小さな家
「すいませーん。」
大きな声を出しながらシオンは辺りの様子を見渡した。
小屋の周りは開墾された跡があり、畑があり数種類の野菜が実を付けていた。
付近には切り株があり大きな斧が刺さっていた。
シルファもシオンに続いて周りを見渡し、あることに気付いた。
「しー君、ドア開いてるよ。」
シオンが振り向くとシルファはそそくさとドアを開け小屋に入って行った。
「ばっ・・・ばかっ、勝手に入るな。」
シオンは急いで駆け寄ると入口を入った所でシルファの腕を掴んだ。
その時後ろから大きな声がした。
「なんじゃ、お主ら。
わしの家になんか用か??」
2人が振り返ると2メートルはあろうかという体躯の男が入口に立っていた。
年は30代くらいと以外と若く見える。
上半身裸で手には魚と釣竿を持ち、盛り上がる様な筋肉は全身が毛で覆われており、不精髭を生やしていた。
「わしの家に何か用か?」
男は再びシオン達に問いかけ、入口をふさぐ形で近づいてきた。
逃げ場のない状態でズイッと近づいてくる姿は流石に迫力がある。
「あのー、、、ライオさんですか?」
シオンは迫力に気圧されぬように腹の底に力を入れて声を絞り出した。
「なんじゃ、わしの事を知っているのか?」
ライオは2人を掻き分け家の奥に入ると竿と魚を置き、クルリと振り向いた。
「キサラギさんの紹介で来たんですが・・・。」
シオンはシンから預かった紹介文を渡した。
「ふむふむ・・・大体事情は飲み込めた。
シンの奴め、面倒な事を押し付けおって。」
ライオは手紙を読みながら同じ場所をグルグル回っている。
そして再びシオンとシルファの方に向きなおすと言葉を発した。
「シオンとシルファと言ったな。
わしの修行は厳しいぞ。
ついて来れる自信はあるか?」
ライオは少し神妙な面持ちで尋ねた。
脅しともとれるその声色に物怖じすることなくシオンとシルファは無言で頷いた。
「わかった・・・ではまず・・・。」
ライオは2人の身体を下からじっくりと見た後、突然顔を崩すように豪快に笑いながらこう告げたのだった。
「がっはっは。
まずはその疲れた身体を休めろ!
わしがとっておきの飯を作ってやろう。」




