旅立ち
「ん、むぅ・・・・。」
「気がつきましたか、お父様。」
ようやくアルジュリアが意識を取り戻したのは呪いを解いてから1日経過した時だった。
ずっとそばで見守っていたレイナはアルジュリアが意識を取り戻すとすぐに近付いた。
「ここは・・・・・・。」
頭が朦朧としたままアルジュリアは周りを見回した。
「寝室です。
お父様は呪いで一年間寝たままだったのです。」
呪いという言葉を聞いてもアルジュリアは特に反応はなかった。
「夢を見ていた。
永い夢を・・・・・・。」
レイナはアルジュリアの手を握り涙を流した。
「お父様、本当に良かった。」
「妻に・・・まだ来るのは早いと言われたよ。」
アルジュリアは手を握り返して微笑んだ。
「それでラルフ君は何処かね?」
「えっ?」
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「やっぱり行くんですね。」
町のはずれにシオンとシルファとラルフは居た。
「あぁ、一度決めた事だ。」
軽い荷物を背中に背負い、ラルフは笑っていた。
「何処に行くつもりですか?」
シオンは心配そうに尋ねる。
「とりあえず南西に行こうと思う。
なぁに、こいつがあれば何とかなるさ。」
ラルフは手にした麺棒を軽く回して見せた。
シルファは一言も話そうとしない。
「色々と二人には世話になったな。」
スッと手を差し出すラルフ。
シルファはその手をチラッと見ただけであった。
「いえ、こちらこそうどん美味しかったです。」
シオンはその手を握り返した。
「じゃあ、行くわ。
二人とも元気でな。」
相変わらずシルファは横を向いたまま話そうとしない。
「ラルフさんも気をつけて。」
シオンがラルフの手を離すと、ラルフは踵を変え町から離れるように門の方へと歩き始めた。
「さっ、シルファ。
拗ねてないで城に戻ろう。」
シオンはシルファの頭をポンッポンッと2回叩くと、城に向かって歩き出した。
「はぁーっ!
寒いなぁ。」
両手に息を吹き掛けながらラルフは雪道を歩いていた。
しんしんと降る雪が体温を奪っていく。
「大丈夫。身体は寒いけど心は温かい。
俺の心にはいつもレイナが居るから。」
一歩一歩前に進むと雪は更に激しくなり、遂には吹雪となりラルフを襲い始めた。
「天気予報ハズレじゃないか。
まったく、せっかくの門出だってのに。」
視界が遮られてる中、ぶつぶつ言いながら歩いてると不意に足元に何かがぶつかった。
「痛っ。」
足元の何かがいきなり声を出した。
「えっ?」




