父との会話
「お呼びでしょうか、父上。」
クロムは部屋の前でノックをすると扉を開けて中に入った。
「クロムか。
例の件の進捗は?」
「いえ、それが中々足を出さず・・・。
申し訳ございません。」
クロムは父であるゲンノスケの静かなる圧力に屈するように頭を下げながら答えた。
その姿を見ながらゲンノスケは答えた。
「いくらでもやりようはあるだろう。
余り失望させてくれるなよ。」
物静かで低い声はクロムの耳にしっかりと届く。
その声に逆らえないことをクロムは理解していた。
「はい。
必ず・・・必ずご期待にそえてみせます。」
「・・・さがれ。」
息子の言葉を聞いたゲンノスケは静かに告げた。
その言葉を聞いたのち、クロムはその場で深く頭を下げるとそのまま部屋を出た。
(このままではいずれ私も父に切られる。)
クロムの心に先ほどの父ゲンノスケの言葉が響く。
(いくらでもやりようがある。)
それは手段を選ばないということの裏返しであり、それはクロムの掲げている信念に反するものであった。
だが残された時間は決して多くはない。
クロムは執務室に戻ると次の手を考え始めた。
「情報が足りないな。。。」
そう呟くとすぐに部屋を出る。
すると部屋を出た通路の先からリトがこちらに向かって歩いてきた。
クロムはリトに向かって告げた。
「少し出てくる。
すぐに戻るからついてくるなよ。」
すれ違いざまのクロムの言葉にリトは小さく頷いた。
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町はずれの宿の一室。
窓は閉ざされ部屋の中は薄暗くろうそくの明かりだけが部屋の中を照らしていた。
質素なベッドと簡素なテーブルに2脚の椅子が配置されている。
その椅子の1つにクロムは座っていた。
暫くすると目の前の扉を小さくノックをする音が響く。
「入れ。」
クロムの声に呼応するように目の前が扉が開き、そして静かに音もなく閉まった。
目の前に立つ人物は薄暗い中ではっきりとは見えない。
その身には黒い外套を、また顔を隠すようにフードを付けていた。
「座れ。」
クロムの言葉にその人物は頷くと、クロムの正面の椅子に腰かけた。
「久しぶりだな。」
薄暗い部屋の中で正面の人物が座るのを見るとクロムは話し始めた。
その間、時間にして10分程度だったであろう。
誰にも聞かれることのない会談はこうして行われたのだった。




