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見習い魔法使いの奮闘記  作者: 久遠
第一章 弟子入り
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共闘

雫が帰った後、浩太と悠斗は追加で注文を頼み談笑していた。

「いいのか? 俺今日初対面なんだけどおごってもらう形になっちゃうんだが」

「いいと思うよ。 あの人のことだから使わなかったら残りはあげるよとか言いそうだし」

雫が置いていったお金を、好きに使っていいとのことなので悠斗は二人で適当に何か頼むことにしたのだ。

「なるほどな。 なら遠慮なくいただくとするか」

そういって、到着した料理に手をつける浩太。

それを見た悠斗も、再び箸をてにもつ。

「ところで悠斗、もう一度聞くがあの人は誰なんだ?」

「え? だから知り合いの……」

先ほどと同じ質問をしてくる浩太に、質問の意図がわからず困惑する悠斗。

「それはわかった。だから何の知り合いなのかって聞いてるんだ。

まぁ彼女ではないのはわかったよ。確かにそういう雰囲気ではなかったしな」

悠斗の困惑は疑惑に変わる。

(なぜそんなことを……? まさか浩太はあの人のことを……)

雫は自分をそこそこ有名な魔法使いといっていたため、もしや浩太もそちらの世界の人間なのかと思い至った。

「いや何、少し話し方とか雰囲気とかが気になってな。 どうも違和感を感じるんだよあの人には」

確かに、魔法の世界ですごしている雫は、微妙に一般人とは違う雰囲気をもっているのかもしれない。

(でも、そんなの本当に微かなはずなんだけど……)

「まぁ、言いたくないならいいが、あんまり厄介ごとには首を突っ込むなよ?

 どうにもならない時は相談してくれればそれなりに力になるぞ」

友の頼もしい発言に、少し感心する悠斗だったが、

「その洞察力と頭の回転の速さをテスト勉強に向けられれば赤点課題もなかったのにね……」

「うるせぇよ!? 人がせっかく珍しくまじめな話をしているというのにお前というやつは!」

そんな漫才を繰り広げながら、食事を済まし終えた二人は会計を済ませて外に出る。

「よっし! ちょっとどっかいかねーか?」

浩太は大きく伸びをして悠斗にそう提案する。

「そうだね。まだ時間あるしいいんじゃないかな。どこにいく?」

「カラオケはいったしな……。電車乗って隣町のデパートにでも涼みに行くか」

「そうだね、僕も今日はもう用事がないし、付き合うよ」

悠斗はそう頷くと、駅にむかって歩き出した。



◆◆◆◆◆



「なんだろうあの子。彼の友達だっていってたから、悪い子ではないんだろうけど……」

一人そうぼやきながら、商店街をふらふらと歩く雫。

(あの時、馬鹿っぽい言動をしながらも、冷静にこっちを観察していたんだよねー。

ああいう子は少し厄介だなー。まぁ、ああいう子が魔術を覚えると面白そうだけどねー。)

浩太の冷静な視線に、居心地が悪くなった雫は、お金だけおいてそそくさと逃げてきたのだった。

「それにしても、荒木のやつは何を考えているんだー?」

思考を切り替え、昨日の戦いから続く疑問にとりかかる。

(荒木だって無限に魔獣が生みだせるわけではないのに、なぜああも局地的に少ない数を送り込む?

そんなことをしても、確固撃破されていたずらに魔獣の数を減らすだけだというのに)

「わけがわからんなー。どうも後手に回らされてるよー」

こういうときこそ、ああいう子が欲しいんだけどなー等と愚痴る雫。

(おう? この感じは……)

商店街も終わり、住宅街に差し掛かろうというところで魔獣の気配を感知する。

「うーん……、南の方か……。家とは逆だけど、ほっとくわけにも行かないしなー。仕方ない向かうとするか」

そういって飛び立つ雫。

少しの時間飛び、目的の場所に着く。

術式を解除し、降りようとした瞬間、地面から触手が伸びる。

それを難なくよけ、雷の術式で本体ごと叩く。

「ほんとこいつは見た目が気持ち悪いなー。荒木も趣味が悪い」

雷に打たれ、たまらず地面から這い出てくるイソギンチャクのような魔獣。

そこに容赦なく魔術式を組み、打ち込む。

「火雷複合魔術! 炎雷天剣! なんてねー」

雫の頭上に巨大な魔術式が展開され、炎をまとった雷が、イソギンチャクの胴体に向けて降り注ぐ。

高圧の電流と、火炎に焼かれなすすべもなくイソギンチャクは炭になる。

「あっけないなー。日中人目につく危険性もあるっていうのにわざわざこんな雑魚を仕向けてくる理由がわからない」

死体を燃やしつくし、さて帰るかと風の術式を組もうとした瞬間

(……ッ! またもう一体? いや……、これはまさか!)

魔獣の位置を確認した瞬間、雫はようやく荒木の目的を理解した。

「これはまずいな……、近くに悠斗君もいるようだし間に合うといいが……」

そういうと、急いで術式を組み、魔獣の気配がした方向に飛び立った。



◆◆◆◆◆



電車で隣町まできた悠斗と浩太は、絶体絶命のピンチに陥っていた。

電車を降り、デパートに向かおうとして少したったところで変なことに気がつく。

周りに人が誰もいないのだ。

それに気がついた浩太が、悠斗に引き返そうと提案した時、悠斗でも知覚できるくらいの魔力が迸った。

その感覚が収まったときには、すでに結界を張られたことに気がつく。

そして、

「昨日ぶりだな、悠斗君」

悠斗たちの前に、魔獣とともに荒木が現れる。

いきなりのことについていけない浩太も、本能的に危ないと感じたのか、自然と身構える。

「こっちには一般人もいるのですよ? 大体あなたは何が目的なんですか?」

浩太をかばいながら、話しかけ時間を稼ぐ。頭の中はフル回転しながらここから逃げる方法を考えていた。

「君に話す必要はない。恨むなら君の師匠を恨むことだな」

そういい残し、魔獣だけを残して消える荒木。

「くそっ! 結界もはられてるみたいだし、どうやって逃げる…!?」

自分ひとりなら、戦うことも考えたが、ここには浩太がいるため、逃げるための算段を考える。だが浩太は、

「お前はあれが何か知ってるんだな? 全く……、やっぱり厄介ごとに巻き込まれてるじゃないか。

少しだけなら時間を稼げると思うが、その間に作戦でも考えるか?」

冷静に、相手を観察しながらそう言ってのけた

「時間を稼ぐって……、相手はあの怪物だよ!? 常人じゃ無理に決まってるじゃないか!」

「そうでもないさ、たぶん少しなら問題ない。それに、お前はあれをどうにかする方法を持っているんだろう?」

確かにそのとおりだった。おそらく、こいつを葬れるであろう魔術式はすでに頭の中にあった。

「……わかった、浩太を信じるよ。でも絶対無理はしないでね? 1分間、1分間だけ時間を稼いで」

そういうと、悠斗は術式を組み始める。

「任せとけ、それくらいなら楽勝だ」

浩太も、魔獣に向かって身構える。

そして魔獣が吼えると同時に動き出した。



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