エピローグ
・
・
・
《話は前日に遡る》
「お父様・・・何故ラルフのことを・・・。」
レイナは事態が飲み込めず混乱していた。
「動揺していると言うことは、夢ではないのだね?」
アルジュリアは更に言葉を続けた。
「そして私の為に訣別した事も・・・。」
「お父様、もしかして意識が。」
レイナはゆっくりと深呼吸を行い、心を落ち着かせ少しの間考え込んだ。
そして一つの結論を導き出した。
それに対してアルジュリアは静かに答えた。
「いや、意識は無かった・・・と思う。
きっと妻が見せてくれたのかもしれないな。」
遠い眼をしていたアルジュリアが、突如決意に満ちた眼差しでレイナを見た。
「レイナ・アルジュリア。
たった今この瞬間をもって王位継承権をはく奪とする。
今後この城に住むことも許さん!」
「な、何を言ってるのですか?」
いきなり強い口調で言われ、再び混乱するレイナ。
アルジュリアの口調は更に強くなる。
「理由は只一つ。
我が国民を国から追いやった事、その一点である。
民一人守れぬお前に国を背負う資格はない!
明日にはこの国から出て行け!」
「それではお父様が・・・。」
レイナの声をさえぎる様にアルジュリアは声を出した。
「私ならまだまだ大丈夫だ。
大切な国民を追いやったのだ。
しっかりその責務を果たしてこい!」
最後のアルジュリアの声は涙でかすれながらも優しく響いた。
・
・
・
《話は再び現在に戻る》
「レ、レイナ?
何してるんだ?」
足元で丸まってた塊はレイナであった。
もぞもぞと立ち上がるレイナ。
雪にまみれて全身が震えてる。
「お父様に絶縁だって言われて・・・。」
ラルフは話を聞きながら雪を払い落とす。
「ここで待っていたら、いきなり吹雪いてきて・・・。」
「解った、もう何も言うな。」
雪を払い落としたレイナを強く抱きしめる。
「二度と会えないと思ってた。」
「うん・・・・。ラルフ・・・暖かい・・・・。」
「私・・・帰る場所が無くなったわ。」
ラルフの腕の中に包まれながらレイナは俯いている。
「・・・・・・。」
ラルフは何かを考えながら黙っていた。
「ここから東南にあるエドシティーに行こうと思うんだ。」
ラルフは静かに語り出した。
「うん・・・。」
「そこで店を開こうと思う。」
「うん・・・。」
「でも開店の準備も、
開店してからの会計も接客も一人じゃ大変なんだ。」
「うん・・・。」
「バイトを探さないとな。」
「うん・・・。」
「レイナ、一緒に来てくれないか?」
「・・・・・本当に?」
「給料とかそんなに出せないけどさ。」
レイナは俯いて顔を見せない様にしていた。
「しょうがないなぁ・・・。」
レイナはラルフの胸に顔を押し付けて涙を拭った。
「ラルフ一人じゃ不安だから、ついてってあげる。」
まだ流れてる涙を腕で拭いながらラルフを見上げた。
「そのかわり、お給料は要らないから美味しい賄い食べさせて。」
「何を食べたいの?」
「もちろん、初めて会った時食べた、天麩羅カレーうどん!!」
レイナは言い終わると同時に伸び上がりキスをした。
・
・
・
「これで良かったのだろうか。」
城のバルコニーから外を眺めながらアルジュリアは呟いた。
「でも信じたから突き放したんですよね?」
シオンは七星の御剣にリバイアサンサファイアをはめ込んだ。
シルファは事の真相を聞くまでずっと不機嫌だったが、その機嫌もいつの間にか直っていた。
「ラルフさんとレイナさんなら絶対大丈夫ですよ。
でもレイナさんにお別れ言いたかったな。」
シルファのテンションは一向に下がらない。
「きっとまた必ず会えるさ。
それまで私も頑張らないとな。
幸せになるんだぞ、レイナ。」
アルジュリアは明るい笑顔で振り向いて笑って見せたのだった。