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上手な魔法の使い方  作者: 睦月
紫の誓い
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サンドラ・ドレアム

「こんな恰好でごめんなさいね。

私がサンドラ・ドレアムです。」


サンドラはベッドの上から少し申し訳なさそうな顔で挨拶した。


「気にしないで下さい。

突然訪ねたのは私達ですから。」


シルファはこういう時かなりそつなく答える。

こういうところが大人びているんだよなぁとシオンは感心しながら見ているとシルファは本題を切り出した。


「早速なんですが、夢幻教について聞きたいのですが・・・。」


サンドラは一瞬顔をしかめ、悲しそうな表情を見せたがすぐに話し始めた。


「夢幻教は・・・今私が対立している教団なの。

貴方達は夢幻教の教理を知ってるかしら?」


「簡単に言うと破壊と再生・・・ですよね?」


シオンがようやく口を開いた。

敵を知り、己を知れば百戦危うからず。

夢幻教の話を聞いてから密かに勉強していたのだ。


「世界は破壊と再生を繰り返す。

それは人においての生と死もまた然り。

その輪の中に身をゆだねよ。

・・・

それが夢幻教の教理よ。」


「でも、それ自体は当たり前の事ですよね?

普通古い建物の上に新しい建物は建てない。

必ず一度古い建物を壊してから新しい建物を建てる。

人の生死に関しても輪廻という考えに当てはまるし、特に間違ってはいないはずです。」


シオンは思っている事をぶつけた。


「そうね。

ただ・・・少しずつ歯車は狂っていった。」


歯車・・・シオンとシルファはその言葉に違和感を感じた。


サンドラはゆっくりと語り出した。


「教祖の名はトルネリア。

トルネリア・ドレアム。」


名前を聞いたシオンとシルファは顔を見合わせた。


「ドレアム???

えっ?それって・・・。」


「そう、彼は私の夫なの。

夢幻教は彼が8年前ゾディアックに選ばれた時に組織したの。」


8年前・・・その言葉に2人は驚いていた。

夢幻教の活動がここ数年だと聞いていた。

そしてその夢幻教の教祖がゾディアックだったのだ。


「その時は夢幻教はまだ今のように狂ってはいなかったわ。」


サンドラは少し遠くを見るような眼差しで昔を懐かしんでいる様だった。


「あの頃は、夢幻教は破壊と再生でも、再生の部分に主を置いていたの。

そもそも破壊とは自然がその摂理の中で行うものだと。

だからこそ破壊後の再生の為に動いた。

四方結界内での砂漠の緑化。

温暖化の対策。

絶滅危惧種の保護。

主人がゾディアックに選ばれてからはそれこそ必死に動いていたわ。

成果もそれなりに出ていた・・・。」


サンドラは言葉を一旦止めたが、再び話し出した。


「でも一年も経つとすぐに成果は出なくなった。

そしてあの人は少しずつ変わっていった。

そもそも四方結界の外では世界が崩壊、構築を繰り返している。

一方、四方結界の中では生産、構築は日々行われても、崩壊はされない。

衰退し荒廃した世界が残るだけ・・・。

そしてあの人は気づいてしまった。

衰退し荒廃しないように必死に取り繕っても、ただただ終わりを先延ばししているだけ。」


「つまり四方結界の中では破壊と再生の輪廻の循環は行われない。

だから四方結界を破壊し、再生の輪に戻そうとした。」


シオンがその結論に至ったのは当然だが、そもそも四方結界の外は人が住めるような環境ではない。

破壊が導く先は人類の絶滅に繋がることも重々理解できた。


「そう、けれどもゾディアックの間は表立って行動はしなかったわ。」


「あっ、そうか。

本来十二子宮評議会の目的の一つが四方結界の保護だからですね?」


シルファの言葉にサンドラが頷く。


「だから彼はゾディアックの間は別のアプローチをしていた。」


「別のアプローチ?」


シオンとシルファは顔をしかめた。


「そう。

つまり四方結界を破壊できないなら、世界を荒廃させていく人間を裁こうと考え始めたの。

そして彼は紫電にたどり着いた。」


「紫電?」


シオンの疑問にすぐサンドラは答えた。


「別名裁きの雷。

人間を裁く為に存在する紫の雷よ。

人間の悪意に対し激しく反応するの。

そして悪意が強ければ相手は死に至る。

そして紫電はその継承者を選ぶ。」


「それを教祖は手に入れたんですか?」


シオンの問い掛けにサンドラは首を横に振った。

それと同時に左手を軽く広げ何かを呟いた。


「えっ?」


2人が驚く中、サンドラの手の中に現れたのは、紫色した雷の玉だった。


「紫電は私を選んだの。」


サンドラは静かに告げたのだった。

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