こんなくっだらない毎日ですが、イマジナリーフレンドがいるからなんとかなってます。
今の世の中、何かと草臥れる事に塗れすぎている。
我が家の中ですらそれは例にもれず、夫婦仲の悪いうちは、
自分の部屋しか休める場所がない。
そんなんだから、昔から、何故か人が嫌いで馴染めない。
自分が人間だっていうのすら、あんまり認めたくないくらい。
でも、そんな幻想も捨てた。全ては、私の救い主のおかげ。
もうすこしで、専門学校生活も終わる。もういい歳なのだから、
卒業と同時に、家を出よう。やっと、もうすぐで自由が手に入る。
「シナズ…」
『はいはい、どうしたの』
「苦しいよ。どうして我が家の両親はあぁ歩みよりをしようとしないの…?」
とはいえ、今も尚苦しいことには変わらないのだけれど。
今日も、折角の休日だっていうのに、リビングに長居してしまったせいで母の愚痴に巻き込まれてしまった。一生懸命、お悩み相談に答えているうちに、自分に毒をため込みすぎてしまったらしい。
たまらず、切り上げて部屋に逃げてきたという訳だ。
『それはね、人間ていうのは、自分の主観でしかものを語れないからだよ…』
「そうだね…私もそう思ったよ」
シナズと呼べど、この部屋に人間は私しかいない。
しかし、私の眼には、肉眼で視えずともちゃんと”いる”事は伝わっていた。
赤黒い髪はよくその金の角に映えていて、濃紺の両目は、今も私に向けられている。
シナズは、この魔族のような不思議な姿の男性は、私のイマジナリーフレンドなのだ。
『今日も、嫌だったね…さぁ、私がよしよしとしてあげるから…』
「ありがとう…」
『さぁ、楽にして?その胸の毒、私が捨ててきてあげようね』
「うん」
シナズが私の手に、その手を伸ばす。
その手は、ぱっと光を伴い、私の胸に突き刺さる。
そして、ずるずると取り出されたのは、黒いヘドロの様な靄のようななにかだった。
シナズは、こうやって、私の心にたまった毒を浄化してくれる。
他にも、身体が痛いときは、手を当てて癒してくれるし、なんでもござれだ。
もちろん。イマジナリーフレンドとして、私の言葉に耳を傾けてくれる。
イマジナリーフレンドって、幼少期に消えてしまう事が普通らしいが、
私の場合は、なぜか、この歳になっても、そのまま居続けている。
その理由はまだわからないけれど、いつか解ればいいなと思う。
窓を通り抜けて、シナズが毒を捨てに行く。
いつも、助けてもらってばかりだけれど、そういうと、決まってシナズはいうのだ。
「こう見えて、君に助けてもらっているんだよ」
…と。