表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
上手な魔法の使い方  作者: 睦月
おてんばプリンセスと氷の王子
35/82

熱々の鍋焼きうどん

「シルファです。

こっちはしー君。

じゃなくてシオン君。」


不意にシルファからシオン君と呼ばれシオンはドキッとした。

聞きなれない呼ばれ方は新鮮だが時と場所を選ぶ。


そんなシオンの心境をよそにレイナはシルファからお金を受け取ると店主に歩み寄りお金を突き付けた。


「これで文句はない筈です。」


「そりゃ代金さえ頂ければ。」


店主が黙ってお金を受け取るのを見届けた後、レイナは振り返り二人に声をかける。


「シルファ、シオン行きましょう。」


レイナの言葉に二人は顔を見合わせた。


「でもご飯が・・・。」


シオンとシルファは温かいご飯にありつくためにこの店に入ったのに席にすら座れていない。


「こんな店に用はありません。行きましょう。」


二人の手を掴み店を後にするレイナに後ろから店主の叫び声がこだました。


「こんな店とはなんだっ!!

二度と来るんじゃねーっ!」


店主の怒号を背にレイナは堂々と振り向きもせず店を後にした。

シオンとシルファはただただその後に続くしかなかった。

暫く歩くと町外れのとある店の前に着いた。

看板には〔うどん処流布〕と書かれている。


レイナが店の扉を開けると中から男が顔を出した。

レイナは男に軽く耳打ちすると男は軽く頷いた。

レイナはそのまま店の奥に姿を消した。


「迷惑をかけたようだね。」


店に導かれ、席に座る。

体面に座り話す男はラルフと名乗った。


二人はレイナがお金を取りに行ってる間、ラルフに一部始終を話した。

ほどなくしてレイナが店の奥から再び現れた。


「はい、これ、ありがとう。」


レイナはシルファにお金を渡し椅子に座った。


「そういえば貴方達お腹空いてたのよね?

うちのうどんはあんな店より何倍も美味しいわよ。

ラルフ作ってあげてくれる?」


「了解!

レイナの恩人だからな。」


ラルフは威勢よく言うと厨房に入っていった。


・・・


「美味しいーっ!」


図らずもシオンの希望通り、鍋焼きうどんになった。

二人はその美味さに舌鼓を打っていた。


「でしょでしょ?ラルフの作るうどんは最高なんだから。」


いつの間にかレイナに凛とした気品はなくなり、話しやすい気さくなお姉さんの空気になっていた。


「ところで貴方達何処から来たの?

この町じゃ見ない顔だけど。」


美味しそうに食べてる二人を見ながらレイナが尋ねた。


「実は・・・もぐもぐ・・・アルジュリ・・ア城に・・・じゅるる・・・用があって・・・んぐっ。」


食べながらのシオンの言葉は聞き取りずらかったが一瞬レイナの顔が曇った。


「え、そ、そうなの?

お城に何の用なの?」


レイナはどもりながらも表情には出さないように言葉を続けた。


「えっと・・・。」


シルファが経緯を話そうとした時、シオンがそれを制した。


「ちょっと込み入った事情で・・・。」


シオンはそれ以上は言わなかった。

すると厨房からラルフが他の客の料理を作りながら声を出した。


「でもここ最近アルジュリア様は誰ともお会いになってないぞ。

昔はいつでも誰とでも会ってたくださる気さくなお方だったんだがなぁ。」


ラルフの声を聞きながらレイナは更に悲しい顔を浮かべたのに鍋焼きうどんに夢中のシオンとシルファは気付かなかった。


「うーん・・・となると困ったな。

でもとりあえず明日一度城に行ってみようか。」


「そうだね。もしかしたら会ってくれるかもしれないし。」


2人で相談してる中、レイナが話し掛けてきた。


「あななたち今日は泊まる場所決まってるの?」


「あっそういえばご飯優先しちゃったから。」


シルファはうっかりした表情を浮かべた。


「良かったら此処に泊まったら?

ラルフ二階空いてるわよね?」


「あぁ空いてるよ。」


ラルフは厨房から顔を出して言った。


「ラルフさんが良いって言うならお世話になろうか?

なぁシルファ。」


シオンはシルファを見た。


「じゃあラルフまた明日ね。」


レイナは店が閉店すると後片付けを手伝い、そそくさと帰って行った。


「あれ?ラルフさんレイナさんと暮らしてるんじゃないんですか?」


シルファは首を傾げながらラルフに尋ねた。


「違うよ。そもそも俺はレイナが何処に住んでるかも知らないしな。」


「えっ・・・じゃあ・・・。」


シルファは言葉を詰まらせた。


「毎日ひょっこり現れるんだ。

まぁ話したくない事は無理に聞く必要はないだろ。」


ラルフはあっけらかんと答えた。


「きっとそれだけ此処は居心地が良いんだね。」


シオンは今一度店を見渡しながら小さな声で呟いた。

シオンの言葉がラルフに届いたかどうかはわからない。

その時シルファがふと見たラルフは微笑んでいるように見えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ