おばばの家
「これは・・・むぅ・・・。」
街外れの古びた一軒家の中で、手にかざした手紙を見ながら白髪の老婆がうなっていた。
「おばば、どうだ?」
ビャクヤは椅子に座ったまま腰を伸ばすように顔を上げ手紙を観察する老婆に尋ねた。
おばばと呼ばれた老婆は暫く手紙を眺めるとゆっくりと腰を曲げ、テーブルの上に手紙を置いた。
「厄介な魔法が複数かかっているね。
私でわかるのは追跡とプロテクト、あと暗号化もかかっておるね。」
「つまり仮に開けれたとしても中身は分からないってわけか・・・。」
手紙を静かに裏返した老婆は言葉を続けた。
「手紙は既に開けられているから封蝋は一部しか確認できないから断定はできないが・・・。
天秤のゾディアックじゃな。」
場が一瞬硬直する。
「おばばの方で処分は?」
ビャクヤの言葉に老婆は首を振った。
「そうか・・・。」
「兄貴、、、ごめんなさい。」
少年は今にも泣きだしそうな声でビャクヤに言った。
「盗ってしまったものは仕方がないさ。」
ビャクヤは少年の頭を撫でながら優しく微笑んだ。
「どうするつもりだい?」
老婆は静かに尋ねた。
「処分できない。
必ず足がつく。
・
・
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なら返すしかないよな。
これを盗った相手のこと覚えてるか?」
ビャクヤは少年に問いかけた。
「えっと・・・。
後ろから駆け抜けざまに盗って、そこから振り返ったりしてないから後ろ姿しか分からないけど・・。
確か男女の2人組だったような・・・。」
少年は上を向いて必死に思い出すように話した。
「他に特徴は?」
ビャクヤは再び尋ねた。
それだけの情報で特定できるほど甘い話ではない。
少年もわかっているが、盗った相手のことを覚えているなど普段からないのだ。
それでも必死に思い出そうとしていた。
「背は俺と同じくらいだった気が・・・。
ん~~~~、あとは・・・。」
必死に言葉を発していたがついには黙ってしまった。
「ダメじゃな。」
老婆は深いため息をつきながら言った。
「まぁやれることをやるしかない。
どちらにせよ逃げられないのは確定だ。
後は捕まる前に返せるか・・・捕まった後に返すことになるか。。。」
ビャクヤは少し苦笑いを浮かべた。
「さてこの手紙の持ち主は表の住人か、はたまた裏の住人か・・。」
「それって何か関係あるんですか、兄貴。」
少年はビャクヤに尋ねた。
「そうだな。
表の住人ならまずギルドに顔を出して手掛かりを探すはずだ。
裏の住人なら闇市辺りから手掛かりを探すだろう。
まぁゾディアックの封蝋の手紙を持っているくらいだ、
おそらくは闇の住人ではないだろうな。」
「ってことは・・・」
少年の言葉を遮るようにビャクヤは言葉を続けた。
「仮に表だったとしてもこの手紙が重要であるなら今日のうちにギルドに行ってる可能性がある。
今日時点で情報がない以上は闇市にも足を運ぶだろう。
なので明日は闇市から手掛かりを探してみよう。
おばばも明日以降で情報が入ってきたら連絡くれ!」
「はいよ。」
こうしてビャクヤと少年のの2人はおばばの家を後にしたのだった。




