第10.5話前編「着物とジェラピケ」
着物→ジェラピケという、圧倒的コンボ。
脳内が暴走して止まらない!
だけど、好きだからこそ暴走しちゃうんだよな…って話。
「だーめだ。人多すぎてLINEがずっと既読になんねーな」
参拝が終わったあと、人混みを避けて神社の外に出るも、他メンバーを見つけられず。
横には振袖姿の奏が、手に息をかけている。
……クッソ。なんでそんな仕草まで可愛いんだよ。
こちとら1カ月以上お前に会ってなくて、すっかり免疫落ちてんだぞ!? 殺す気か!!!
「風邪引いたらまずいから、どっか店入ろうぜ」
運よく混んでいないカフェを見つけ、奥の席に座る。
なんっっっっっつーーーか……
着物って、もっとこう「防御力高め」かと思ってたんだよ。
実際はなんだよこれ……脳が焼けるレベルの隙だらけじゃねぇか!!!
うなじ、襟足、手首、足首……は?この絶妙な“肌の覗かせ方”誰が設計した?
日本人の色気、ここに極まれりじゃん……
あとなんか紐……!謎に多い紐ッ!!何に使うんだよあれ!!
あれ、解かれるために存在してんだよな?
解くたびに「いいのか…?いくぞ…?」ってなるじゃん?
紐フェチか?紐フェチなんだろ?
……あれ???
着物の下って下着着けてないって聞いたことあるぞ!?!?!?!?!?!?!?!?
無理。考えたやつ天才すぎて無理。
あとそれ教えたやつどこだ。マジありがとう。
全オレがスタンディングオベーションする。
え、じゃあさ……
奏は今……下着着けて……
着けてなかったら……
オレが今、何を目の前にして座ってるかわかる!?!?!?
普通に向かい合ってカフェ座ってるけど、これもう拷問だろ!
しかも奏の所作がさ、丁寧で上品なもんだから、逆に想像が暴走するっつーか……
完璧に整った“品の良い外装”が、乱れたときのギャップを期待させてくるんだよ。
袖を押さえる仕草一つで「どうかした?」って顔されたい。
裾が乱れて「きゃっ」て慌てるところを真っ先に見つけたい。
は!?
オレ、着物という存在に公式で煽られてる……!?
奏、着物着てるだけで無自覚にオレを煽ってきてるんだけど!?
“清楚の皮をかぶった極限兵器”じゃん……着物って。
なんだ?そんなにオレを煽って、どうしたいんだよお前は。
節目がちに抹茶オレを飲んでいた奏が、ふいにこっちを見た。
やべ、見すぎたか……もっと色の濃いサングラスしてくりゃよかった。
「セナ君たちは少しはお正月休み取れるの?」
「今日の昼間だけだな。夜はまた収録。お前は?冬休みだろ。なんかした?」
「私は、毎日テレビ観てたよ。テレビでみんなの姿をいっぱい観れて楽しかったな」
だから……なんっでそんな可愛いこと言うんだよ!!
あんな妄想してたオレがバカみたいだろ!!
「あ!あとね、クリスマスは友達とお泊まり会したの!」
は?お泊まり会?誰と?男とかいねーだろうな?
「スイパラ行って、みんなでお揃いのパジャマ買って」
そう言いながら楽しそうにスマホを操作する。
こっちはそんな仕草すら色々駆り立てさせられてるのも知らずに……
「写真、見る?」
手渡されたスマホの画面を見て……
ヒュッッッ!!!!!!
そこには控えめに言って天使が写っていた。
……あっぶな!!!今、心臓3回止まった!!危うく死にかけたぞ。
オレじゃなかったらマジで死んでた。
ちょ、ちょっと待ってこれ何!?人間???いやこれ……もう精霊か妖精の類じゃん!?
見てはいけない禁忌に触れた気がするんだけど!?
やばい、記憶ごと保存したい。
脳にスクショ機能あったら今すぐ使う。
は????何、このフワフワな部屋着にうさみみ。
完全に解釈一致すぎて1億点あげたいんだが?
え、目の前のこの“清楚”って文字を具現化したような子と、ジェラピケ着てる子、同一人物なの?
ギャップの高低差エグっ!!!
え、ちょ……ちょっと……脚、白ッ!!
マシュマロより柔らかそうで、目のやり場に困るんだけど……?
いや、嘘だった。瞬きもせずバッキバキな目ぇしてガン見してるわオレ。
美白にも程があるだろ。これ施術した奴、誰だよ名乗り出ろ。紹介しろ。
は?モコモコのふわっふわじゃん。
あ、やば、袖のダボさ。手が完全に埋もれてるやつじゃん。
はいはいはい。萌え袖ってやつを完全に今理解したわ。
なにマジで可愛すぎか ……え、抱きしめたい。
っていうか、抱きしめたら終わる気がする。脱がしたくないのに脱がしたい。
てか一生パジャマパーティーしよう?ジェラピケ婚しよう?式場もジェラピケで飾ろう?
やっばいなオレ、頭にジェラピケ詰まってる。助けてくれ誰か。
たぶんもう離せない。物理的にも精神的にも。もう意味わからん。
動揺が悟られないように冷静を装って言葉を出す。
「他も見ていーの?」
「うん。いいよ」
やばい……今日の元旦がオレの命日かもしれん……
心を鎮めながら写真をスワイプしていく。
友達とジャンプしてお菓子を食べたり、メイクされてる様子…… はしゃぐ奏の姿が次々と出てくる。
これ、今すぐ世界中に公開した方がいいんじゃねーか。
戦争なんて一瞬で無くなんだろ。
世界平和の象徴だろこんなん。
ノーベル平和賞100年分に相当するんじゃねーか。
いや、ダメだ。他の男になんか見せられるか。
「その写真」
「ん?」
やべ、今声裏返んなかったか??
「友達が凄い可愛く撮ってくれた気がして、LINEのアイコンそれにしようかな?って」
「……いや、ダメだろ」
「むー」
奏がむっとする。かわいい。はい、優勝。いや、違う違う。
今はそれどころじゃない。オレの感情がどこに向かえばいいのか、マジで分からん。
「……ほら、どこで誰が見て、何するか分かんねーだろ。ま、一瞬ならいんじゃね?」
そう答えながらスマホを返す。
一瞬で保存行けるか?オレ…… 保存して、夜中にそっと見て、スマホ握りしめて布団に埋もれて……
こっっっっわ。きっっっも。オレ。
なんでよりによって奏なんだよ。
なんでよりによって、この子にはこんなにもグズグズになるんだよ。
「……ん?」
奏から個別のLINEにさっきの写真が送られてくる。
「ふふ。でも、やっぱり誰かに見てほしいから、セナ君」
っっっっっ!!!???
「ん」
速攻保存した。 クラウドにも。
ああもう、笑うなその顔で。
太もも出すな、その顔で。
ジェラピケ着るな、その笑顔で。
なんか、もう、全部無理。
耐えられない。
その夜……
かんっぜんにやっちまった……
スマホには奏が送ってくれた写真が表示されてる。
あまりにも無垢な笑顔を汚してしまった罪悪感に苛まれる。
お前が……可愛すぎんだよ……ダメだ……これ以上表示してたらまた……
精一杯の未練を断ち切り、なんとか写真を閉じる。
Amazonで「ジェラートピケ メンズ パジャマ」検索。
指が勝手に動いていた。
完全に終わってる。
秒で終わってる。
俺の理性。
マジで……誰か止めてくれよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
いちばんバカやってる話かもしれない…
だけど、セナの“本気の恋は暴走型”って一面が、書いていて楽しくて仕方なかったです。
読んだあとにちょっと笑ってもらえたら、それで大成功です。
もし少しでも気になってもらえたら、フォローやお気に入りしていただけると励みになります。
次回、第10話のアンサーストーリー・後半をお届けします【8月23日(土)夜】に更新予定です!
ぜひまた覗きに来てくださいね!