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ライブ・オブ・アイドル  作者: 涼木行
第一章 この世の十字路
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第十二話 原罪

 


 木ノ崎はその少女を一目見て只者じゃないとわかった。恐ろしく整った横顔はそうだが、オーラが違う。そして何より、その目。正確には視線。ものの見方。何を、どのように見ているか。木ノ崎にはそれがはっきりわかった。彼女の視線の先を追うと、観光客と思しき女子大生の集団がいた。彼女はそれを見ている。否、彼女はそれを、本当の意味で見ている。


 この子は見ている。この子には、見えている。ただ漫然と見るのとはまったく違う、本当の意味での見るという行為。外側だけではなく、内側も。その過去と未来すらも見ようとする見方。目。それは同時に木ノ崎と同じ「見る目」でもあった。ものの見方、というより、人の見方。人間に対する観察眼。それと同じものが彼女にはあった。


 この子は見ている。見ようとしている。彼女たちが何者であるかを。その肩書だけではなく、もっと奥まで。過去や未来。感情。欲望。どういう人間であるかの、それそのものを。


 自分と同じ人間だ。


 木ノ崎は思わず笑った。見る限り、おそらく高校生といったところ。がしかし、木ノ崎の見立てではおそらく16前後。14はない。18もない。17は、ちょっと違う。16がギリあるかもだけど、なんとなく、まだ15。もしかすると中学生かもしれない。ともかくその歳で、そんなふうに人を見るとはね。どうなってんだか。どう育ったらこうなんだか。といっても自分も同じ頃にはそんなんだったろうし、近い環境で育てばそうなるのかもね、などと木ノ崎は勝手な親近感を抱きながら彼女のもとに近づいた。そうして彼女の近くで、


「大学生の観光客だろうね」


 と声を発した。彼女が木ノ崎の方を見る。予想通り、その顔立ちは完璧だった。中性的で、純粋さと気高さを併せ持ち、それでいて神秘的なところがある。決して他人が踏み入れることができない領域の存在を表している。そしてその目。すべてを見通す、銀河系のごとく深淵なる目。


 完璧だった。あまりにも完璧な顔だった。顔だけでわかる。すべてがわかる。彼女こそが探していた、間違いのない完璧な絶対たる存在であると。世界をとれる逸材であると。


 まさか初日で引き当てるとはね、と木ノ崎はふっと笑い、ビニール袋の中の買ったばかりのアイスを取り出した。


「これ二つに分けて食べるやつなんだけどさ、片方いる?」


「――じゃあ頂きます」


「ありがとね。悪いけど自分で開けてくれるかな。そうすれば未開封だって確認できて安心できるだろうからさ」


 そういって木ノ崎が差し出したアイスを彼女が受け取る。そうして袋を開け、アイスを割り、「ありがとうございます」と片方を木ノ崎に差し出した。


「こっちこそどうもね」


 木ノ崎はそれを受け取り、口に咥えるとその少女とは一定の距離をとったまま先ほどの女子大生の集団に視線をやった。


 四人。まあ女子大生の集団としては、いいのだろう。二人組を二つ作れる。余りが出ない。一人がトイレなどに行ってても、誰かと二人きりになるということはない。服装は、二十代前半の女性の流行をしっかりなぞっている。その中でも友人間で大きな被りが出ないようコーディネートしてるのはさすがか。どれも安すぎず、そこそこ高価なブランドのものだろう。時計やバッグもそうだ。言葉からして、みな首都圏の出身か。それなりに裕福層ではある。ブランドを着て沖縄旅行、しかも四人揃うというのはバイトもしていないのかもしれない。やはりそれなりに裕福な家での実家暮らしか。九月、大学によってはまだ夏休みである。しかし三年生は就活もあるだろう。とはいえこの時期はまだ始まっていないか? 四年生は、人によっては旅行してるだけの余裕もあるのかもしれない。一年ということはない。もっと垢抜けた感がある。だからまあ、本命は二年生というとこか。


「君はどう思う?」


 と木ノ崎は少女に尋ねる。


「何がですか?」


「彼女たち。見てたんでしょ? 観察」


 木ノ崎のその言葉に、少女は本当に一瞬だけ目を大きくした。


「――大学生じゃないですかね。本土の」


「うん。他には?」


「……標準語なんで、東京周辺とか」


「だろうね。何年生だと思う?」


「……ニか三じゃないですかね。一年生にしては慣れてる感じで、四年生にしては子供っぽすぎて。余裕のある感じや子供っぽさで二年生な気もしますけど」


「なるほどね」


 木ノ崎はそう答え、口角を上げたまま小さく頷いた。


「――あなたはどう思います?」


「俺? 俺はとりあえずね、」


 木ノ崎はそう言い、先ほど頭の中で立てていた見立てを話した。


「そうですか……それは当たってそうですね」


「だといいけどね。まあでもこうやって見てても四人に違いあるけどね」


「そうですね。さっきからあの長い黒髪の人は、チラチラあっちの男性の集団の方見てますね。視線とか笑みがすごい期待してる感じで。茶髪の人はずっと友達の方だけ見てて外部は一切興味ない感じで」


「確かにね。んじゃあっちの人はどういう人かわかる?」


「あのメガネの男性ですか?」


「そう。職業とかさ」


「……ちょっと遠いんであれだけどなんか教師っぽいですね」


「そうだね。役所の人間とかもあるかな。まあ私服すぎてヒント少ないけど。んじゃ次前通る人」


 などと言い、二人はしばらく目の前を通った人間の職業を当てていくゲームに興じていた。そこには何か不思議な独特の時間が流れていた。そうしてしばらくそのゲームに興じた後。


「でも答え合わせしなきゃ面白くないですよね」


 と少女が言った。


「そうだけど難しいからね。こんな見ず知らずの怪しいおっさんがいきなり聞いて教えてくれるわけないし」


「じゃあ私が聞いてきますよ」


 少女はそう言ってふっと微笑み、体重を預けていた腰掛けからぴょんと弾むように跳び、そのまま先ほど職業を予想した男の元へと駆け寄った。そうして何事か話し、お辞儀をしてすぐに戻ってくる。


「当たってましたよ。そちらが言ってた消防士」


「そりゃ良かった。けど危ないからやめたほうがいいよああいうのは。答えも気になるけどさ」


「そうですね。でもそれ自分も危ないってことじゃないですかね」


 少女はそう言い、どこか意地悪な笑みを浮かべる。


「そうだよ。危ないから俺みたいなのなんか相手にしちゃダメに決まってるでしょ」


 木ノ崎もそう言って笑う。


「ですね。でも私も見る目はあるんで。危険かどうかくらいは見ればわかります」


「だろうね。でも危険の種類も色々あるからさ。ちなみに俺は何に見える?」


「……スパイ、探偵、スカウト、占い師、大穴で刑事」


「はは、刑事か。そりゃいいね。けどこんなひょろひょろの刑事がいたら簡単にやられちゃうからね」


「そうですね。――そちらも、見る目すごいですよね。観察眼」


「かもね。まあ自信はあるから。というかただの事実だけど」


 木ノ崎はそう言って自慢気にニッと笑った。


「はは、いいですねその言い回し。自信じゃなくてただの事実」


「だよね。見る目があるのは別に自信じゃなくてただの事実だから」


「そうですか……私も、見ただけで何してるかわかったんですか?」


「そうだね。君もある程度わかるんじゃない? 見るっていうのはさ、本当に見ようとしないとできない行為だから。だから本気で見て、観察して、知ろうとしてる人はさ、その目とか視線とか見方でなんとなくわかるでしょ。同類なんだし」


「――まあ、私はまだそういう人見たことないですけど」


「そう? んじゃ俺が初めてか。そりゃ光栄だね。いいよね、見るのは。楽しいし、面白いし。知るのはもっと楽しいし。君もまだ若そうだけど今まで沢山人を見てきたクチ?」


「うん、まあ、それなりには。でも半分くらいは映画とかかな」


 と少女は砕けた口調で微笑んで言う。


「なるほど。まあ映画もちゃんとした役者の演技なら現実となんら変わんないしね」


「そうだね……そっちは、なんで人を見てるの?」


「そりゃ楽しいし、わかった時とか当たった時は面白いからね。今は主に仕事でやってるけどさ。得意を活かした感じよ」


「やっぱりそっか。じゃあ私の予想は当たってそうだね」


「そうだね。まあ大穴の刑事はハズレだけどさ。君は何か目的があって?」


「ううん。ただなんとなく、気づいたらだけど……でも知りたいと思ったから。それに他のことにも役立つし」


「はは、そうだね。それは俺もあったかな。君15歳? 中三とか?」


「うん。さすがだね」


「まあね。っと、人の個人情報聞く前にこっちが名乗んないとね。俺は――幾世橋っていうんだけどね、まあ一応こういうもので」


 木ノ崎はそう言い、鴫山からもらった鴫山の名刺を差し出した。


「――シギヤマウキョウ、って書いてあるけど」


「うん、これ他人の名刺だから」


「はは、一気に怪しくなったね」


「そうなんだよね。まあ実はさ、俺は見習いっていうか、まだ入社試験中でね。だから正式にはここの社員じゃないけどこの人から身分証明にはこれ使えって渡されてさ」


「へえ。芸能事務所EYES……多分普通の会社はそういうことしないよね」


「そうだけど色々事情があってね。まあ事務所としても苦肉の策だろうね。全部こっちが悪いからさ。俺に問題があって簡単に採用決められないってだけで」


「そっか……下の名前は?」


「なに?」


「幾世橋さん。幾世橋なに?」


「ああ。あんま言いたくないんだけどさ、世之介」


「よのすけ?」


「そう。なんか拍子抜けする名前だよね」


「ははは、かもね。でもいいと思うよ、昔っぽくて」


 尾瀬はそう言って笑った。


「私は尾瀬遥です」


「そりゃいい名前だね。そのまま芸名に使えそうな感じ。けど見ず知らずの人間に名前教えるのもやめといたほうがいいと思うよ」


「一応見ず知らずじゃないから」


 と言って尾瀬は名刺をひらひらと振ってみせた。


「けどほんとにその人から名刺借りたのかもわからないし、そもそもその事務所がちゃんとしたとこかも実在するかもまだわからない段階なわけだしさ。世の中騙そうとする大人ばっかりだからね」


「知ってる。でも私も見る目は自信あるから。自信じゃなくてただの事実だけど」


「――んじゃそのお眼鏡にかなったんなら光栄だね。とはいえ確認は確認だからね。客観的事実。まあ一応こういうパンフレットもあるけどさ」


 木ノ崎はそう言い、鞄からEYESがスカウトの際などに渡すパンフレットを取り出し尾瀬に手渡す。尾瀬はそれを受け取り、軽く目を通した。


「あ、この女優とかは知ってるよ。好きな演技だったな」


「ほんと? 特定の個人の演技を好きになるってのもなんかいいね。もし会うことがあったら直接伝えてあげなよ。ていってもこのパンフレットにしたって一方的な情報だから確かじゃないわけでさ。誰だってその気になれば入手できるわけだしね。まあとにかくさ、俺は今そのEYESって事務所の入社試験受けてんのよ。芸能スカウト、スカウトマンとしてね。スカウトマンとかわかるかな?」


「一応。芸能人にならないかって声かける人」


「まあそんな感じ。そんなわけだけど別に大卒とかじゃないし、中途入社ってやつでね。だからあっちとしても本当にスカウトとしての適性があるかわからないからさ、だったら試験ってことで一人スカウトしてきたらとか言ってきてね。まあ結構な無茶振りだけど、楽しそうだしやってみるかって人探しに沖縄まで来たってわけよ。まあそんなわけでさ、尾瀬さんどう? 芸能人やんない?」


「……つまり私は幾世橋さんが入社するための手土産ってことだ」


 その直接的な言い回しに、木ノ崎は思わずハッと笑った。


「まあ早い話がそうだね。とはいえ保証するよ。何者でもない俺の保証とかなんの意味もないけどさ、でも君は間違いなく採用される。というかあっちから是非うちに入ってくれって頭下げられるよ、君ならね」


「そっか。なんで?」


「んなの見ればわかるじゃない。俺の見る目がそう言ってるからね」


「自信じゃなくてただの事実、か……ちなみに芸能人って何するの?」


「ま、君なら何やったって成功するだろうけどさ、」


「女優だよね」


 と、尾瀬が口を挟んでふっと微笑んだ。


「私演技できるから」


「……だろうね。まあとにかく、君なら女優やってさ、日本一の女優になれる。そんなのはもう当然でしょ。多分だけど。世界も普通に目指せるんじゃない?」


「……私もそう思うかな」


「はは、いいね。それも自信じゃなくてただの事実?」


「うん。でも先のことだから、事実じゃなくて事実にしていくこと、かな」


「いいね。まあとにかくさ、中三ってなると色々進路のこともあるだろうけど考えてみてよ。事務所の人がちゃんと相談聞いてくれるだろうしさ。高校から東京なんてことになるのかもしれないし、というかその前に一度事務所の人と会う感じか。こっちかあっちで。とりあえず今日のことは保護者の人と相談してね。俺もこの鴫山って人には話しとくから」


「うん。でもそっか……当然だけど、保護者の許可とかいるんだもんね」


「そうだね。君はまだ中学生だからさ。難しそう?」


「……難しいってわけじゃないし、別に断られもしないだろうけど、それ以前かな。そもそも基本いないし」


「なるほどね……まあ奇遇っちゃなんだけどさ、俺も親ほとんどいなかったねー」


 木ノ崎はそう言って笑う。


「父親は最初からいないしさ、母親も基本いなくて。まあ水商売だから夜はいなくて昼はいても寝てて。もしくは知らない男と一緒でさ。そんな調子で俺も君くらいの歳の頃にはもう親とろくに会ってなかったね。半絶縁状態。どこいんだかも知らないし。こっちも基本家にはいないしさ。まーいい人が助けてくれたからなんとかなったけど、女の子はもっと大変だよね多分。今は大丈夫なの?」


「大丈夫っていうのが何かはわからないけど、ちゃんとした大人の女の人に助けてもらってる。仲間もいるし」


「そっか……大変だろうね。けどかえって人がいるとこにいた方が安全なのかもね」


「そうだね。密室で二人きりで逃げられないとかよりはマシだから。それでもどうしようもない大人は来るけど。いきなり一万でどう? とか中学生相手に。じゃなくても風俗のスカウトとかも来るし」


「そりゃやんなるね……やっぱさ、この話ナシにしない?」


「――なんで?」


「いや、ナシにはしないようにはするけどさ、なんというか、俺のスカウトじゃない形にするってことでね。鴫山さん、事務所にはちゃんと君のこと話すからさ、俺は関係なくちゃんとした事務所のスカウトの人が事務所を代表してスカウトする、って形になるようにさ。とにかく俺は関与しないってことでね」


「……なんか後ろめたいことでもあるの?」


 そう言って木ノ崎の目を覗き込む尾瀬の瞳は、渦巻く銀河の吸引力を秘めていた。その目に木ノ崎は、思わず飲み込まれそうになる。


「――ま、そういうことだね。さっき俺に色々問題あってあっちも採用渋ってるみたいな話したじゃん? 俺も昔色々やってたからさ。まあ良くないことをね。だからまあ、君の話聞いてちょっとさ、君を俺がスカウトするのはマズいかなって」


「……逃げるわけだ」


「まあね」


「それは許されないことだと思ってる? 幾世橋さんがしてたことっていうのは」


「……まあ、世間一般的な常識からすれば到底許されるようなことではないんだろうね」


「そうじゃなくて、自分。自分ではどう思う?」


「……まあ正直、考えるのも嫌かな。正当化してそこから逃げてるから。てことはどっかで罪悪感感じてるからなんだろうけどさ」


「なるほどね――わかった。じゃあやっぱりさ、幾世橋さんは私のことスカウトしなきゃダメだよ」

「あー、そうなっちゃう?」


「うん。他の人なら入らない。幾世橋さんじゃなきゃダメ。でもなんかグダグダ言いそうだよね。命令ならどう?」


「お願いじゃなくて命令なの?」


「うん。私人に頼まないからね。動かすだけだから。まあ命令もしないけど、今回は特別。私をスカウトしなさい」


 尾瀬はそう言い、木ノ崎の目をまっすぐに見た。


「一応聞くけど、なんで?」


「許さないから。許さない、許されないために。幾世橋さんがどんなことをしたかなんて知らないけど、私はさ、ちゃんとそれを許さないでいてあげる。どれだけ逃げても、逃がさないでいてあげる。私をスカウトすればさ、ちゃんと許されずにいられるよ? 逃げられずにいられる。絶対に忘れることなんてできない。私を見る度思い出す。思い出させてあげる。そうすれば、嫌でも向き合って償おうとかも思えるよね。どう? いいと思わない?」


「……一つ訂正。見ればわかるとかただの事実とかほざいてたけどさ、俺全然君のことわかってなかったわ」


 幾世橋はそう言い、苦笑を浮かべる。


「そっか。なら良かったね。知らなかったことを知れて」


「ほんとにね……いやー参ったなー。なんなの君?」


「さあ? なんだろうね。ただの役者だと思うよ。好きだから、演じるの」


「そっか……んじゃま、命令なら従う他ないか。何より君を女優にするためだもんね。んじゃ正式に――うちの事務所に入ってもらえませんか?」


「うん。安心してよ、私も保証するから。幾世橋さんの見る目が確かだっていうのは、私がすぐに証明してあげる。実際間違いないよ、その目は。私のことが少しでもわかったんだから。私も見る目はあるからね。まあ同じくらいか、年齢分そっちがちょっと上かな」


「そりゃまた光栄だね」


「だよね。それと一つだけ。約束、じゃなくて契約。そのスカウト受けてもいいけどさ、代わりにね。幾世橋さんがEYESに入るために手土産として私を連れてくわけだからさ、私が出て行く時はその逆ね」


「……というと?」


「私が出て行く時は、幾世橋さんもついてくる。拒否権はなし。等価交換。そういう契約。じゃないと公平じゃないからね。今回はそっちのものだけど、次はそっちが私のもの。幾世橋さんの目は使えそうだしね」


「ははは、それはまあ、仕方ないかもね……いいよ。んじゃそういう契約でよろしく」


「うん、よろしく」


 尾瀬はそう言い、手を差し出した。木ノ崎はその手を見て、一瞬だけ躊躇し――そうしてすぐに口角を上げ握手をした。


「契約成立だね」


「うん。契約成立。これで共犯だね」


「はは、共犯か」


「そう。私を世界に解き放った共犯者。近くで見てるといいよ、自分がしちゃったことをさ」


 尾瀬はそう言い、ニッと微笑んだ。


 それはまさしく、美しさに満ちた悪魔の微笑であった。




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