ギルドにて その2
扉を開けたリトの後ろからゆっくりとクロムが入って周りを見渡した。
瞬間、そのフロアにいるビャクヤを除いた全ての人が一瞬動きを止めて入口を見た。
時間にして1秒にも満たなかっただろうか。
すぐに時が動き出すかのように緊張した空気が和らいでいった。
クロムはじろりと周りを見渡すとビャクヤの方に歩いてきた。
カウンターを挟んだ後ろで受付嬢のミトが不安そうな顔をしている。
「何か用か?」
ビャクヤは向かってくるクロムに言葉を投げた。
その言葉を聞いたリトが声を荒げた。
「貴様!
クロム様になんという口の利き方を!」
リトが声を荒げると同時にクロムがリトの前に手をかざすように制した。
クロムの立場を知っている者の中でため口で話しかけるのはビャクヤぐらいであろう。
そしてそれをクロムは何も咎めることはしなかった。
「何か用があると思ったのか?」
クロムは問い返した。
その問い返しにビャクヤは顔色変えずに答えた。
「別に。」
「そうか。」
ビャクヤ達が稼ぎのためにギルドでクエストを受注しているのは周知の事実であった。
クロムももちろんそのことを承知しているが、それに反して慎重に観察をしていた。
些細な手掛かりをも見逃さないように。
だが、ビャクヤは些細な表情の変化もない。
「特に問題ないなら、クエストを消化したいので行くぞ。」
ビャクヤはミトの書いたクエスト依頼書を受け取ると出ていこうとした。
「何かを、探しているようだな。」
クロムの言葉にビャクヤが足を止めた。
「何の話だ?」
ビャクヤは表情を崩さずに聞き返した。
「俺が何も知らないとでも?」
更にクロムは追い打ちをかける。
その言葉がはったりなのかどうかは誰にもわからない。
「何の話だ?」
一切の表情を変えずにビャクヤは再び問いかけなおした。
だが、クロムは全く別の場所を見ていた。
ビャクヤがボロを出さないことなどわかりきっているかのように。
その視線の先には受付嬢のミトがいた。
だがミトも何の話をしているのか全く分からないという表情をしている。
その表情を確認するとクロムは再び口を開いた。
「わからないならいい。
だが、忘れるなよ。
お前たちは常に監視対象だ!!」
クロムの言葉を聞くとビャクヤは右手をひらひらと上げながら答えた。
「肝に銘じておくよ。」
そう言い残すとそのままギルドの入り口を出ていった。
「食えない奴め。」
クロムはそう呟くとリトと共にギルドを後にした。
「あの2人はいつか和解できるのかしら?」
1人取り残されたミトはボソッと呟くと再び受付業務へと戻って行ったのであった。




