提案
黄道十二魔導士・・・
四年に一度選ばれる十二人のゾディアック。
知力、体力、魔力全てを総合的に判断し選出されるらしい。
選出の明確な基準は公表されていない。
あえて言うのであればその時の最高の魔法使いの十二人と言っても過言ではない。
「ちなみに私は天秤座を司ります。」
シンは笑顔で話しているが当の二人には届いて居ないようだった。
「そんなに驚く事ではないでしょう?
貴方達のお父さんだって務めた事がおありなんですから。」
「えっ?えぇーーっ??」
二人同時に見せた今日一番の驚きだった。
「父さん達が黄道十二魔導士・・・だったの?」
シオンとシルファはシンが出してくれた紅茶を一口飲み込み、ようやく少し落ち着きを取り戻した。
「来年が閏年ですから8年前から4年前迄の前期4年間でしたかね。
アルタイド君は行方不明になるまでの3年間でしたが・・・。
アルタイド君は獅子座でエルフレア君は水瓶座でしたかね。」
シンの口によって淡々と語られる事実。
「パパが黄道十二魔導士だなんて全然気付かなかった。」
シルファの言葉にシオンもただ頷くだけであった。
「さて、余談はこれくらいにして本題に入りましょうか。」
そんな中、シンは静かに切り出した
「はっきり言いましょう。
現在アルタイド君の生死はゾディアックでも把握できていない。
だが、七星の御剣に関係している事は明らかです。」
「つまり七星の御剣の秘密を暴いていけば、
父さんにたどり着く可能性は高いと言う事ですね?」
ようやくシオンは堅く閉じた口を開いた。
「そういうことになります。
ですがそれは多くの危険を伴います。
ここに君達を呼んだのは七星の御剣を預かる為です。
後は我々ゾディアックに任せてくれませんか?」
シンの言葉の後、しばらく静寂が部屋を包んだ。
シオンは何かを考えるように目をつむり、シルファはそのシオンを不安そうに見ている。
5分・・・いや10分程度経っただろうか。
ようやくシオンが口を開いた。
「お気持ちは有り難いですが、これは僕と父さんの問題でもあります。
七星の御剣を渡して待っているなんて僕には出来ない。
父さんは僕とシルファで探します。
他人任せになんか出来ません。」
その言葉にシンは静かに言葉をつなげた。
「覚悟は・・・出来てるんだね?」
シンは静かに尋ねる。
「はい!!」
シオンの答えには一片の迷いも感じられなかった。
「やはりアルタイド君の息子だね。」
シンは溜息をつきながらも微笑んだ様に見えた。
「ただし、こちらにも面子があってね。
はい、そうですかと許す訳にもいかないのですよ。
というわけでどうだろう。
私が出す課題をクリアしたら認めてあげよう。
勿論クリア出来ればこちらにある《七星》のフォルダも見せてあげよう。
クリア出来ないなら諦めて七星の御剣を渡してくれ。
どうかな?」
髪をかき上げながらシンはやや困り顔で提案して来た。
そのシンを見ながらシオンは思考を加速させた。
(おそらくゾディアックとしてはこれ以上の譲歩はないだろう。
キサラギさんじゃなかったら無理矢理奪われてたかもしれない。
それにうまくいけば情報も手に入る。
そもそも今頃になってゾディアックが動き出した理由もわからない・・・。
ここは乗っておくか。)
シオンはシルファの方を見るとシルファも小さく頷いたのだった。




