ある日の朝
『・・・ン・・・・・シオン・・・』
誰かが僕を呼んでいる。
誰??
誰なんだ??
周りを見渡すが辺り一面純白の世界で何もない。
不思議だ。
たしか部屋で寝ていたはずだけど今は何もない場所に立っている。
でも何も違和感はない。
僕を呼ぶのは誰?
誰も居ない。
『シ・・・・オン・・・シオン・・・』
声だけが何処からか聞こえる。
「誰?僕を呼ぶのは?」
『・・・シオン。
我はお前のすぐそばに居る。
我が名を呼べ。
我が名は・・・』
・・・
「・・・ん・・・くん。
しー君!!」
目を開けるとシルファが心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫?うなされてたけど・・・」
ベッドの横から心配そうにのぞき込むシルファ。
壁に掛けられた時計を見るとまだ深夜0時をまわったところだった。
「夢・・・か・・・」
ゆっくりと上体を起こすとシオンの身体はびっしょりと汗に覆われていた。
「しー君大丈夫?
凄いうなされてたけど・・・。」
シルファはシオンの右手を強く握っていた。
その瞳はシオンから視線を外さずじっと見つめている。
「あぁ大丈夫だよ。ありがとう。」
シオンは左手でシルファの髪を撫でた。
撫でられたシルファは少し目を閉じてその手に撫でられる。
「どんな夢見てたの?」
「誰かが・・・僕を呼んでいた。」
シオンは虚ろな表情で天を見上げた。
「多分、昔聞いた事がある声だった。」
シルファは心配そうに顔を近付けた。
「しー君・・・居なくなったりしないよね?」
「居なくなる訳ないだろ。
もう一回寝よう。
シルファももうおやすみ。」
シルファはその場所から暫くの間動かなかった。
シオンはそのままシルファがベッドに戻るまで頭を撫でていたのだった。
・・・
「お世話になりました。」
朝ラルフにキツネうどんをご馳走になり、出かける準備を済ませたシオンとシルファは店の前に居た。
「レイナさん来ませんね。」
「そのうち来るだろ。
あいつは気まぐれだからな。」
ラルフは呆れる様子もなく淡々と述べた。
「じゃあレイナさんによろしく伝えてください。」
「来たら伝えておくよ。」
ラルフは笑顔を浮かべて答えた。
「シルファ行こうか。」
二人は手を振り〔うどん処流布〕を後にし、アルジュリア城に向かうのだった。




