沼の底の小さな家
「ローガ。」
「ローザ。」
紅眼の子はローガ、蒼眼の子はローザと名乗った。
「えっと、ローガとローザだね?」
シオンは2人に歩み寄った。
「で、サンドラさんは何処にいるのかな?」
シオンの問い掛けに2人は少し俯きながら答えた。
「ママは病気なの。」
「ママは病気なの。」
シルファもゆっくりと近づき2人の頭を撫でた。
「だからママの所に行かせたく無かったんだね?」
「白い人がママをいじめに来るの。」
「白い人がママをいじめに来るの。」
2人の言葉にシオンとシルファは顔を見合わせた。
「しー君、白い人って。」
「あぁ夢幻教の可能性が高い。」
夢幻教という言葉を聞いた2人が一瞬びくっとなった。
「私達は夢幻教じゃ無いからね?」
シルファは微笑みながら諭すように2人を撫で続けた。
「知ってる、白くないから。」
「知ってる、黒っぽいから。」
シオンは思わず2人を二度見した。
(揃わない事もあるんだ?)
シオンは笑いを必死に堪えた。
「じゃあママの所に案内してくれるかな?」
シルファが優しく言うと2人は今度は同時に答え走り出した。
「うん。こっちだよ。」
「うん。こっちだよ。」
シオンとシルファはローガとローザに導かれるまま走り始めた。
「えっ、ここに入るの?」
シルファはその入り口に呆然とした。
草木が生い茂り、じめっとして道すらないどころか雨も降っていないのに付近はぬかるんでいる。
その先は湿地ではなく沼であった。
既にローガは先に入っていったが、そこはおおよそ人が入れる場所には見えなかった。
続いてローザも入っていく。
結局シオンとシルファが残された。
「しー君先に行ってよ。」
シルファはまだ怯えている。
「ん、じゃあ先に行くよ。」
シオンはゆっくりと一歩一歩進み、やがて沼の中に消えて行った。
「ほんとにここで大丈夫なの?」
シルファは一歩進むとパシャッと水に足首が浸る。
「息出来るよね?」
シルファは意を決してゆっくりと池の中に足を踏み入れ沈んで行った。
「んっ・・・苦しくない。」
シルファが目を開けると、目の前には小さな家があった。
上空を見るとゆらゆらと光が揺れ、水の中だとわかる。
「結界・・・・・・?
他にも空間を歪めてるような・・・。」
シルファが唖然と見上げてると、家の中からローザとローガが顔を出した。
「お姉ちゃん、こっちだよ。」
「お姉ちゃん、こっちだよ。」
シルファはいわれるがまま、扉の奥に入っていった。
「ママーー、お客様ーー。」
「ママーー、お客様ーー。」
シルファが入ると2人は更に奥の部屋に駆けていった。
シオンはリビングに立ったままだったが、シルファが入ってくるのを見ると目配せした後、奥の部屋に歩いて行った。
シルファも続いて奥の部屋に入る。
そこには木で出来た小さなシングルベッドがあり、一人の女性が寝ていた。
女性は青白い顔立ちに髪はウェーブがかったロングで優しい顔立ちをしている。
上半身はパジャマを着てベッドから起き上がり、両肩には水色のショールを羽織っていた。
「あら?
ローガとローザのお友達かしら?」
その女性はシオン達を見ると優しく微笑んだ。
「いえ、あのぉ、キサラギさんの紹介で来ました。
シオンと言います。」
「同じくシルファと言います。」
自己紹介をすると女性は察したような表情を浮かべ、ローガとローザにこう言った。
「二人ともお母さん達大事な話があるから、お外で遊んで来てね。」
ローガとローザはその言葉を聞くと少し心配そうな顔をしたが、母親の言葉に素直に従い、外に出て行った。
2人が出ていったのを確認すると、シオンとシルファの方を向き話し始めるのだった。




