魔術講座と後片付け
相変わらずの説明回です。
そしてPV1000突破!
皆さん本当にありがとうございます。
二人で食器を片付け、修行を再開する。
「でも、続けると言っても、君はすでに昨日魔術式を組んだよねー?
だから、私から教えられることは、新しい陣と私の術式の組み合わせ方かな」
そういうと、紙に3つの陣を書く。
「基礎系統とは別の陣。風、光、闇、の三つの陣ねー。
供給する魔力の量が違うってだけで基本は同じだよ。
大体2倍くらいで考えればいいかなー」
「2倍ですか。そういえば、魔力の量とかってあるんですか?
昨日割と魔術使いましたけど、朝からだが異常に重くなったくらいで減ったって気はしないんですよね」
確かに体はだるいが、ゲームや漫画のように、魔力切れを起こしそうだという感覚はなかった。
「魔力は精神力や生命力を変換するって言ったでしょー? だから、精神が持つ限りいくらでも魔術は使えるよ。
ただ、君の体が倦怠感を覚えてるように、命に支障はないレベルとはいえ生命力もつかってるから、
魔術使用時に、意識が飛びそうになったら危険なラインだと思っていいよー
一度、安全なときに自分の精神がどこまでなら耐えられるのか試してみるといいかもねー」
「安全なとき……、少なくとも荒木って人をどうにかするまでは無理そうですね」
確かにその通りだ、と苦笑しつつ雫は話を戻す。
「さて、陣はもう暴発しないだろうし、自分でやってもらうとして次は術式の話をしようかー。
術式の組み合わせには、昨日君がやった単一の陣を重ねて効果を跳ね上げる物と、
複数の種類の陣を組み合わせ、多種多様な効果を生み出すものがある。
これは昨日も少し話をしたねー?
複数の陣を組み合わせるときには注意しないといけないことがあって、魔術的に相性が悪い物は、
組み合わせるのがとっても難しいのさー。君は昨日それをうまく利用して、火の魔術の膨大な熱を防いだようだけど」
雫は昨日のうちに悠斗からどうやってあの魔獣を倒したのか、詳しく説明を受けていたため、
実際に見てはいなかったが、悠斗の使用した術式を把握していた。
「あの時はとっさに、火の魔術なんだから水の魔術で防げるんじゃないか……くらいしか考えてなかったんですけどね……」
「魔術はルールを具現化したものだといったでしょー?だから、物理的には一瞬で蒸発してしまうような水でも、
両方が魔術によって構成されていたから、そのルールが作用して防げたんだろうね。
そういう意味では、魔術によって引き起こされたわけではないあの大爆発に対して、土と水の陣で物理的に防いだのは正解だったね」
あの時、もし水の陣のみで防いでいたら体ごと吹き飛んでいたと知り、
あのときの自分に咄嗟にあそこまでよく考えたと褒めたくなった悠斗であった。
「とっさの判断も、いざというときは大事だよ? 最近はそのとっさが多すぎる気もするけどねー。
さて、それじゃあ好きに術式を組んでみなー。習うより慣れろっていうでしょー?」
そういって立ち上がった雫は、ドアを開けて外に出る。
それに続き悠斗も外に出る。そしてそこにあったのは――――
「……まぁ、あれだけ暴れたからこうなっても仕方ないのかも知れないですけどこれはひどいですね」
ところどころえぐれた地面、大きな爆発の跡、燃えて灰になった草木。
「というわけで、これを魔術を使ってなおそー。それが終わったら今日は解散!」
一人そう宣言し、自分はそそくさと椅子と机を家からひっぱりだし、お茶を用意する。
「……ちなみに師匠は?」
「私は昨日何度も魔法を使ったせいで疲れてるのでねー。それに雑用は弟子の仕事と相場が決まっているだろう?」
「……ですよね」
予想通りの答えと、目の前の惨状に悠斗は頭を抱えつつ渋々片づけを始めた。
◆◆◆◆◆
「や・・・・・・やっとおわったー!」
空を見上げ、晴れ晴れとした笑顔で叫ぶ悠斗。
「お疲れさまー。いやあすっかり綺麗になったねー」
日陰でのんびりお茶を飲みながら弟子をねぎらう雫。
「もういやだ、疲れた……、なにもしたくない……」
すでに時間は昼過ぎになっており、空腹と、魔力の大量使用による精神的な疲労で、悠斗は完全にダウンしていた。
「よしよし、ずいぶんと頑張ったことだし今日のお昼は私がおごってあげよー」
「おお! さすが師匠太っ腹ですね!」
少し元気が戻った悠斗は、ゆっくり立ち上がろうとして、そのまま座り込んだ。
「……体が動きません」
「あははっ、魔力の使いすぎだねー。少し休めばなおると思うけど、動けるのを待っていたら昼時を逃してしまうなー。
仕方ない、荷物は何も持ってきてなかったし、私が運んであげよー」
そういうと、雫は悠斗を抱きかかえ風の魔術式と光の魔術式を展開する。
「こうして師匠に抱きかかえられるのは何度目ですかね……。年頃の少年としては非常に気恥ずかしいんですけど」
「文句を言うならおいていくぞー?」
「いえ、滅相もございません」
軽いコントを交わしてる間に、雫の準備が整う。
「さて、それでは快適な空の旅だよー。心行くまで楽しむといいー」
悠斗を抱えたまま、ふわりと飛び上がる雫。
「おー!? 浮いてる!? すごい! すごいですよ師匠!」
目の前で起こってる出来事に、興奮を隠せない悠斗。
「危ないからじっとしていなさいー。おっこどすよー?」
手のかかる弟子だ、等とおもいつつ、雫は空を飛ぶ。
光の魔術式で姿を消した二人はそのまま、悠斗の住む町まで降りていった。
◆◆◆◆◆
「到着ー」
「ありがとうございました師匠」
「どういたしましてー」
町の中の人気のない場所で、魔術式を解く。
そのまま、駅前の通りまで歩いてでる。
手っ取り早く近くのファミリーレストランに行くことにした二人。
「さすがにレストランの中は涼しいですねー」
真夏といっても過言ではない季節のため、生き返ったようにつぶやく悠斗。
「確かにねー。これだけでもきたかいがあったなー。それはそうと、もう体は動くかい?」
「もう大丈夫そうです。一時間ほどで治るみたいですね」
そんなやり取りをしている間に注文が来る。
悠斗は、ハンバーグランチを頼み、雫はコーヒーを頼む。
「がっつりいくねぇー」
コーヒーを飲みながら、悠斗に話しかける雫。
「そりゃもうお腹すきましたから。あれだけの物を一人で片付けさせるなんて師匠鬼ですよ……」
「なんだなんだー?か弱い乙女に手伝わせるには酷だろうあれはー」
「どこにか弱い乙女がいるっていうんですか……」
二人がいつもどおりのやり取りをしていると、
「お?悠斗じゃないかー……ってお前誰だその人!? まさか一人抜け駆けして彼女を作ったのか!?」
同じレストランに来ていたのか、浩太が悲痛な叫びを上げて近寄ってきた。
「レストランの中くらい静かにしようよ……、彼女じゃなくて知り合いのお姉さん。
皆川さん、彼は友達の浩太です」
さすがに浩太の前で師匠というわけにはいかず、久々に苗字で名前を呼ぶ。
「日野浩太です! よろしくお願いします!」
「皆川雫だよー。よろしくねー」
簡単に自己紹介をすませる二人。
「さてと、丁度いいし私はおいとまするかなー。
友達同士あとは仲良くやってくれー」
残っていたコーヒーをのみほし、雫は席を立つ。
「あれ、もう帰るんですか?」
「うん、また用があったら連絡するねー。
とりあえずお金だけ置いていくから、後は好きにやってー」
そういって店を出て行く雫。
後にはいまいち状況を飲み込めていない悠斗と浩太が残された。
これで説明回は終わりです。
次からはようやく戦闘メインに!