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見習い魔法使いの奮闘記  作者: 久遠
第一章 弟子入り
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不穏な空気

 「たった数時間で陣の形成どころか失敗に終わったとはいえ魔術を発動させるとは……。

正直予想以上だよ君は。本当に楽しませてくれる」

愉快そうに笑いながら一人夜の闇に呟く。

雫は、悠斗と別れた後夜の森を散策しながら今日のことを思い返していた。

彼に才能があることはわかっていた。

悠斗を弟子にしたのは単なる気まぐれというわけではなく、その希少な才と、ある特異性を見抜いてのことだった。

とはいえ予想以上の成果を出してきたためさすがの雫も驚きを隠せなかった。

平均的な魔術師見習いが、式を構成するのにかかる日数が三日。術式を発動させるには一週間はかかる。

しかし、彼はたった数時間で魔術を発動させてのけた。

(まぁ私は一時間かからなかったのだけども)

自分が始めて魔術を習ったときのことを思い返しつつ、明日からの修行の内容を考える。

(とりあえずは火の陣を安定して発動できるようにする。まぁ彼のことだから半日もかからないだろう。

その後は基礎系統の陣を一個一個覚えていってもらうとするか。この分なら魔法を教えるのもそう遠くはなさそうだ)

夜空を見上げながらある程度今後の方針を決め、方針が固まったところで森から引き上げることにした。

「本当に君は面白いなー。これからも頑張って私を楽しませてね?」

先ほどまでの口調とはうって変わり、いつもの間延びした口調で呟く。

それと同時に魔術式を展開し、体に風をまとわせ空に浮く。

さらに光系統の陣を用い、視認できないようにして夜空に飛びたつ。

懸念事項は弟子のことだけではない。先ほど悠斗と別れた直後に感じた違和感。

明らかに「視られて」いた。誰によるものかはある程度予測がついていたが、不安要素であることに変わりはない。

(今、あいつらに彼のことを知られるわけにはいかないんだよねー。

だけど、さっきの視線はあいつらとはむしろ間逆の……)

面白い、今日何度目だろう、この感覚を抱いたのは。

ここに来てから予想外に面白いことばかり起きている気がする。

不安要素はあるが、悪くない気分だった。

視線の主を探しつつ、隠れ家に向かい空を遊泳しながら、雫はずっとそんなことを考えていた。



◆◆◆◆◆



 翌日、悠斗は午前中のうちに家事や勉強を終わらせ、午後になるとすぐいつものところに向かった。

森の中の開けた場所にでると、すでに机と飲み物、資料などが用意されており、椅子に腰掛けながら雫が待っていた。

いつでもいいといった言葉のとおり、悠斗が連絡を入れた後即座に準備をしてくれたらしい。

「こんにちは。割と急いだつもりだったんですけど待たせてしまったようで申し訳ありません」

挨拶をしながら椅子に座り、用意された紅茶を飲む。

「いや、気にしなくていいよー。昨日も言ったとおり私は大抵暇してるのでねー。

いろいろ無理をいっているし時間くらい君に合わせるさ。

さて、それじゃぁ昨日の続きをしよう。今日は暴発させずに発動させることが目標だよー」

悠斗はうなずき、昨日の通りに陣を構成していく。

今度は魔力を抑えつつ、小出しに陣に流し込んでみる。

しかし、陣は形を保てず崩れていった。

「今度は供給が少なすぎ。まぁ一度成功すれば、後は簡単だから今日一日かけるつもりでがんばってみなー」

そう言われ、少しずつ流す量を調整してみる。

何度かやってみると、暴発せずに発動はするもののすぐに消えてしまったり、

逆に強く燃えて手に負えなくなってしまったりとなかなか安定しない。

一時間ほど四苦八苦していると、だんだん強く燃えたりしなくなっていき、炎の持続時間も増えていった。

二時間がたつころには、ほぼ安定して火の陣を発動させることができるようになっていた。

「うん、まぁ二日目にしては上出来だね。さて、火の陣はそこまでにして他の基礎系統の陣も覚えてもらうよー」

そういうと昨日陣を書いた紙を開く。

「とりあえずここから好きなやつを選んで、火の陣のときと同じように発動させてみなー。

大体供給魔力量は全部同じだから」

悠斗は、とりあえず水の陣を選び同じように発動させていく。

火の陣でだいぶ慣れたため、発動までにそんなに時間はかからなかった。

結局暗くなるまで基礎系統の陣の練習をし、火、水、雷の3つの系統をある程度使えるようにまでなった。

「よし、今日はここまでにしよう。いやー君は本当優秀だねー。

二日でここまでできるとはなかなかだよ。

この調子なら明日は魔術式の話までいけるかなー」

悠斗は、手放しで褒めてくれる師匠の言葉に気恥ずかしさを覚えつつも、誇らしい気分だった。

「ありがとうございます。師匠の教え方がうまいからですよ。

具体的にどうイメージすればいいかがわかりやすいですしね」

確かに雫の教え方はうまかった。

だがそれ以上に、悠斗の才能が大きく作用しているのだが、雫はそれを伏せておく。

「そういってもらえると嬉しいよー。それじゃぁ明日もまた都合がいい時間に連絡してねー」

「はい、わかりました。明日もよろしくお願いします」

こうして、修行二日目は終了した。



◆◆◆◆◆



 雫は悠斗が無事に森を抜け出したのを確認すると、森全体に張っていた結界をさらに強くし、誰も入ってこれないようにする。

そして逆に、相手を「閉じ込めるために」使っていた結界をとく。

「さて、ずいぶん待たせてしまったねー」

そう、語りかける視線の先には、この間悠斗を襲った黒獣鬼が三匹、こちらを睨み付けていた。

しかし、雫はあわてることなく魔術式を展開する。

その数およそ十。全基礎系統の複合術式を相手に向ける。

「目標視認、全弾発射」

展開から発射までおよそ1秒

結界から解き放たれたばかりの黒獣鬼達はろくな回避行動もとれずまともに攻撃を受ける、

鳴り響く轟音。2匹はその場で生き絶えるが、残る一体はなんとかもちこたえ、反撃する。

一瞬で間合いを詰め、一撃必殺の爪を振りかぶる。

そして、鮮血が舞った。

黒獣鬼が着地した瞬間、その体から血しぶきがあがり、なすすべなく崩れ落ちる。

雫は、魔術で風を操作し返り血を受け流すと空を睨みつけながら結界をといた。

「こないだといい、今日といい、こんなにこいつらが自然発生するわけないかー。

となると裏で送り込んでる奴がいるわけだ。まったく、私に喧嘩を売るとはいい度胸じゃないかー」

死体を魔術で跡形もなく燃やしながら、睨みつけた空に向かって呟く。

「もし、私や彼に危害をくわえるようなら、叩き潰さないといけないかもね」



◆◆◆◆◆



 「やはりあの程度の奴らでは傷ひとつつけられぬか」

闇に紛れ、一人の男が呟く。

「まぁいい。これで奴もこちらを無視することはできないだろう」

先日、海上から魔術で悠斗達をみていた男は、傍らに怪物を従え、不敵な笑みを浮かべていた。



早く説明会を終わらせてバトルに入りたい……。

もう2話くらい後から本格的に物語が始まる予定です。

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