありがとうございます。」
「こちらのスイッチで色々な場所を眺める事が出来ますので触ってみて下さい。」
「はい……すごいですね…これどこの国でも見れるんですか?」
「ある程度の場所であれば見れますよ。」
「どうやって電波を放ったんですか?」
「衛星を使いました。ですが、機械系の運転をされていたりすると危ないですから、その前に今日は家に居なくてはいけないという信号を前日から流しました。」
「そうですよねぇ……」
「一斉送信は初めての試みでした
ので何かと不安要素はあったのですが、今の所目立った問題はおきていないので一安心です。」
「そうなんですか。やはり不安な所もあったんですね…」
「初の試みには付き物ですからね。館長の様子がおかしかったんですが閣下の所に行かれた時に何かあったんですか?」
「……僕からは何も言えません。館長さんに聞いた方がいいと思います。」
「そうですか……。あんな館長見たことなかったので…心配ですね…」
「そうですね…」
やっぱり、あの事は服部さんが言うべきだよな…
今、話してパニック起こされても僕にはどうする事も出来ないから……
閣下がどれだけ大切な人だったのか分かる気がする…
服部さんの、あの言葉が頭から離れない……
『閣下が居なければ、生きてはいけません。』
どんなに大切に思っても人は死んでしまう…
それが、どんなに辛い事なんだろう…
僕の子孫を大切に思っていた閣下も…
僕には、まだ分からない気持ちなのかもしれない……
「新垣様、館長が戻られたようなので少し席を外しますね。」
「はい。分かりました。」
服部さんは、いつ皆に話すんだろう…
やっぱり、この実験が終わってから話すのかな…
服部さんも今辛いだろうしな……
「新垣様、お待たせしてしまって申し訳ありませんでした。」
「もう大丈夫なんですか?」
「はい。少し疲れてしまっただけですので……閣下の事は、この実験が終わってから私が話しますので。」
「だと思って何も言いませんでした。」
「ありがとうございます。閣下は施設の人間全員の希望なのです。」
「なんとなく、分かりました。」
「ですから、今言ってしまっては志気が下がりかねませんので……」
「服部さんは、少し落ちついたんですか?」
「なんとか……閣下にちゃんとお別れをしてきましたので……この実験を絶対成功させなくては…」
ゴッゴッゴッ
「なんの音ですか?」
「分かりません。ですが地震かもしれません。」
ドンっ
「機械が停止しないようにして下さい。」
「館長!こんな地震初めてです。システム停止した方が宜しいのでは?揺れが収まりません!外の人たちが危険です!」
「今、停止してしまえば全部なかった事になってしまいます。」
「館長…無理です!停止して下さい!」
「…………分かりました……」
«システム停止確認»
「外の人たちが逃げ回ってます。我々も逃げた方が良いのでは?」
「脱出ポットが奥にありますので……皆さん、そちらに乗って逃げて下さい……」
「館長も一緒に!」
「私は他の所も確認しなくてはいけないので、先に行って下さい……」
「必ず来て下さいよ!新垣様こちらに!」
「服部さん…今、一緒に行きましょう…」
「あとから行きますので……新垣様も皆さんと先に行ってて下さい……」
「嫌です。服部さんが一緒じゃなきゃ僕は行きません。」
「今は、そんな事言ってる場合じゃないんですよ…わがまま言わず行って下さい。」
「でも……」
「行って下さい!このまま施設を離れる訳にはいかないのです。」
「分かりました。きっと…来て下さいよ…」
「はい……」
“閣下…また不思議な力に邪魔されてしまいました……やはり歴史を変える事はいけない事だったのでしょうか……何度この大地震に邪魔されたか……閣下を失い…また…施設も失ってしまうのですね…私は諦めません。閣下の意志は私が受け継いだのですから………”




