表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
上手な魔法の使い方  作者: 睦月
朱雀島
29/57

朝の鍛錬

「いきますっ!

焔の矢!」


声をあげたシルファと共に炎が彗星のごとく尾を引きながらライオに向かって真っ直ぐ飛んでいく。


「フンッ」


ライオが左手をかざすとその手に光が集まり、シルファの焔の矢を弾いた。


「もっと練り上げるんじゃ。

一つ呼吸をする間に意識を深く深く潜らせよ。

同じ魔法でも純度を上げるだけで威力が何倍も違うからの。」


ライオの言葉に呼応するようにシルファの出す炎の色が徐々に濃い赤から淡い赤からに変わっていった。


「ふむ、中々覚えが早いのぉ。

ほれシオンも来るんじゃ。」


ライオは右手の人差し指と中指2本に魔力を込めた。


「でも・・・。」


シオンは無防備で指を出しているライオに切り掛かる事を躊躇していた。


「何を心配しておる。

これがわしの戦闘スタイルじゃ。

魔闘士と言えば解るか?

大体わしは黄道十二魔導士じゃぞ?

お主の剣ごときでは傷一つ付けられんわい。

ほれシルファもっと意識を集中させるんじゃ。」


シルファの相手をしながらのライオの挑発にシオンは少しムッとして手にした剣を構えた。


「怪我してもしりませんよ。」


「できるものならさせてみよっ!」


声と同時にシオンはライオに剣を振り上げ切り掛かった。


キィンッ!


まるで指の音とは思えない音でシオンの振りかざした剣はいとも簡単にライオの指に弾かれた。


「振りが大きすぎる。

それに力任せじゃのぉ。

若さに頼った剣術と言ったところか。」


シオンは驚いていた。

最初の一太刀が遠慮して力を抜いていたとはいえ、簡単に弾かれたのだ。

そしてそれを見抜いていたライオはニヤリとしながらこう告げた。


「これで次からは全力でこれるじゃろ?」


「はいっ!行きますっ。」


シオンは自分の剣技がライオにははるか遠く及ばないことを自覚し、本気で切り込んだ。

シルファの炎は淡い赤から徐々に濃い青へと変わっていく。


「よし、シルファ次は焔の弾丸にして数を撃つのじゃ。

今なら一呼吸の間にお主なら3発は撃てるはずだ。

それを10発迄引き上げるのじゃ。」


キィンッ!


キィンッ!


一方でライオはシオンの斬撃を受け止めながら的確に指示を出す。


「まだ荒いっ。

押し切るのでは無く切り裂くイメージじゃ。

切る瞬間は力を抜いて、その力を速さに変換して切っ先を加速させろ。

剣に必要なのは見切りとタイミングじゃぞ。」


シオンの斬撃も次第に鋭さを増していくが、それをなお上回るライオの強さがあった。

二人の攻撃を受けながらもまだ余力を残しているように見えた。


「よし、朝の鍛錬はこんなとこじゃろ。」


「プハァー。」


ライオの声と共に二人はその場に崩れ落ちた。

二人とも完全に息が上がってる。


「シルファは5発か、もっと瞬時にイメージするのだ。

魔力を練るのとイメージを同時に素早く出来るようにしなさい。

それから炎の純度は鍛錬と共にまだまだ上がる。」


ライオは左手の人差し指だけ伸ばし爪の先に炎を出して見せた。

その色は限りなく白に近い蒼白だった。



「わしのはまだ青みがかってるが、シンなんぞは白銀の炎が出せる。」


シルファはその炎に一瞬見惚れていた。


「シルファなら近い内にこのくらいの炎なら出せるようになる。

まぁ鍛錬しだいじゃがな。」


ライオはシルファを励ますと次にシオンに向かって話し始めた。


「大分焦ってる様に見えるのぉ。

太刀筋は悪くないんじゃが焦りが剣を曇らせておる。

鋭さは増したがその分危うさも増えた。」


「でも・・・。」


シオンが口に出すのを阻む様にライオは話を進めた。


「言いたい事は解る。

だが無い時間なら尚の事無駄には出来ないのではないか?

焦るな、少年。

今を見つめなければ未来は見えないぞ。」


ライオの言葉にシオンはただ黙るしかなかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ