シンからの課題
フェアリアードでは風、火、水、土、月、光、闇魔法の7種類の属性に分類される。
中でも特に珍しいのは月魔法で重力や時に関する魔法である。
ちなみに魔法は単体属性の魔法だけではなく、
2つ以上の属性を混ぜた複合魔法も存在する
また、今は禁呪とされてる古代魔法。
魔神との契約による召喚魔法。
精霊との契約による精霊魔法。
魔獣特有の咆哮魔法など特別な魔法も存在する。
熟練度が上がると、
呪文を簡略化する詠唱破棄、
まったく詠唱しない無詠唱などが使えるようになる
遡ること16年前
とある暗い部屋の中に男が二人たたずんでいた。
一人はローブに身を包み、もう一人は軽装の鎧のようにシルエットが映る。
男達の目の前には魔法陣が暗闇の中に浮かび上がっており、その魔法陣の中心には女性が二人眠ったように横たわっていた。
齢は男二人と同じくらいだが薄暗い中では詳細は把握できない。
女性は二人とも目覚める気配はない。
「エルフレア・・・すまない。
君達を巻き込むことになってしまって・・・。」
軽装の男はうなだれた様子で言葉を紡いだ。
「何を言ってる。
僕等の仲だろう?
それにこれは全人類の問題でもある。」
ローブの男は言葉を続ける。
「大丈夫だよアルタイド。
この子達は希望そのものだ。
信じよう。
この子達ならきっと・・・。」
「そう・・・だな。」
二人は目を合わせると同時に詠唱を始めた。
そして手に持っていた白金のナイフを一人の女性の腹に突き立てた・・・
時は再び現在へと戻る。
「しー君待ってよー。」
「ほら、シルファ早くしろよ。」
そう言いながらシオンは少し歩くペースを遅らせる。
シオンとシルファは火竜の顎と呼ばれる洞窟を目指していた。
しばらく歩くと目の前に大きな入口の洞窟が現れる。
まるで竜が口を開けたような様相から火竜の顎と呼ばれていた。
洞窟の周りは草木一本生えておらず、ゴロゴロと石が転がっている。
その入口からは熱気が噴き出しており、普通の人ならとても入れる温度ではない。
「しー君。ちょっと待ってて。」
シルファはそういうと空中に魔法陣を書き出した。
「大地に染み入る癒しの力よ、大気に漂う全ての水の精霊よ。
その力をもって我らを包み護りたまえ。
水の障壁!!」
シルファが呪文を唱えると二人を水の膜が覆った。
不思議と息は出来るため、自身の行動に不便さは感じられない。
「おっ・・・熱くないな。」
「さっ、いこっ。しー君。」
シオンとシルファはゆっくりと中に足を進めて行った。
『では課題だが、ここから南へ20キロ程行った所に火竜の顎と言われる洞窟がある。
その奥にあるルビーを取って来て貰おう。
期間はそうだな、一ヶ月あげよう。
そのまま行けば間違いなく死ぬからね。
その為の準備期間だ。』
シンの言葉を信じ、あれから3週間・・・
二人は考えられる最善の準備をして、洞窟に臨んだ。
中は思ったより広く真っ直ぐに奥へと続いてる。
全体的に赤く帯びた光が浮かび上がり暗い感じは無い。
暑さも今のところ耐えられる。
二人はゆっくりと奥に進んでいく。
「やっぱり一番奥に有るのかなぁ?」
歩きながらシルファは呟く。
「んー。じゃなきゃ課題にはしないだろうからなぁ。」
シオンはきょろきょろと周りを警戒しながら答えた。
「魔獣も沢山居るらしいから注意しろよ?」
「うん、わかってるよ。」
暫く奥に進んでいくと二人の目の前の二手に別れた道が現れた。
「しー君、どうする?」
立ち止まりシオンを見る。
(二手に分かれるって選択肢は無いよな。
シルファを一人には出来ないし、僕も魔法使えないし。
問題はどっちに行くか・・・だよな。)
「シルファはどっちだと思う?」
シオンはシルファに聞いてみる。
「うーん・・・。左・・・いや右のような。
左に行きつつ右みたいな。」
どうやらどっちか決められないらしい。
「仕方が無い。
間違えてたら戻ってくるってことで、これで決めるか。」
シオンはポケットからコインを取り出した。
「表なら右、裏なら左だ。」
そして勢いよくコインを空中に弾いた。