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たまにはちょっと、そんな気分 2

今日は夜に更新できるか分からないのでこの時間に更新です٩( 'ω' )و


 ミントのような香りのする枝を口にくわえ、両手をポケットに突っ込みながら、バッカスはダラダラと少年たちの後を追う。


 とは言ってもまだ町の中だ。

 さっきまで簡単な道具チェックなどをしていた。


 バッカスも一応、腕輪から剣を取り出して見せたし、魔術が使えることも伝えてある。

 そういうものの把握もリーダーの仕事だからな、とニーオン少年は胸を張っていた。


 持ち物チェックや簡単な打ち合わせをしたのち、彼らが向かうのは、町の周辺に複数ある雑木林の一つだそうだ。


「そういや、ニーオン少年。

 お前さんは銅一級だろ? それならエメダーマには行けるんじゃないのか? 出入り制限は銅一級未満だろ?」

「オレは一級だけど、二人は二級と三級だからな!」

「リーダーの階級が満たしていれば入れるだろ?」

「二人のコトを考えたら、そんな無茶はできないぜ!

 オレはリーダーだからな! ちゃんとパーティのコトも考えないとな!」

「ほう」


 バッカスは感心したように声を漏らす。

 熱血直情少年のようで、なかなかどうして見所があるではないか。


 足りない部分も多いが、ガリル少年とアーランゲ少年がそれを補うことで、過不足のない準備をしていたところ含めて、悪くないパーティのようだ。


「お前ら、このまま慢心とかせず、地道に成長していくとストレイやロックたちのいるところくらいまでは行けそうだな」

「ほんとか!?」


 ニーオン少年が目を輝かせて振り返る。

 ガリル少年やアーランゲ少年も似たような感じなので、パーティでの統一目標のようなものも一致しているようだ。


「保証は出来ねぇけどな。

 準備や仲間の大切さをちゃんと理解できているのはポイント高いぞ~」


 などと、少年たちを褒めていると、どこかともなく聞き覚えのある女性の声が近づいてくる。


「ば、っ、か、す~!!」


 何事だ――と、視線を向けると、クリスがこちらへ向かって全速力で走ってくるのが見えた。


「おっさん、クリスさんの知り合いなのか?」

「まぁな」

「何度見ても美人だよな……」

「すてきな人です……」


 どうやら、クリスは少年たちの憧れの女性ポジにいるようだ。

 それはそれとして、駆け寄ってくる形相はなにやら必死だが。


「この間、ストロパリカと一緒に消えてから姿を見なかったが、どうしたんだ?」

「途中までは一緒に買い物をしてたんだけど、でも途中でそのストロパリカのお店に連れ込まれたのよ!」

「そうか。そっち系に再就職が決まったか、おめでとう」

「決まってないしおめでたくないッ! 連れ込まれたって言ったじゃない!」

「意味もなくそういうコトをするヤツじゃないだろ、あいつも」

「そうかもしれないんだけど……!」


 いったいコイツは何に必死になってるんだ――と、バッカスが首を傾げると、どこからともなくストロパリカが現れて、クリスの背後から撓垂(しなだ)れかかる。


 ストロパリカは暗殺だか諜報だかを得意とする人を師事してたことがあるらしいので、気配を消したりするのも得意なのかもしれない。


「ダメじゃないですか~、クリスさ~ん。逃・げ・ちゃ!」

「ひぃ、でたー!?!?」


 ストロパリカが完全にお化けの類として扱われている。

 撓垂れながら、ストロパリカはその手でクリスの身体をまさぐるように愛撫しているようだ。


「痛いのは最初だけ、最初だけですよ~」


 クリスは顔を赤くしながらふりほどく。


「ただでさえ誤解されやすい容姿している人がそういうコト言うのはダメよ!」


 チラリと、バッカスが少年たちを見ると、三人は顔を真っ赤にしていた。

 美人同士の絡み合いは、三人にとってかなり刺激的なようである。


 何となくバッカスはストロパリカのしたいことに気づいて、小さく手を振った。


「助けてバッカス! あの後からずっとこの調子でつきまとわれてるの」

「まぁ何だ……クリスの醜聞にならん程度のほどほどで頼む」

「任せて」

「任されないで!」

「だいじょうぶ。おねーさんに任せておきなさい!」

「なにを任せるのかすら分からないのが怖いのよー!!」

「ふふ、平気よ平気。すぐによ~くなるからね?」

「い――――ゃ―――……ッ!!」


 そうして、クリスはストロパリカに捕らえれ、町の雑踏の中へと消えていった。

 その気配が完全に消えたあと、バッカスは三人へと向き直る。


「じゃあ行くか」

「何事もなかったかのように!」


 アーランゲ少年が驚いているが、バッカスとしては何事もなかったことと変わらない。


「これ以上、関わる必要のない出来事だから、何事もないのと同じだろ?」

「そうなのか?」


 ガリル少年も首を傾げている。

 世の中、深入りしすぎても疲れるだけなので、ほどほどが丁度よいのだ。それに気づくにはまだ人生経験が足りていないのだろう。


「ほれ、リーダー。時間がなくなるぞ。

 日暮れ前に帰ってくるなら、油は売れないんじゃないのか?」

「そうだった! みんな、行こうぜ!」


 そんなワケで、目的地である雑木林へと、四人は改めて向かうのだった。



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