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第4話: 第1デート--貴族の令嬢の心

青空が広がる日、宮殿の庭園は静かに風にそよいでいた。


美しく手入れされた草木と花々が、異世界の中でも特別な空間を作り出している。そんな中、フラン・リースとセリーヌ・ラトリスは、二人だけのデートの時間を迎えていた。


「いや、何というか、こんなところで貴族の令嬢とデートするなんて……少し緊張してます。」

フランは、口元に軽い笑みを浮かべながらセリーヌに話しかけた。彼は、普通の一般市民の青年。そんな彼にとって、ラトリス家という名門貴族の娘と二人きりで過ごすのは、どうしても身が引き締まる思いがあった。


「フラン様、緊張なさらなくて大丈夫ですわ。私も、こうして一般市民の方とお話しするのは初めてですの。」

セリーヌは柔らかな笑顔を浮かべ、フランの緊張を解こうと努めた。彼女の声には、貴族としての品位を保ちながらも、フランに対する思いやりが滲み出ていた。


二人は庭園の小道を歩き始めた。周囲には美しい花々が咲き誇り、香りがふわりと漂ってくる。静かな時間が流れ、二人の間に心地よい緊張感が漂っていた。


「セリーヌさん、あなたは……本当に貴族の中でも特別な方なんですよね。」

フランは少し戸惑いながらも、彼女の目を見つめた。これまで接してきた貴族とは違う、控えめで優雅な雰囲気を持つ彼女に、どこか引かれる自分がいることに気づいていた。


「私はただ、家の名に恥じぬように生きているだけですわ。ラトリス家の一人娘として、期待に応えなければならない。それが私の役目です。」

セリーヌはそう答えながら、少し視線を遠くに向けた。その言葉には、重い責任を背負っていることが滲み出ていたが、それを表には出さない彼女の強さが感じられた。


「そうか……やっぱり貴族って、普通じゃ考えられないくらい重いものを背負ってるんだな。」

フランは静かに頷きながら、彼女の言葉を受け止めた。彼は、セリーヌがただの貴族の娘ではなく、自分とは全く異なる世界で生きていることを改めて実感した。


「でも、セリーヌさんだって、きっと自分のことを考えることもありますよね?自分が本当にどうしたいのかとか……」

フランの言葉に、セリーヌは少し驚いた表情を見せた。今まで誰にも聞かれたことのない質問だった。彼女は常に家族や貴族としての期待に応えるために生きてきたため、自己の欲望や希望を口にすることがほとんどなかったのだ。


「私が……本当にどうしたいか、ですか?」

セリーヌは一瞬考え込み、少し戸惑った表情を見せた。しかし、彼女の瞳に浮かぶものは、どこか柔らかさを帯びていた。


「正直に言えば、考えたことがありませんでしたわ。私はずっと、家のため、ラトリス家の一員として生きてきましたから。」

彼女の言葉には、ある種の誠実さと純粋さが込められていた。フランはその答えに驚きつつも、どこか共感を覚えた。


「それって……すごいことだよ。でも、僕はもっとセリーヌさん自身を知りたいと思ってる。貴族とか家の名前じゃなくて、セリーヌさん自身をさ。」

フランの言葉は真っ直ぐで、彼女の心に響いた。彼は、彼女を貴族として見るのではなく、一人の人間として接している。そのことが、セリーヌにとって新鮮だった。


「フラン様……あなたはとても不思議な方ですね。普通の方は、私の家の名前や地位を気にして、もっと距離を置くものですのに。」

セリーヌは優しく微笑んだ。彼女はフランの率直さと誠実さに心を開き始めているのを感じていた。


「僕はただ、セリーヌさんを知りたいだけです。もちろん、貴族ってすごいと思うし、尊敬もしてるけど、もっとその先にあるものがあるんじゃないかなって。」

フランはそう言いながら、少し照れくさそうに笑った。彼は貴族の世界に対して敬意を払いつつも、セリーヌを一人の人間として見つめようとしていた。


「フラン様……」

セリーヌは再び彼の目を見つめた。彼の言葉には嘘がなく、純粋な気持ちが伝わってくる。それが彼女の心を少しずつ揺り動かしていく。


二人はしばらくの間、静かに歩き続けた。言葉がなくても、その時間は心地よく、互いに少しずつ理解し合っているように感じられた。


「フラン様、あなたは……普通の一般市民だと言いますが、私はそうは思いません。あなたには、特別な何かがあります。」

セリーヌは静かにそう言った。彼の素朴で真っ直ぐな性格が、彼女にとってはかえって魅力的に映っていた。


「そうかな?僕なんて、ただ普通の青年だよ。セリーヌさんみたいに、すごい家に生まれたわけでもないし。」

フランは笑ってそう答えたが、セリーヌの言葉に少し照れたような表情を見せた。


「でも、あなたには……自由がありますわね。私にはない、自由な心。それがとても眩しく見えることがあります。」

セリーヌは、フランに対して本音を語り始めていた。彼女は貴族としての制約の中で生きてきたため、フランのように自分の意志で行動できる人間に憧れを抱いていたのかもしれない。


「自由か……確かに、僕は何にも縛られてないけど、逆に言えばそれだけ自分で決めないといけないことも多いよ。」

フランは少し考え込みながら答えた。自由であることは、責任を伴うものであり、彼もまたその中で自分の道を模索しているのだ。


「それでも、あなたのように自由に生きられることは素晴らしいと思います。私もいつか、そんな風に生きてみたい……」

セリーヌは少し恥ずかしそうにそう言いながら、目を伏せた。


「セリーヌさんなら、きっとそうなれるよ。僕が言うのもなんだけど、貴族とか一般市民とか関係なく、自分の気持ちを大切にすることが大事なんだと思う。」

フランは真剣な表情で彼女に向き合った。その言葉は、セリーヌの胸に深く響いた。


「フラン様……ありがとうございます。」

セリーヌは小さく微笑んで感謝の言葉を口にした。彼女はフランの言葉を通じて、自分自身の心に少しずつ向き合い始めていた。


こうして、フランとセリーヌの初デートは穏やかに進んでいった。二人はお互いに少しずつ理解を深め、ただの貴族と一般市民ではなく、一人の人間として向き合うことができた。

もしかすると、このデートをきっかけに、二人の関係はさらに進展していくのかも知れない‥


そして、その先に待ち受けているのはどんな恋愛劇なのか――それは、まだ誰にもわからない。

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