新たなフォルダ
暫くの沈黙ののち、静寂を破ったのはシオンだった。
「つまり・・・僕に魔力が無いのは全てこの剣の封印の為ってこと・・・ですか?」
シオンの瞳には白金の剣が暗闇の中で怪しく光っていた。
その表情から察するに余り落胆してはいないようだった。
逆に自分に魔力がない理由が判明したのが思ったより早かったことで、深く考えることもなく素直に受け止める事が出来たようだ。
「そのようですね。
そしてこの内容からもう一つわかった事があります。」
シンは静かに口を開いた。
「シルファ君。貴女もこの封印に関わっているようです。」
シルファは驚いてシンを見た。
「え、でも私今、13才だし、16年前なら関係ないんじゃないですか?」
「君に兄弟、姉妹が居ない事から考えると導かれる答えは一つ。
シルファ君はその当時、胎内に居たと言うことになります。」
シンは静かに話し続ける。
「それならばシルファ君の魔力の高さにも納得がいく。」
「あっ。」
シオンは3週間前に隣でMaRCSSを使ってニュースを見てた人を思い出した。
「でもあのニュースは20ヶ月だった。
シルファは・・・・・・30ヶ月?」
シオンの声にシンが答える。
「胎内期間900日を超えて生まれてきた子は今だ確認されていない。
勿論それは母子ともに壮絶な負担がかかるからでもあります。
その上で生まれてきたのであればシルファ君は紛れも無く天才と言うことになります。
今はまだ未成熟ですが魔力にはその片鱗が伺えます。」
一息置いてシンは言葉を続ける。
「あのメモに書かれていた万が一と言うのが封印が解けた時の事か、
封印を解かなければならない時なのかは、まだ判りませんが、
いずれにせよシルファ君は七星の御剣に関わっていると言うことでしょう。」
シンの口から告げられた客観的事実をよそにシオンと比べシルファは動揺を隠せないでいた。
シオンの手をギュッと握る。
シオンは優しく安心するようにシルファの手を握り返した。
『オハナシチュウモウシワケアリマセンガ・・・。』
睦月が話に割り込んで来た。
「睦月、どうしました?」
『アラタナフォルダガアラワレマシタ。』
「新たなフォルダ?どういう事ですか?」
シンは睦月に尋ねた。
『ウラシチセイトドウヨウノシークレットフォルダノヨウデス。
ウラシチセイガヒラカレルコトガトリガーニナッテイタヨウデス。』
「つまりアルタイド君が残したと言うことですね。」
シンの考察をよそに睦月は話を続けた。
『ウラシチセイトサクセイヒヅケガコトナルヨウデス。
コノフォルダノサクセイヒヅケハ
ゴネンマエ、ジュウイチガツ、フツカトナッテマス。』
睦月の言葉に思わずシオンが声を上げた。
「父さんが居なくなった日です。
父さんはここに来たんだ。」
シンはシオンの言葉に軽く頷いてみせた。
「見てみましょう。
睦月、中には何が入っていますか?」
シンの問い掛けに睦月が答える。
『オナジクテキストファイルガヒトツオカレテイマス。』
「そのファイルを開いてください!」
シンの命令に目の前の画面が再び切り替わった。