双子の守り人
「しっかし相変わらず良いタイミングで、キサラギさんメールくれるよね。」
シオンとシルファはゲートに上に乗っていた。
「うん、確かに。」
(確かにタイミングが良すぎる。
まるで誰かの都合で動かされているような・・・。)
シオンはこの作為的ともとれるタイミングに一抹の不安を感じていた。
(それにあのアスクレピオスと名乗った男の声・・・。)
それが運命の流れなのか誰かによって作られた流れなのかは、まだ誰にもわからない。
しかし何かが確実に動き出してる様にシオンは感じていた。
「しー君、着いたよ。」
シルファの声にシオンはハッと我に返った。
【シオン君、シルファ君、リバイアサンサファイアは回収できましたか?
ところで朱雀島に現れた夢幻教を覚えてますか?
今回は夢幻教の本部に潜入した部下からの情報ですが、どうやら夢幻教の御神体の額にエメラルドがはめられてるとのことです。
ただその前に今回はある人を尋ねて下さい。
その人の名はサンドラ・ドレアム。
現うお座のゾディアックです。
夢幻教と長年対立してきた人です。
とはいえ夢幻教の活動が活発になったのは、私の記憶ではここ4、5年だったと思いますが・・・。
サンドラは嘆きの森に居ます。
では御武運を!】
二人は森の入口立っていた。
「これが嘆きの森・・・。」
森の入口には看板が所せましと立ち並んで居る。
【立入禁止】
【入るな危険】
【自殺禁止】
【猛獣注意】
【感電死注意】
【落雷注意】
「なんだこれは・・・。」
「しー君本当にここなんだよね?」
シルファは不安げに尋ねた。
「とりあえず地図では間違えてないはず。」
シオンはもう一度地図を広げる。
「うん、ここで間違いはない。」
「じゃあ、この明らかに危険です的な場所におめおめと入って行けって事?
大体感電死注意って何?」
意味不明な看板に混乱するシルファ。
「でもまぁ行くしかないよ。
嫌ならシルファ此処で待ってる?」
「しー君1人で行かせる訳ないでしょ?
ほら、とっとと行ってサンドラさんに会おうよ。」
シルファは強がりながらも先に森に足を踏み入れた。
嘆きの森はアルジュリアよりも南に位置し、それなりには寒いが雪で覆われてはいない。
人が入った形跡は殆ど無く、歩き始めてすぐに獣道のような道なき道になっていた。
「こりゃ迷うかもな。
シルファ、しっかりついてこいよ。」
いつの間にかシオンが先導し、時折聞こえる野獣の雄叫びを聞きながら二人は更に奥に入っていく。
「まさかコテツがこんな所で役に立つとは。」
シオンは顔に当たりそうな木の枝を払いながら進んでいた。
地面はゆるゆるにぬかるんで進む道を更に困難にしている。
「あぅっ、泥が撥ねる。」
「しょうがないだろ、我慢しろよ。」
元々森に入るのが乗り気では無かったシルファは、ぶつくさ文句を言っている。
「ライオさんに貰ったコテツだって木の枝切る為に鍛えられた訳じゃないだろうに・・・。」
「まぁね、前回の戦いだってたいして役にはたたなかったしなぁ。」
話しながらゆっくりと、しかし確実に奥へ奥へと進んでいくが、先には延々と森が広がっている。
「そういえば・・・。」
ふとシオンが真面目な顔になった。
「どーしたの?
しー君?」
「前回・・・シルファがカイトに凍らされてた間・・・・・・。」
シオンはシルファにアスクレピオスの事を簡潔に話した。
「じゃあ、しー君はそのアスクレピオスが探してたお父さんだって言いたいの?」
シルファはにわかには信じられない顔をした。
「確証はない。
仮面を被ってたし・・・。
けど声は・・・・・・。」
「私は聞いてないから解らないけど。
キサラギさんには言ったの?」
「いや、言っていいものか迷ってて・・・。
まだ父さんだと決まった訳じゃ無いし。」
「それにしても・・・アスクレピオスって・・・。」
シルファは呟いた。
「アスクレピオスって?」
シオンが聞き返す。
「確か蛇使い座の事だよね?
もしかしたらゾディアックと関係があるんじゃ・・・。」
「そうか、確か十二子宮から外されたんだっけ。」
コテツを振りながら進むシオンにシルファが一言付け加えた。
「今から会うサンドラさんも何か知ってるかもよ。
聞いて見ようよ。」
コテツを振ってたシオンの動きが止まった。
「いてっ。
何?しー君。」
シオンの不意の停止にシルファはシオンの背中に頭をぶつけた。
「いててて・・・。」
シルファはおでこを押さえながらシオンの横に立ち、その前を見た。
目の前には獣道が続いており、何も無い。
シオンは若干上を見ていた。
「出ていけ。」
「出ていけ。」
不意に声が重なって聞こえてきた。
シルファは声の聞こえる方を見上げると、道の左右にある巨木の枝の上に2人の子供が立っていた。
2人とも5~7才くらいだろうか。
驚く事に背丈も顔付きも服装も全く一緒で、男の子か女の子かすらも判断できない。
只一つ違うのは右の木に立っている子供の瞳は紅に染まっており、もう片方の子供は澄んだ蒼い瞳であった。




