小さな島
【フェアリアード】
消滅と創造を繰り返し常に形を変える世界。
動物達は危険を察知し消滅から逃れるが人間にはその機器察知能力がない為、
遥か昔の魔導士が結界魔法によってある一定の空間を固定した。
固定された世界をかたどる四隅は今も名前を残して存在する。
東の青龍門、南の朱雀島、西の白虎山、北の玄武洞
これらの内側が人間が生活出来る領域となる。
また、四隅の結界は黄道十二魔導士が管理している。
「ほらほら、しー君もっと頑張って!」
シオンは言われるがままオールを持って必死に漕いでいた。
今2人は舟で海上に居る。
2人乗りで大きな波が来ればすぐにでも飲み込まれてしまうであろう小さな船で大海原へと漕ぎ出していた。
もう既に数時間が経過し、周りを見渡す限り海以外の何も見えずどこに進んでいるかすらわからない。
「なんだよ、シルファも手伝ってよ。」
シオンはブツクサ言いながらも頑張って漕いでいた。
「こーゆーのは男の子の出番でしょっ。
ほらほら手が休んでるよ。」
シルファは大分はしゃいでいる。
2人にとっては久々の休息だった。
半ば遭難に近い休息に見えるのだがそれでもシルファは二人のこの時間を楽しく思っていた。
幸いにして波はとても穏やかであり、二人の旅路を祝福しているようにも見える。
「こっちであってるのかな?」
シオンは不安げに方位磁石を眺めた。
「大丈夫だよ・・・多分?」
シルファの曖昧に言葉を濁した。
そうして再び数時間海での遭難デートを過ごしていると、シオンとシルファの眼前に朧げに島の影が見えて来た。
その島は周囲が1キロ程の小さな島だった。
山らしいものも高台のようなものも無く、熱帯林と見て取れるような木々が生い茂り、海岸線は美しく白い砂浜で囲まれていた。
2人は砂浜にボートを乗り上げ上陸するとゆっくり周りを見回した。
「多分この島であってるよね?」
シンから聞いていた島の様相と一致してはいるが、一抹の不安を覚える。
「多分、、、だよな。」
確信は持てないが次の島を探すのも目指すのも今は考えたくない。
そんな気持ちがシオンから発せられていた。
「なんかバカンスに来てる恋人って感じだねー、しー君。」
そんなシオンの気持ちを知ってか知らずかシルファはわざとらしくおどけて見せる。
「馬鹿言ってないで早くライオさん探すぞ。」
シオンがシルファの頭を軽く叩くとシルファはほっぺを膨らませて拗ねて見せた。
2人で海岸線を歩いていると島の奥に進める一本の道が目の前に現れた。
「しっかし、1月とは思えないくらいの暑さだなぁ。」
歩いてると自然と汗が吹き出てくる蒸し暑い森の奥に続く道を歩きながらシオンが呟いた。
「大分南に来たからね。
でも私は暖かい方が好きだなぁ。」
「でも暑苦しいのは嫌だね。」
シオンはニヤリと笑った。
その意図に気付きシルファは再び膨れっ面をした。
「ひっどーい。
それって私の事?」
「ハハッ、冗談だよ。
これでもシルファには感謝してるんだから。」
「目が笑ってないんですけど・・・?」
冗談を言い合いながら2人は更に奥へと足を踏み入れた。
距離にして100メートル程、囲まれた森の道を歩くと、目の前に小さなログハウスが現れた。




