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見習い魔法使いの奮闘記  作者: 久遠
第一章 弟子入り
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修行開始

 「さて、それでは早速講義を始めようかー」

雫は出会ってから初めて見せるような真面目な顔でそう言った。

「弟子になるってこれだけなんですか? なんかこう儀式をしたり契約とかしたりするものかと……」

悠斗は余りにもあっさり話が進んだことに戸惑いそう聞き返した。

「まぁそういうことする人もいるけどね。大抵は弟子が師匠を上回ったときに反逆されないようにするためとか、

弟子に自分がやりたくないようなことをやらせたりとかするような人がすることだから。

君が私を上回るなんてまずありえないし、もし私を倒せるくらい強くなったとしたらそんな契約いみないだろうしね。

後者はそもそも組織の規則に違反する可能性があるから論外。他に質問はあるかな?」

つまり、もし自分が逆らったとしても力ずくで抑えられるから問題ないということか、と納得する。

「一応私はこれでもそこそこ有名なのでねー。まぁ変な気は起こさないことだよー」

再び人の悪い笑みを浮かべながらいう雫に、

「さすがに昨日のアレを見た後で逆らう気は起きませんよ……」

苦笑を浮かべながらそう返す。

自分を追い詰めた怪物を一撃で葬るような人に逆らう気にはならなかった。

「ま、それならいいんだけどね。それと、一つだけ守ってほしいことがあるんだ」

真顔で言い寄られ背筋が自然にピンと伸びる。

「えっと……、なんでしょうか……?」

雫は、目を瞑り一拍おいてから、

「私のことは師匠とよぶこと! 弟子なんだから当たり前だよね!」

豊満な胸を張りつつそう宣言した。

「え……?わかりましたけど……、え?それだけですか?」

予想外の発言に、理解が追いつかず思わず聞き返してしまう。

「それだけって大事なことだよー。いやー師匠ってよばれてみたかったんだー」

「弟子は取りたくないっていってませんでしたっけ……?」

「それはそれ、これはこれ」

満面の笑みを浮かべながらそう言う雫を呆れた目でみつつ、話を戻す。

「まぁ……はい、わかりました……。特に質問とかはないです。お手柔らかにお願いします、師匠」

雫は満足そうに頷き、話を再開する。


 「それでは今度こそ講義を始めようか。まずは魔術の話からはじめるとしよー」

悠斗も気を引き締め真剣に話を聞く。

「そんなに気構える必要はないよー。論理自体はそこまで難しいものでもないしねー。

魔術の発動には魔力が必要なの。魔力っていうのは簡単に言うと精神力や生命力といったものを変質させたものかな。

そして、魔力をもって編んだ術式を発動、展開させることで、魔術を行使することができる」

そう言うと席を立ち、机から少し離れた所で左手を頭上にかざす。

「ま、百聞は一見にしかず。実際にやって見せるね。

まずは、魔力を練りだすところからはじめる。これはイメージの問題なのだけど、

私の場合は自分の胸の中心から搾り出すような感じで魔力を作っているの」

集中しているのだろう。雫は目を瞑りながら話を進める。

「練りだした物が左手に集まるようにイメージする。これで準備は完成。

ここまでは割と誰でもできる。でもこの先には術式を知っていないと進めない。

術式の話はまた後でするとして、とりあえず実演するね。」

そう言った次の瞬間雫の左手に球形の幾何学模様が現れる、と同時に球の中心から炎が噴出す。

悠斗は、無意識の内に食い入るような目でその炎を見つめていた。

「これが魔術。式の原理はしらなくても、式さえしっていれば行使することができる。

式の原理はまだいいから、とりあえず一番簡単な術式を教えるね」

雫は炎を握りつぶすと、鞄から紙を出し、先ほどの幾何学模様を書いていく。

「この模様、まぁ陣と呼ばれてるんだけどこれを組み合わせ展開することによって魔術を行使する。

一つ一つの陣の意味と、組み合わせを知っていれば誰でも使えるのが魔術の優れたところなの。」

それゆえに一般人に知られてはいけなかったりといいところだけでもないのだけど、と付け加える。

「とりあえず基礎の基礎。この陣の意味は火ねー。基礎系統の陣は、火、水、土、雷の4種類があるの。

一応私は全部使えるのだけど、火が一番得意なので火の陣を基本に教えていくねー」

紙に4つの陣がかかれ、その一つ一つに火、水、土、雷とルビがふられていく。

「さっき使った魔術、陣が球形に集まっていたでしょ? あれは火の陣を複数合わせて組み上げたものなの。

陣の複合は魔術を使う上で必須なのだけど、まずは魔術を使うところからね」

再び雫が左手をかざすと、手の上に陣が浮かび上がる。

先ほどのように球形ではなく、平たい円状で中心から燃え上がっていた。

「火の陣のみを使うとこうなるの。まずはこれを使えるようにしよー」

いままでずっと黙っていた悠斗が口を開く。

「大体わかりましたけど、陣を展開するのって具体的にどうするんですか?」

「陣を頭の中で思い浮かべて、それを発動したい場所に移すようにイメージするの。

最初は手のひらの上が一番イメージしやすいと思うよ。まずは術式のイメージだけしてみようか」


言われたとおりに頭の中で先ほど紙に書いてもらった陣を思い浮かべる。

それを手のひらに移すようにイメージするとかすかに暖かい感覚がした。

「そうそうその感じ、そしたらさっき教えたように魔力を練ってみて」

いったんイメージを切り、胸の中心から力を練りだすようにイメージしてみる。

なんとなく、胸の奥から流れ出るものを感じ取った気がしたが、思うように手に集めることができない。

「まぁ、そう簡単にはいかないよ。とりあえず今日中に発動できたらかなり優秀だよ。

火を出すことをイメージするよりも、陣を組み立てることを意識したほうがいいかな。

陣を組み立てて、そこに燃料として魔力を注ぎ込むような感じ」

言われたとおりに陣を組み立てることをイメージしてみる。

すると、手のひらに少しだけ集まったモノが吸い出されるような感覚がする。

手のひらに光が集まり陣が形成される、……がすぐに霧散してしまった。

「もう、陣を組み立てたかー。優秀優秀。でもそこからが大変なんだよねー」



◆◆◆◆◆



 雫の言葉通り、そこからが大変だった。

陣をつくることはできても、火を出すことはおろか陣を保つことすら出来なかった

進展がないまま時間だけがいたずらに過ぎていく。

「供給さてる魔力が足りないんだよ。魔力を練ったら、体の中に通路を作るイメージをしてごらん?」

雫曰く魔力を練りだすことはできているそうで、その魔力を十分に供給できていないとのこと。

(通路を作る……か。こんな感じかな?)

胸から手のひらにかけて、穴を開けるようにイメージをする。

そこに練りだした力を全力で押し込んだ、


手のひらが眩く光り、陣が形成される。


今度は消えずに残り、陣にそって魔力が供給される。


あふれ出た魔力が漏れ出し、光が強くなっていく。


陣に魔力が回りきると、光の色が真紅になり、中心に集まっていく。


そして爆発が起きた。


1秒にも満たない間に起きたことに対応がとっさの対応が遅れる。


思わず目をつぶるが予想していた衝撃はいつまでたってもこなかった。


「力みすぎだよー。魔力の過剰供給は今みたいに暴発を引き起こしちゃうの。

まぁその辺の調整はおいおいやっていけばいいんだけど、気をつけないと危ないからねー」


恐る恐る目を開けると、青い光が手のひらと爆発した陣を包み込んでいた。

とっさに雫が展開した防御術式におかげで無傷だったのだ。


「ありがとうございます……。初めて使えた魔法がこんな結果なんて……」

悠斗の心の中には、魔法が使えた喜びが半分、失敗した気恥ずかしさのようなものが半分を占めていた。

「まぁ最初は誰でもそんなものさー。大体初めから完璧にできるような者に師匠がついても意味がないだろう?

君に教えるために私はいるんだからねー。それに失敗しても私がカバーしてあげるから安心しなさい」

師匠からの心強い助言を貰い、頭をかきながら苦笑する。

「わかりました。失敗は成功の元って言いますしね。それにこれで見習い魔法使いって名乗れますし」

暴走とはいえ魔法を使えたという喜びを隠せないまま悠斗は嬉しそうに言うが、それを雫は否定する。

「いや、君が使ったのは魔術であって魔法ではないのさー。いうならば魔術使い見習いだね。

詳しいことはまだ先になるけど、魔術と魔法は似て非なるものだということだけ覚えておくといいよー」

そういえば、今日雫は一度も魔法といっていなかったことに気がつく。

「なるほど……。まだまだ学ばなきゃいけないことは多いですね……」

「ま、時間はたっぷりあるんだ。君は明日から夏休みだろう?無理しない程度にここに通って学んでいけばいいよ。

今日はもう暗くなってきたし続きは明日にしよう。暴発の危険があるので私がいない所で魔術を使ってはいけないからね?

明日以降は来れるときに先にメールを入れてくれればいつでも来てかまわないよー。

割と暇だし、弟子を育てるのも職務のようなものだからねー」

そう言うと雫は軽く伸びをして机の上に出したものを鞄にしまいはじめる。

「それでは明日の昼くらいにメールしますね。今日はありがとうございました」

「はいよー。魔術を使うと精神的にも疲れるから、今日はゆっくり休みなよー」


そういって二人その場で別れた。


◆◆◆◆◆


 同時刻、東京湾上空にて。


「久しぶりの日本か……」


黒いスーツをまとい、夜の闇に溶け込むようにして一人の男が「浮かんで」いた。


「それにしても貴様に会うのは何年ぶりだろうな……。ようやく見つけたぞ紅炎の魔女」


男は虚空を睨みながらそう呟く。


その顔には狂気に彩られた笑みをうかべながら……。 



お気に入りに入れていただいた方ありがとうございます!

休日のように時間に余裕があるときは1日に2話投稿もしていこうかと思います。

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