ギルドにて
「案の定、街の人達は何も知らないみたいだね。」
翌日の午前中、街中を聞き込みをしながら歩いている時、シルファが呟いた。
街の人達に昨日の件を尋ねると概ね笑顔で答えてくれる。
ただしこの街に盗みをするような子供はいないと答える人が大半であった。
「子供に対する印象は悪くないみたいだね。
でも孤児院もあるみたいだし、生活に困っている子たちがいる可能性はある。
本当に盗みをする子供たちがいないのか・・・。
それとも見えないところでしかやらないのか・・・。
はたまた・・・。」
「たはまた??」
シルファが問いかけにシオンが答える。
「街の人には手を出さずに旅行者だけを目的にやってる・・・とか。」
「あー。
なるほど、それだと街の人の聞き込みの結果と大体合うよね。」
シオンは浮かない顔で頷いた。
「でもそこまで悪意を持っているとは思いたくないよな。
単純にシルファが無防備すぎて、つい手を出してしまった方がまだ腑に落ちる。」
実際には子供たちの暮らしを想像したところで何の意味もないのは分かっていた。
どちらであろうともシルファの持っていた手紙を奪った事実は変わらないのだ。
まずは取り返してから、その背景も経緯も確認すればよい。
そう考えたシオンとシルファはお昼ご飯を食べたのち、ギルドに向かい情報を収集することとした。
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同じく午前中、ビャクヤはギルドを尋ねていた。
手紙について誰か情報を求めに来ているかをそれとなく聞きに来たのだ。
クエストボードの前で新しい依頼がないか確認していると、受付嬢のミトが話しかけてきた。
「ビャクヤ君。
何か依頼をお探しですか?」
その声に振り返るようにビャクヤは答えた。
「いつも通りですよ。
僕らにも出来る新規依頼は入っていますか?」
「そうねぇ。
昨日今日で新しい依頼は入ってないわ。
でもいつもの依頼なら一昨日から貼ってあるわ。」
ミトはそう言うとクエストボートの右端を指さした。
そこには【とある家の庭の草むしり】と【下水通路の害獣の駆除】の2枚の張り紙が貼ってあった。
ミトは続けて言った。
「ごめんね。
こんなクエストしか君たちに用意してあげれなくて。」
その言葉にビャクヤは首を振りながら答える。
「とんでもないです。
僕たちのような子供たちのために常にこうやって稼げるクエストを準備してくれているじゃないですか。
感謝していますよ。
ではこちらの2つを受けさせていただきます。」
ビャクヤはその2枚の依頼用紙を剥がしながら告げた。
「じゃぁ、こちらで手続するから。」
ミトに促される用にカウンターに向かい、ミトは受付用紙に記載を始めた。
「最近、変わったことはないですか?」
ビャクヤはあくまで世間話のていで話を切り出した。
実際有益な情報は得られる可能性はない。
探し物を求める場合も本来であればクエストボードに依頼として貼られるからだ。
そして先ほど確認した限りは新しい依頼はなかった。
「そうねぇ。
特に変わった話は聞かないわね。
あ、でも今は佐渡島への渡航は規制がかかったみたいよ。」
「へぇ、まぁ流石に結界の外には僕たちも出ることはないから関係はないですね。」
「ふふ、そうね。」
などと世間話をしている中、いきなり入り口のドアが勢いよく開いた。
入ってきたのはクロムとリトであった。




