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上手な魔法の使い方  作者: 睦月
おてんばプリンセスと氷の王子
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真相

「えっと村の入口で待ってるって・・・。」


シルファは村の入り口に立ち周りを見渡した。


「あ、しー君居たよ。

おばさーーーーん。」


シルファは手を振りながらシオンの母親に駆けよって行く。

シルファの後を追い、2人もゆっくり歩いて行った。


「母さん久しぶり。

って電話では毎日話してるけどね。」


「久しぶりねぇ。

あら?

そちらの方は?」


シオンの母親がレイナに気付くと、レイナは母親に向かって軽く会釈した。


「あぁこの人はアルジュリアのレイナさん。」


「そう、この人が・・・。

あっ、そうそうこれが約束の物よ。」


シオンの母親はレイナに会釈を返すと、シオンの手にディスペルリングを渡した。



キンッ



一瞬七星の御剣が光ったがそれに気づいたものは誰もいなかった。


「これがディスペルリング・・・。」


「しー君。」


シオンの袖をシルファが引っ張った。


「そーだった。

ごめん母さんちょっと急いでて、俺達もう行くから」


「えっ?もう?」


「うん・・・アルジュリア様の事もあるから。」


母親は少し悲しげな表情を浮かべたが、すぐに笑顔で答えた。


「行ってらっしゃい!」


「うん。行ってきます。」


シオンは母親に笑いかけると振り向きレイナを見た。


「さぁ行きましょう。」



三人はゲートに向かう森の中を歩いていた。


「ここ懐かしいね、しー君。」


「ここで狼に襲われたんだよな。」


「そしてキサラギさんに会ったんだよね。」


三人は森を抜けようとした時、再び不穏な空気に包まれた。


「誰だっ?」


シオンは声を上げた。


「しー君・・・。」


シルファもレイナをかばいながら構える。


「あぁ、このタイミングで現れるって事は・・・。」


「アルジュリア様の呪いの犯人の可能性が高い・・・ってことだよね。」


「レイナさん、少し下がって下さい。」


シオンが叫ぶと同時に木陰から人影が現れた。

その姿を見た時、レイナは思わず声が出てしまった。


「カイト・・・・・・様。」


一度は疑いが晴れたはずの男がそこに立っていた。

カイトは静かにその場にたたずんでいた。

シオンとシルファはカイトを視界に捉えながらも周りに注意を払い続けていた。


「なぜ此処に?」


最初に口を開いたのはレイナだった。


「なぜ・・・ですと?

貴女がそれを知る必要はないですよ。

まさかその指輪にまでたどり着いた上に実物を見つけるとは。」


カイトは唇を噛み締めながら拳を握り締めた。


「さぁ、その指輪を渡してもらいましょうか。」


カイトはシオンに向けて手を伸ばした。

シオンは2人をかばいながら一歩下がる。

その瞬間、正面に気を取られた隙を突くようにレイナの後ろから更なる人影が現れレイナを羽交い締めにした。


「動くなっ!」


その人物は大きな声で叫んだ。

羽交い絞めにされているレイナからはその人物は見えなかったが、その声には聞き覚えがあった。


「なんで・・・貴方が・・・。」


レイナの問い掛けには答えず、その人物は言葉を続けた。


「その指輪をカイト様に渡せ。

でないとレイナ様をどうするか・・・解ってるな?」


「くっ。」


シオンは仕方なくカイトの足元に指輪を投げた。

レイナは捕まりながらも必死で叫ぶ。


「こんな事はおやめなさい。

それはお父様を助ける唯一の物なのです。

お父様が信頼していた貴方ならこんな事望んでないはず。

そうでしょう?

・・・バルト!」


バルトと呼ばれたその男は力を弱める気配は無かった。


「これは必要ない物です。」


カイトはゆっくり足元にある指輪を拾った。


「やっぱり・・・。」


シオンは下を向いて呟く。


「おや?君は気付いていたんですか?」


カイトの問いにシオンはゆっくりと答えた。


「あんたが疑われるのは呪いの特徴からして解ってた。

だが面会の記録がアリバイとなって犯人から除外された。

でもその面会の記録自体が改ざんされたものだとしたら?

つまり面会記録を残さずにアルジュリア様に会える様に手配できるのは・・・。」


「君は中々頭が切れる様ですね。」


「確信出来たのはさっきあんたがこの場に現れた時だ。

あの場の指輪の会話を聞いてあんたに流せたのはバルトだけだ。」


「なんで・・・。」


もう一度レイナは呟いた。

その失意の表情からは絶望が見てとれる。

バルトはレイナを捕まえたまま語り出した。


「利害が一致したんですよ。

カイト様はどうしても貴女と結婚したかった。」


バルトの声を遮るようにカイトが言葉を発した。


「そう、私はどうしても貴方を欲しかった。

だから何度も貴女のお父様にお願いにあがった。

それなのに・・・何と言ったかわかりますか?

娘の気持ちを尊重したい、と。

この結婚で国同士の冷戦も解決するのに、あのじじいっ。

国より娘を取りやがった。

糞がっ!」


そこには普段の沈着冷静なカイトはなく、気品の無い荒れた男が居た。


「お父様・・・。」


父親のレイナを思う言葉にレイナの瞳からは涙がこぼれ落ちていた。

だがもう一つの利害はまだ聞いていない。

シオンはバルトに問い掛けた。


「貴方はなぜ・・・?」


バルトは不敵な笑みを浮かべながら話し出した。


「私はね、レイナ様が生まれる前から仕えてきた。

毎日毎日毎日毎日少ない給金で。

だから見返りとして少しくらい金を使っても許されるはずなんだ。」


「貴方まさか、国のお金を・・・。」


レイナは愕然とした表情になり、バルトを睨み付けようとしたが抑えられて振り向けない。


「あの方は黙って着服した分を返して国を出ていけと言った。

だからあの方が邪魔になったんです。」


「お父様が言った事はそれでも大分甘い。

それなのに・・・貴方は身勝手な理由で・・・。」


レイナの涙は止まらなかった。

悔しくて、情けなくて、そして父が可哀相で。

バルトはそんなレイナを気にもせず言葉を続けた。


「あの方が亡くなれば私は今迄通り着服出来る、カイト様は貴女を手に入れられる。

お互い利害は完全に一致していた・・・。」


カイトは満足そうに頷いていた。

しかしバルトの言葉は終わりでは無かった。


「・・・と今までは思っていた。」

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