旅立ち
【空間魔法】
・日常では空間収納魔法として使われる。
本来使用には魔法陣とそれを実行するための呪文が必要。
収納空間を出すときは「オルパ」、閉じるときは「クルゼ」と唱える。
村の入口まで歩く中、シオンはこれからのことについて少し考えていた。
(まずは世界図書館で色々調べないと・・・
ゲートは使えないから、やっぱり馬車だよな。
徒歩だと時間かかるし。)
シオンが考えながら村の入口に差し掛かると…
「・・・ん。・・・君。・・・・・・しー君。」
後ろから声が聞こえる。
振り返るとそこにはシルファが立っていた。
「シ・・・ルファ?」
「エヘッ・・・しー君♪来ちゃった」
「いやいや、来ちゃったじゃないだろ?おじさん達心配するだろ?今すぐ戻れよ」
強い口調でシオンはたしなめる。
「お父さん達には許可もらってきたもんっ」
すかさずシルファは言い返す。
あの時のおじさんの表情・・・そういうことだったようだ。
「でも学校はどうするんだよ?」
シオンも負けじと口を尖らせる。
「今年は出席日数足りてるし、来年は休学届け出して来たもんっ。」
「そもそもなんで付いて来るんだよ?」
半ばやけになってシルファを責める。
「えっと・・・勿論しー君が心配だからに決まってるでしょ?」
軽く涙ぐみながら言い返すシルファはこうなるとシオンより強情である。
シルファは引くつもりはないようだ。
こうなったシルファの説得は難しいと考え、今一度ゆっくりとシオンは考えてみる事にした。
(シルファはついてきてしまった。
僕が旅をやめれば引き返せるかもしれない。
それにこうなるとシルファは頑として言う事を聞かない。
シルファは学校には休学届けを出して来た。
であれば来年は同じ学年にならなくて済む。
旅についてきてくれればゲートも使える。
荷物も別空間に仕舞える。
そもそもからして本当はついてきて欲しいと思う自分もいるのは確かだ。
悪い話じゃないか・・・。)
シオンはこのまま簡単に認めるのはしゃくなので、渋々認めてやるという顔を作り一言言った。
「しかたないか。」
シオンの言葉を聞いてシルファは手のひらを返したように明るい表情を見せた。
「それでまずは何処に行くの?
・・・・・・オルパッ♪」
話しながらシルファは呪文を唱え、自分の目の前に扉を呼び出していた。
「とりあえず世界図書館に行こうと思うんだ。
しかし、シルファはもう魔法陣省略して詠唱破棄出来るのか・・・。
流石優秀だね。」
シオンは目の前の扉を開けてリュックとトランクを仕舞った。
本来この世界の魔法は魔法陣を書き呪文を詠唱して初めて発動する。
更にシルファが使った空間魔法は空間座標を指定し、空間固定も必要とする。
初歩魔法だが詠唱破棄まで出来るのは大体大人になってからだ。
その点においてもシルファは相当優秀だと言える。
「クルゼッ・・・。
じゃあゲート使って行こうか?
私が居れば使えるしね」
シルファは呪文を唱え扉を閉じる。
「じゃあゲート迄歩くか。ここから10分くらいだよな。」
村を出ると真っすぐな道が田園の中を続き、その先には林がある。
ゲートはその先に設置されている。
2人は意気揚々と歩き始めた。
何はともあれようやく2人の旅は始まったのだった。