クロムの憂鬱
バァンッ!!
大きな音と共に机の上に乗っているものが揺れた。
執務室の中央に坐する机の上で両腕を振り下ろし叩きつけたクロムがそこにはいた。
その顔からは口惜しさがにじみ出ている。
「何故いつも足を出さないんだ。
何か1つでも出てくればそこから芋づる式に行けるはずなんだ。
なのに・・・くそっ!!」
けたたましい音は部屋の外にまで響いていたのだろう。
その音を聞いた1人の男が執務室に駆け込んできた。
「クロム様、いかがなさいましたか?」
クロムは扉の方に振り返ると入ってきた男に告げた。
「リトか、何でもない。
仕事に戻れ!」
「ビャクヤの件ですか。」
リトと呼ばれた男は部屋を出ずにクロムに話しかけた。
「そうだ。
父上からは貧困街を何とかしろと言われていてな。
その邪魔をするあいつらを何とか出来れば話が早いんだがな・・・。」
「孤児どもなら力ずくで何とかすればよいのでは?
黒鷹隊の規模であれば制圧するのは容易いはずですが。」
リトの進言にクロムは表情を変えずに言葉を続けた。
「ただの武力行使ならそれでいいだろう。
だが父上の顔に泥を塗るわけにもいかぬ。
大義名分が必要なのだ。」
「なるほど。
その上で中々尻尾を出さない、と。」
クロムは頷きながら話を続ける。
「あいつら思った以上に統率が取れているようでな。
いや、と言うよりも寸前のところで情報が漏れないように統率されているのか。」
「ビャクヤ・・・ですか。」
クロムは頷いた。
「想像以上に頭が切れる。
常にこちらの先手を取って情報統制しているようにも見える。
あいつさえいなければ、楽なんだがな。。。」
打開策が浮かばないまま2人で話していると部屋がノックしされた。
「入れ!」
クロムが言うと1人の衛兵が部屋に入ってきた。
「クロム様。
当主様がお呼びでございます。」
「わかった、すぐ行く。
リト、黒鷹隊の方は任せたぞ。」
リトが頷くのを確認すると、クロムは急いで部屋を出ていった。
・
・
・
(ふむ、大分お困りのようだな。
であればあいつを使うか。。。)
見送ったリトは少し考えながら部屋を出ていったのであった。




