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第5話 Who am I?

 

(これもスキル、なのかな?)


「今、私のスキルのことを考えていたのではなくって?」

「!」(思考を読まれた!? いや、確かに気になっていたが……)

「私のスキルは……そうね、「ミライシ」」


「ミライシ……未来視!?」


「ちょっとお母さん、冗談はやめて」

「そうですよアベル、だまされないでください」


「え?」


「うふふっ、ごめんなさいね。 ……冗談よ」

「……母のスキルは、≪映写≫。 対象の魔術的適正から、簡単な思考盗聴まで、広い範囲で物事の詳細を正確に見抜くことができるというものです」


(≪火炎剣≫の父と、≪魔法剣≫の娘。 ≪映写≫の母と、≪複写≫の息子か……)


「そう。 スキルは、ある程度の遺伝性をもつのよ」

「えっあ、はい?」(また思考を読まれた!?)

「ああ、そのことですか。 というか母さん、いい加減≪映写≫止めてください。 話しづらいですよ」

「そうね。 でも、あなたの心配しているような人ではなさそうよ」

「ふむ……そうか、では教えてくれリリー。 彼の中に何が見えた?」



 それから、すてきな女性もといアリアのお母様は、≪映写≫スキルで見たという俺の中身について話した。


 中身といっても腹の中身とかではないが

(※ただしおなかがすいていたことは見抜かれた)


 アリアの父ケイルは、俺の剣が魔鉱石を素材に使っていのでは、というのを、アリアの『魔法剣』に耐えただけでなく、余ったエネルギーを剣が吸収して、調整して、刃にその魔力が残っていて……ということから、そんなことが可能な剣など魔鉱を使っていなければ作れるはずがない、と考えたらしい。



(だから剣が光っていたのか。 というかエネルギーとかわかるんだ……)



 そんなすごい素材である魔鉱石は、基本的にこの国では手に入らず、王家から許可を得たごく一部の職人のみが扱っていて、簡単に手に入る代物ではない。 よって、何かよからぬ手段で手に入れたものではないのか? 此奴はまともな人間なのか? と心配していたらしい。



「はぁ……なるほど?」



 というかさっきからスキルだ、魔法だ、でどっちがどっちで何がどうなのかごっちゃになってきた。 魔鉱石だかなんだかも色々難しいし……お腹がすいた。



 そんな時……ぐぅ~っ、とおなかが鳴ってしまった。



「あっ……」

「うふふっ、やっぱりおなかがすいているのね。 そろそろご飯にしましょう! あなたも食べなさい」

「あ……ありがとうございます」



 色々ごちゃごちゃと考えていたらおなかが鳴ってしまった。

 割と恥ずかしいが、やっぱり腹が減っているのは事実。

 ありがたくいただこう!



(というか、この世界に来てから何も食べてなかったな……)



 しばらくすると、香ばしい香りと、ふんわりと甘い香りがしきて、食欲を刺激された。 目が見えない分、聴覚と、嗅覚と……残った感覚が時がたつほどに研ぎ澄まされていた。 そんな中での美味しい香り。 そしてさらに腹ペコ。

 なんか俺の素性がどうとか騎士団がどうとかいろいろ言ってたけど、正直何にも頭に入ってこなかった。



「さぁ、どうぞっ!」



 またクロノが視界を複写してくれた。

 見えたのは、湯気の立つ色とりどりの具材が見える白いスープのようなものと、少しだけ焦げ目のついた、前の世界では「パン」と呼ばれていたものと同じであろう小麦色の丸い塊。 そして、何かの果実のように見える、小さく切り分けられた赤いもの。

 どれも大変に魅力的で、美味しそうで……と見とれていたら、



「真ん中のスープは、「シチュー」という、この国の伝統料理だ」

「軽く焼いたパンに付けて食べるんですよ!」

「赤いのは「フレル」。 これもこの村でとれる果実よ、甘くておいしいわよっ!」

「えっと……い、いただきますっ!」



 食べる前から、おいしいに決まっていると確信できたさ。

 しかし、予想していた以上においしかった。

 本当に……、おいしかった。



「おいしい……」

「うふふっ、それはよか―― あら?」

「あれっアベル、なんで泣いてるんです!?」

「……え?」



 何者にだってなってきた俺が。

 何者でもなくなってしまった俺が。


 目の見えなくなっていた俺を。

 記憶のない俺を。


 死にかけていた俺に。

 腹ペコだった俺に。


 暖かく迎えてもらえて……温かな料理を食べて。

 自然と、涙がこぼれていた。



 死。

 何度も経験したことのはずなのに、怖かった。


 俺は一体何者だ?

 ずっとそうだったはずなのに、心細かった。


 おなかがすいた。

 そんなこと日常の一部だったはずなのに、辛かった。



 ――俺はこの瞬間に、

「生きている」と、強く実感した。



「あらあら、うふふ。 そんなに気に入ってもらえたのかしら?」

「はっはっは! どうだ、アベル君。 リリーの飯はうまかろう?」

「ええ、おいしいです! 本当に、おいしくてっ……!」

「ワン!」

「あはははっ!」



 ――この世界での初めての食事は、素晴らしいの一言に尽きるものだった。 ……そして俺は、食べ終えてから途中だった話の続きをした。



「それで、今後はどうするの? アベルくん」

「そうですね……いつまでも皆さんのお世話になるわけにはいきませんしね」

「私は、この村に住んでもいいんじゃないかと思うんだけど?」

「しかし、目が見えんのでは何をするにも苦しかろう」

「そうですね。 僕らがいるときは助けられても、僕には教職がありますし、姉さんもずっとここにいるわけじゃないですからね……」

「うーん、どうしたらいいのかしらね」



 確かに、目が見えないのはつらい。

 ずっとクロノ達に介護してもらうわけにはいかないし、かといって一人では何もできない……



(……ん? じゃあ俺はいつから盲目で、そもそもなぜ俺は剣なんて持ってたんだ?)



「そうだ! あなたほどの魔力があれば、私の≪映写≫を再現できるんじゃないかしら?」

「……はい?」

「魔力よ、魔力。 魔法でスキルを再現できることは、クロノから聞かされているんではなくて?」

「そうですね、そんな話をしてもらいました」

「そこで、私の≪映写≫よ! クロノの≪複写≫だと、目が見えないとあまり意味がないけど。 私のほうは、空気中に漂う魔力や、反響する音などでも、慣れれば空間を認識できるくらい正確に感じ取れるはずよ? ≪複写≫ほどではないけど……視力の代わりに使えるんじゃないかしら?」


(おいおいマジか! スキルちょーすげーじゃん! 魔法ちょー便利じゃん!)


「すごい……! ぜひ教えてください!」



 自分の周囲を認識できるようになれば、それだけでもかなり大きい。



「それじゃあ、明日の朝にしましょうか。 今日はもう遅いわ」

「あぁ、もうそんな時間ですか」(目が見えないと、時間の感覚も狂うなぁ……)



 今になって、日の光の偉大さを実感している。



「あれ? じゃあ俺は、今日は……」

「うちに泊まって頂戴。 外に放り出しなんかしないわよ」

「なにからなにまですいません……」

「いえいえ、うふふっ」


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