時間
「閣下、相澤様の記憶をすべて解析するのは困難です。彼の魂が拒否しているようです。彼自身に気付いてほしい反面、苦しみを彼に与えたくはないようです…夢で見ていたと思われる一部分は観れるのですが、その後雑音と共に霧がかかってしまっています。亡くなる直前までの記憶及び、陸軍入隊までの記憶が欠落しているように感じました。呼び起こしたくないほどの記憶とは………。」
“観てみたが彼が我々のキーマンになる可能性が高いな…だが、記憶が欠落しているとは……やっと見つけたというのに……他に似たような記憶を思った人間はいなかったのか?”
「探してはいるのですが…空戦中に撃墜された記憶の持ち主が3人、戦地へ向かう途中で撃沈された記憶の持ち主が10人近くおりました。ですが、敗戦続きの時代の記憶の持ち主は今の所2人しかいません……。気になる方が5人ほど居たのですが……彼らは拒絶しているように感じました。その時代にさしかかった瞬間に記憶が飛ぶんです。」
“やはり、彼に頼るしかないようだな…我には、もう時間がない…時代が進化したとはいえ人間を長く生かせるには限界があるからな……世界が変わる姿をもっと早く見たかったが…思ったよりも時間がかかってしまったな……未来が解るからこそ変えられると思っていたが、元に戻そうとする世界の修正力には適わないのかもしれないな…”
「閣下……私たちが閣下の望みを叶えてみせます。修正力の更に先へいくまでです!閣下のおかげで、生き長らえてる方々もたくさんいらっしゃいます。ですから、弱音を吐かないで下さい……申し訳ありません。生意気な事を言ってしまいました。」
“よい……お前たちは我の事を考えてくれている事は分かっている……結局は人間がいる限り破滅へのカウントダウンは始まってしまっているのだ……。物を大事にしない…人を大事にしない…祖国を大事にしない…食べ物を大事にしない…そんな世界だからこそ何百年後には無くなってしまうのだ…我がこの時代を選んだのは、キーマンの存在を発見したからだ…それが、もう少しの所で…この手をすり抜けていく……”
「私どもが至らないばかりに閣下に不安な思いをさせてしまい、申し訳ございません。明日には結果を出して見せます。時間がないのを分かっていながら、今日も引き延ばしてしまって申し訳ありません。明日こそは……」
“すまぬが、頼んだぞ…”
「はい。閣下に喜んでいただける結果を持って来られるように精進いたします。それでは、失礼いたします。」
『閣下が此方に居られる時間が限られています。明日は相澤様の記憶を全部解析出来るようにして下さい。ですが、相澤様に死なれては元も子もありませんので…心電図なども明日は装着していただく事とします。怪しい記憶の持ち主もお呼びしておりますので手の空いてる者は、そちらの解析に尽力を尽くして下さい。以上』




