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若返りなんてロクなもんじゃない



「君達、」


 目の前の3人の子供の1人――メガネをかけ、高そうな服を身につけたいかにもなインテリっ子君が、こちらに優しげな笑みを浮かべ、こちらに語りかけてくる。


「ここが一体、どこかわかるかな?」


 なんだ、この子供に語りかけてくるような喋り方……


「う、ううん……?」

「私もーっ」


 その質問に、おどおどしたなんの特徴もない服を着た気弱っ子と、黒髪をヘアピンでおさえ、腹だしした、いかにもなギャルっ子が答えた。


「俺も……」


「そうか……」


 続けて俺も答え、その反応にインテリっ子君はメガネをくいっと上げ、訝しげな表情を浮かべている。


「いやぁーアタシ、ゲームしてたら、いきなりテレビが光ってさー、なんか知らないうちにここにいたんだよねー」


「……!?」


 ギャルっ子が何気ない口調で言うと、インテリっ子君が驚愕の顔でバッとギャルっ子に顔を向けた。


「今のは本当か!?君達も!?」


 続けて、俺ともう1人の気弱っ子を見て、俺達は無言で頷く。


「なるほど、状況は同じか……。トリガーはやはりあのゲーム……。それにしても君達、まだ子供なのにあの難しいゲームをプレイしてたのかい?」


 お、これはバカにされてんな?


「おい、誰がゲームもできない子供だ。高校生舐めんじゃねーぞ。」


 相手はガキだが、こうゆうのは下手に出るとつけあがるからな、強く出る方がいいだろう。

 しかし、俺の反論むなしく、インテリっ子君はさらに訝しんだ表情を向ける。


「なにを言ってる。どこからどうみても、小学生……いや園児か?どちらにしろ、それぐらいの子供だろう。」


「何言ってんだお前?」


 俺はもう中学を卒業し、高校に入学した。

 いや、確かに頭が小学生以下のアホどもが集まる高校に入学はしたが、肉体は立派な高校生のはずだ。


 だが、おかしい。

 他の2名の女の子達が、困惑した顔を向けている――インテリっ子君ではなく、この俺に……。


「え、俺がおかしいの?俺園児?」


 2名は神妙な顔で頷いた。


「え、俺園児だった……?」


 意味がわからない。

 俺の頭が小学生以下という罵倒なのなら、納得はできるが、他3名の顔からして冗談を言っているようには見えない。


「いや、だとしても、お前にガキ扱いされる謂れはねーよインテリっ子君。お前もガキじゃん。」


「インテリっ……いや、いい。僕はれっきとした社会人だよ。」


「はぁ?」


「………。」


 俺達の反応から、インテリっ子君は何かを感じたのか、頬に汗を流しながら、不安気に問いかける。


「僕、子供?」


「「「…………。(無言で頷く3人)」」」


 俺達の反応を見て、インテリっ子君は顔を青くして、問いかける。


「君達の年齢を聞いてもいいかい?」


「アタシ、17ーっ!」

「わっわたしは……じゅっ19です。」

「俺、16。」


 おい待て、なんかすごい嫌な予感がする。

 嘘だろ……。これまさか……。

 周りを見ると、あっけらかんとしたギャルっ子以外顔を青くしていた。


「君達、薄々勘付いていると思うが、僕達は園児ほどの年齢にまで若返っている。」


 そう言って、懐から取り出した手鏡を開いて俺達に向ける。


 そこに写るのは、パーマがかった髪に涙ぼくろのある顔、いつも見ていた顔がそのまま幼くなった俺の姿であった。


「嘘だろーーっ!?」

「……!?」

「すごーーっ!!」


 反応は三者三様、シンプルな驚愕で震える俺と絶望したように顔を青くする気弱っ子、楽し気に驚くギャルっ子……ギャルっ子すげー。


「どうなっているのかはさっぱり分からないが、トリガーはあのゲーム……それに3人とも自分の手の甲を見てくれ。」


 インテリっ子君?の言う通り、手の甲を見るとダイヤマークのタトゥーのようなものが入っていた。


「なんじゃこりゃ。」

「………!?」

「わーっ!!」


 俺以外はこれがなんなのか知ってるようで、それを見た気弱っ子?は息を呑み、ギャルっ子?は嬉しそうに声を上げる。

 

「ディメンションマークじゃん!!」

「ディメ……なに?」

「ディメンションマーク……まぁあのゲームのインベントリのマークだよ。知らないのかい?」

「しっ……しらない。」

「…………。」


 いや、そんな、こんな基本もわからないのか、みたいな顔されても、わかるわけねーじゃん、ゲームやる前にここに来たんだから……。


「じゃ……じゃあ!!まさか……!!ここは……!!」


 俺が手の甲のディメンションマークとやらを、弄っていると、気弱っ子がやけに興奮した顔で声を張り上げた。


「あぁ。結論づけるには早計だが、可能性は高いだろう。」

「すごーい!!私達、DDの世界に来ちゃったんだ!!」


 ギャルっ子も跳ねながら、嬉しそうに声を上げる。


「DD……?」

「『Dimension Dystopia』の略称さ。君本当にプレイヤーかい?」

「いや、まぁその、ゲーム買って起動した瞬間ここにいたから、やったことねーんだよ。」

「それは……なんというか、災難だったな。」


 インテリっ子君?は申し訳なさそうな顔をしてくるが、それならもう少し説明が欲しい……


「で、そのDDは、どうゆうゲームなんだよ。」


 俺が何気なく言うと、ぐいっと顔を近づけた気弱っ子は興奮した顔で顔を近づけてきた。


「DDはね!!魔法、科学、なんでもありの現代アクションファンタジーゲームだよ!!異世界であるディメンションワールドと現世界を行き来できてね!!ディメンションワールドにはエルフとか獣人とか、いっぱい種族がいるんだけど!この世界は邪神が支配する世界……ディストピアで!主人公の悠真君が邪神と戦ってディストピアをユートピアに変えるゲームで!」

「ちょっ……」

「他にも七宝天とか天帝とか、いろんなキャラが出てきて!!ダンジョンでレベルアップして!!それから!!」

「ちょっ待って!一気に言われてもわかんねーから!ゆっくり!」


 それから、興奮気味の彼女から、一通りゲームの設定や物語を聞いて、ようやくこのゲーム世界の全貌を理解した。


 つっ……つかれた。


 5時間くらいぶっ通して語られた。


 気弱っ子は興奮が醒めないのか、落ち着きなくそこらへんを歩き回っている。

 もはや気弱でもなんでもない。


「大体話しはわかったかな?」

「まぁわかった。インテリっ子君。」

「インテリ……僕の名前は津田 愛斗(つだ まなと)だよ。そういえば自己紹介がまだだったね。」

「俺は、鬼月 狩羅、よろしく。」

「アタシ、九条 蓮花(くじょう れんか)っ!レンカって呼んでね!」

「わっ……わたしは東雲 瑠夏(しののめ るか)だよ……。」


 いつのまにか、落ち着きとともに、おどおどを取り戻し、気弱っ子に戻っていた瑠夏さんは地面を指差した。


「そっ……それで、ここ、どこ……なのかな……?」

「おそらくは、ディメンションワールドかダンジョン内だろう。」


 ダンジョン……ディメンションワールドなる異界と現実世界の両立したこのゲームで、コアと言われるディメンションワールドの因子がこの現実世界を侵食することでつくられるのが、このダンジョンらしい。


 ダンジョンにはディメンションワールドにいる危険な魔物が現れるらしく、魔物を倒せばレベルが上げられ、アイテムがドロップするとか……ダンジョン奥にあるコアを破壊すれば、ダンジョンは崩壊する。


「ダンジョン内だとすると、ここはセーフティーポイントだろうな。でなければ、とっくに僕達は魔物の餌だ。」

「魔物ってそんなにやばいやつなの?」

「もしここが本当にゲーム世界でゲーム通りの魔物ならば、僕達は間違いなく簡単に食われる。」

「まじか。」

「ねーねー!魔物と戦うんだったらさー、なんか装備した方がよくなーい?」

「それができないから僕達はここで策を……待て、それをどこで?」


 訝しんだ愛斗の目線の先では、レンカが先程まではなかった金色の宝石で装飾された腕輪をつけていた。


「うーん?このディメンションマークを見て、出ろーって念じたら出たよ。これアタシのお気にの腕輪なんだよねー」

「まっ……まさか……ゲームで手に入れたアイテムがこの中にあるのか……?」


 そう言って、愛斗が手の甲を見て、念じるように目を瞑ると、何もない空間からいきなり剣が出てきた。


「やっやったぞ!できた!インベントリに入ったアイテムをイメージすれば、出てくるのか!」

「す……すごい!!じゃあ『帰還の腕輪』で転移すればここから……!」

「そうじゃん!!じゃあ早速ここから出よっか!」

「え、そんなのあんの?俺、このゲームやったことないけど大丈夫そ?」


「「「………あ。」」」


 そのうわ、そうだった、みたいな顔やめてください。泣きそうになるから。


「まぁ、『帰還の腕輪』は使わないとしても、僕達が所持してるアイテムがあれば、この幼体でもなんとかダンジョンを抜けられるだろう。もっとも、ここがダンジョン内であればの話だが。」

「確かに……ここがディメンションワールドのどこかだったらどうしよう……。」

「まぁーなんとかなるよっ!みんなでカルラを守ろっ!」


 やばい、泣きそう。

 今まで人の優しさに触れることなかったから泣きそう。


「じゃあいこうか。」

「……うん。」

「いこーー!」

「よっしゃァ」


 

 こうして、俺達はようやく歩みを始めた。


 その数分後、俺達は普通に魔物に出会し、追いかけられるのであった。



 

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