ゲート
目の前の男はシン・キサラギと名乗った。
どうやらシオン達の居た村に転移したかったらしいが目標座標がズレてここに転移したらしい。
「危ない所をどうもありがとうございました。」
二人がお礼を言うとシンは笑いながら答えた。
「気にしなくていーよ。それより君達どうしてこんな所にいたんだい?」
シオンは軽く自己紹介をし、父親を捜す旅に出ることになった経緯を簡潔に話した。
何となくシオンはシンに自然とすべてを話していた。
なんの不信感もなく、さもそれが当然であるように。
「そうか、君が・・・」
そう呟いたシンの言葉にシオンとシルファには聞こえなかった。
「ゲートに行くにはもう一度林を通らないと行けないね。」
シンの言葉にシオンは思わず辺りを見回した。
どうやら狼から逃れる為に林を戻って来たらしい。
「林はまだ危険かもしれない。
ゲートまでは送っていこう。」
シンの提案に二人は素直に応じることにした。
3人は揃って林に戻り歩き始めた。
「ちなみに何処に行くつもりなんだい?」
暫く無言で歩いているとシンが二人に話しかけてきた。
「とりあえず世界図書館に。」
シオンが答えるとシンは少し驚いた顔で意味深な表情を浮かべた。
だがその表情の機微には二人は気づくことはなかった。
そのまま少し話しながら歩くと林の出口に差し掛かった。
「ここを抜ければゲートだよ。
付き添いはこの辺で良いかな?」
シンは林を出る前に立ち止まり言った。
「はい。本当にありがとうございました。」
「はい。本当にありがとうございました。」
シオンとシルファは声を揃えた。
「では、私は失礼するよ。いずれまた。」
(いずれまた?)
シオンはその言葉を不思議に感じながらも、去っていくシンの後ろ姿に軽くお辞儀をした。
「んじゃ、しー君いこっか?」
隣に居るシルファはさっきまで泣いていたとは思えない程明るく、元気になっていた。
(シルファの立ち直りの早さが俺にも欲しい。)
林を抜けると、ひらけた草原にでた。
草原の真ん中には泉があり、泉の中心は浮島になっている。
浮島の外縁には5本の柱が等間隔で並んでおり、その柱を繋ぐように魔法陣が描かれていた。
ゲートには既に何人か並んでいた。
シオンは浮島へと繋がる橋の前で世界図書館行きの料金を払う。
子供割引があるがシオン達にとっては結構高かった。
そしてシルファが居なければゲートすら使えないのがシオンには心苦しかった。
そして狼すら追い払えない自分にも・・・。
「しー君?そろそろ順番だよ?」
そんなもどかしい気持ちを知ってか知らずか、シルファはシオンの手を引っ張って優しく微笑んだのだった。