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上手な魔法の使い方  作者: 睦月
火竜の顎
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火喰虫

【火喰虫】

火山地帯などに棲息する、体長8センチ前後の虫。

その名の通り火を食べ、その身に火を纏っている。

数千匹単位の群れで行動する。

二人はゆっくりと歩いていた。

もう大分歩いているが全く何処かにたどり着く気配は無い。


「やっぱり右は外れだったかな、しー君」


シルファはシオンの顔を覗いた。


「ま、違ってたら戻れば良いさ。」


シオンは軽く答えながらも前を向き、歩き続けた。

シルファは歩きながらいざという時の為にと何個かの魔法陣を空中に描きながらブツブツと呪文を唱え始めた。

設置型の魔法は発動するまで魔法陣を維持しておくため、シルファの潜在能力の高さがこれを可能としている。

しばらく進むとシオンは立ち止った。


「着いたみたいだ。さぁて吉と出るか凶と出るか。」


「凶はやだよぉっ。」


再び二人は歩き出すと、その先に広い部屋とも見える空洞が現れた。

目の前に開けた空間は、壁に無数の穴が開いており、奥には祭壇らしきものがある。

祭壇らしきものの上には四角い箱のようなものが置かれている。

人が一人すっぽりと横たわれるほどの大きさで上部もしっかり閉じている。


「あれは・・・・・棺・・・か?」


シオンは軽く首をかしげながら呟いた。

二人の足音が辺りに反響する。

静寂がその場を支配していた。


「シルファ、油断するなよ。」


シオンは新しく手に入れた鋼の刀を抜く。


「しー君こそ、油断しないでね。」


シルファは怯える様子も無く、強がってみせる。

シルファの両肩と胸、背中辺りには先ほど詠唱を終えた魔法陣が浮いている。

ゆっくりと全神経を集中させ部屋の中に入る。


とりあえず気配は何も感じられない。


「当たりだとしたら、やっぱ怪しいのはあれかな?」


シオンは刀で祭壇らしきものの方を指した。

部屋の中央を一歩一歩ゆっくりと警戒を怠らずに進む。

今の所、何も変化はない。


(思い過ごしか?)


シオンがそう感じ始めたその時だった・・・。






カチッ!





シオンは慌てて振り向く。


「しー君、ごめーん。何か踏んじゃった。」


シルファは泣きそうな顔でシオンを見ていた。

直後、部屋の中に不気味な音が響き渡った。

その音は部屋の中から聞こえてくるわけではなく、部屋の外全体を囲むように部屋全体に響いている。

その音は部屋に近づくように段々と大きくなっていった。


「シルファッ、来るぞっ。」


壁に空いている無数の穴からそれは羽音を立てて飛び出して来た。



ビチッ



飛び出したそれは勢いよく飛んでシオンにぶつかり・・・落ちた。


身体を覆ってる水の障壁が、シオンを守っていた。



「これは・・・火喰虫か。」


次々とぶつかってくるそれらは水の障壁のおかげで大したダメージもなく、ぶつかった後はその場に落ちる。

だが、それを見たシオンの顔色は一気に青ざめた。


「やばい、こいつら群れのはずだ。」


「シルファ。まだまだくるぞ。どれくらい保つんだ?」


「馬鹿にするなぁ、全然・・・大丈夫・・・

じゃないかもぉ・・・。」


シルファは溢れ出す虫を見て急いで訂正した。

水の障壁はシルファの魔力を継続的に消費する。


シオンはとっさにシルファを抱えて入口に走り始めた。

部屋の中央で全方位から攻撃をくらうより、

入口まで後退すれば前方からの攻撃だけに集中出来ると考えたからだ。


シオンは魔法が使えない分、危機察知能力に優れ、柔軟性、順応性に特化していた。

そして常に思考を巡らせることを忘れない性格でもあった。


何とか入口まで戻ったが状況は依然ギリギリであった。

シオンはシルファをかばいながら刀で火喰虫をたたき落としているが、

たいした効果は無く次々と身体にぶつかってくる。

シオンは次の手を考えるべく、シルファに尋ねた。


「シルファ、さっき詠唱しといた呪文は?」


「えーっと、えーっと、風の翼と、ウォーターフォールと、水蜜の泉と、水鏡の盾だよ。」


シルファが言うと同時にシオンは頭の中で最善の方法を模索する。


(あの数の群れが統率されたように襲うって事は中に女王がいるって事か。

しかも近くに居ないと統率出来ないよな。

問題はどうやって捜すか。

やっぱあの中にいるのかなぁ?)


シオンが見た先には火喰虫が重なって固まって蟻塚のようになってる。



「凶と出た後の分の悪い賭けだけど障壁も持ちそうにないし、やるしかない・・・か。」


シオンはシルファに向かって何かを呟いたのだった。

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