邂逅
今回は内容が少ないです。
四つの陣うちすでに三つの陣はある程度使えるようになっていたため、
残る一つ、土の陣をまず練習する。
基本的にやることは余り変わらないため、1時間もしないうちに使いこなせるようになっていた。
「とりあず基礎の4つの陣は覚えました」
そういって雫に火、水、雷、土と順番に見せていく。
「上出来上出来。この調子なら魔術式のほうも何とかなるかな。
さてと、それじゃあ魔術式をはなんなのか、ってところから始めようか」
雫は手のひらに魔力を集中させ、火の陣を展開する。
「魔術式とは簡単に言えば複数の陣を組み合わせることで、
陣ひとつで使用するよりはるかに多くの効果を生み出す技術なの」
手のひらに展開した火の陣に、さらに火の陣を重ね大きな炎の玉をつくりだす。
「火に火を組み合わせることによってより大きな炎を作り出したり、
直線状に水を放つ術式を組み、そこに雷の陣を組み合わせることで擬似的な雷の槍をつくってみたりね」
そういうと雫は術式を解き、炎を消す。
「でも、水を直線状に伸ばしたりってどうやってするんですか?
いくら他属性の陣を組み合わせても、もともとの陣の形状を変えたりはできないとおもうのですけど」
陣は、中心に魔力を集め事象を起こすためそれ単体では形状を変化することができないと思っていた。
そのため、暴発させたときも陣に指向性を持たせることができず、もろに自分にダメージを受けてしまったのだ。
「着眼点が素晴らしいねー。でもね、陣は発動主の意図を汲んでくれるんだよー。
君はまだ魔術を使い始めて日が浅いからできないけど、慣れてくれば単一の陣で炎弾を放ったりもできるんだ。
まぁこれは魔法にも関係することだから頭の隅にとどめておくといい」
さてと、と雫は席を立ち自分と悠斗の周りに結界をはる。
「この中でまずは単一の陣に指向性を持たせる練習をしよう。
それが終わってから、魔術式を具体的に教えていくよ」
「了解!さて、がんばるかっ!」
悠斗は気合を入れて立ち上がる。
「その息だよー」
雫は楽しそうにそれを眺めていた。
◆◆◆◆◆
二人が修行を開始して数時間たった頃、
魔術で隠蔽されたはずの隠れ家に近づく黒い影があった。
「市川悠斗……。その力、この目でみせてもらおうか」
荒木は、上空から隠れ家に近づくと魔術式を展開する。
その中から、二体の魔獣が現れる。
それは、先日の黒獣鬼をはるかに超える禍々しい雰囲気をまとっていた。
魔獣たちは、迷うことなく二人の屋敷に向かって落下していく。
そして、大きな音ともに土煙が舞い上がった。
◆◆◆◆◆
「よし、陣に指向性をつけるのはこれでクリアかなー」
雫がそういうと、悠斗はうれしそうに頷く。
数時間の修練をおいて、悠斗は自由に火の陣を操作できるようになっていた。
「これが昨日のうちにできていれば……。あんな思いをすることもなかったんですけどね」
先ほどの戦闘を思い出し、ため息をつく。
「過ぎたことをいってもしかたないさー。それに君は無事だったんだからそれでいいじゃないか」
雫も、自分の責任によるところも多いため優しい言葉をかける。
「まぁ、それもそうですね。さて、それじゃぁ魔術式を教えてください!」
悠斗は再び気を入れなおすと雫に詰め寄る。
だが雫はそれを一蹴した。
「だめだめ、もう結構な時間だしね。夕飯を食べてさっさと寝よう。
ちゃんと休憩をとることも大事……」
いきなり黙りこくる雫。
「? どうしました師匠」
突然の雫の行動に違和感を覚える悠斗。
「静かに。上空で魔力反応……? いや、何かこっちにふってきてる!?」
雫がそう叫んだと同時に、外で2つの轟音がする。
あわてて外に飛び出すとそこには、二匹の巨大な魔物が佇んでいた。
そして、その上には一人の男が浮かんでいた。
「またあったな、皆川。そして君は始めましてかな? 市川悠斗君」
「荒木……!」
雫が男をにらみつけ叫ぶ。
「荒木……?ではあの人が」
今回の事件の犯人ですか、と続けようとした瞬間、
巨大な腕が振り下ろされる。
とっさに右に転がると轟音とともに地面が吹き飛ぶ。
「戦闘中に注意をそらすとは感心しないな」
「逃げろ悠斗君! 時間を稼ぐんだ! その間に私がこいつらを何とかする!」
切羽詰った雫の声。
悠斗はいわれたとおり全力で逃げ出す。
こうして、夜の決戦が始まった。
日付変更ぎりぎり……。
少しの間忙しいので更新内容が短くなるかもしれません。