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男はみんな、立派な魔剣を持っている 3(Ver.Na)

この回は一部の表現を投稿しているサイトに合わせて微妙に変えてあります。

物語の本筋には一切影響ありません。

ひよってない……ひよってない、ですからね?


 義肢の素材を集める為、バッカスは貸獣屋(アトネラ・トサーブ)巨大陸走鳥(キビ・エモーア)を借りて、馬車を走らせている。


 余談だが、いちいち牽いてる生き物で言い換えをするのが面倒という理由で、基本的に何の生き物が牽いていようと馬車と称されるのが一般的だ。


 バッカスは馬車を駆り、ケミノーサの町を出て北へ向かう。


 領都であるケミノーサを囲うなだらかな丘陵地帯、アオイデサ丘陵を越えてさらに北へ。


 やがて丘陵も落ち着き、完全な平野となってくると、今度はやたらと岩が増えてくる。

 この岩の多い草原地帯がメタリア岩草帯(がんそうたい)


 ここもここで採取できるモノがあるのだが、今は用がないので無視してさらに北へ。


 徐々に徐々に周囲が荒涼としてきて、やがて草木と岩の比率が逆転しはじめた頃に、コタサワー川という大きな川とぶつかる。


 川の流れにそって東へ向かっていくと、少し川の狭まったところに、橋が架かっている。


 これを渡ると、バッカスの目的地のラピンキ岩野(がんや)だ。

 赤茶けた土は非常に硬く、地面から突き出た牙のような岩や、どこからか転がってきた大きな岩が無数に落ちている乾いた土地。


 緑が無いわけではないのだが、それらは前世のアロエを思わせるような植物が岩と同じくらいのサイズに成長したものや、硬いツタを岩に巻き付けて花を咲かせているツタ植物など、この環境に適応した少々変わりダネが多かった。


「確か、岩樹(ガンジュ)が多い場所にいるんだったな」


 岩樹とはこの当たりに生えている植物の一つだ。

 見た目は樹皮が金属的な緑色をしたサルスベリ。つるつるとした手触りの硬い木である。手触りだけでなく、実際に岩のように硬い木でもあった。

 ただ前世のサルスベリと違って、葉も花も付けない。

 正直、植生が謎の植物だ。


 一応植物だとか樹木だとか言われているが、それすら怪しいとバッカスは思っていたりするが、それはさておく。


 岩樹の樹液と呼ばれる液体も、本当に樹液なのかどうか……。


 どろどろとしたその樹液は、一応、飲める。

 栄養価も悪くはないので、最悪の場合の非常食として悪くない。

 ただお世辞にも美味しいとは言えない味だし、美味しいと思えるような見た目ではないので、バッカスとしては口にするのはゴメン被りたいところだ。


 口にする以外の使い道もいくつかあるので、採取依頼が出されていることはあるが。


 ともあれ――

 このラピンキ岩野には、その岩樹が林のように群生している場所があるのだ。

 バッカスは、そこに生息する魔蟲(ムシ)に用があった。


 場所を正しく覚えていなかったので、周囲を見渡しながらゆっくりと馬車を動かしていく。


 ――と。


「あ、バッカスさん!」

「ん?」


 少女の声で名前を呼ばれ、バッカスは馬車を止めた。そして声のした方へと顔を向ける。


「テテナ、だっけ?」

「はい!」


 声を掛けてきたのは、ストレイたちのパーティの新人テテナ・ナントだ。

 バッカスとはボアしゃぶで、一緒に鍋を囲んだ仲である。


「何やってんだ、こんなところで?」

「岩樹の樹液集めです」

「一人でか?」

「ユウさんもいるんですけど、別行動中です」

「ふむ」


 一つうなずくと、バッカスは岩陰へと馬車を移動させ、そこへと停めてから馬車を降りる。

 少し離れた場所に、目的地と思わしき岩樹の群生地帯を確認できたので、小さく息を吐く。


 ふと顔を上げると、律儀にこちらが馬車から降りるの待っているテテナの姿があった。

 岩樹の樹液を採取しにきているというテテナに、バッカスは訊ねる。


「お前さんは、あそこで採取はしないのか?」


 そう言ってバッカスが示すのは、バッカス自身が目的地としている岩樹の群生地帯。

 岩樹だけでなく、巨大なアロエモドキや、トゲのないサボテンのような植物など、このラピンキ岩野の植物たちが一同に介しているような場所である。


「行きたいのはやまやまなんですけど、ユウさんは絶対に入るなって」

「そりゃあ、ユウが正しいな。理由は聞いたか?」

「いいえ。でも……ああいう場所って魔獣や、危険性の高い植物や虫が住んでたりするじゃないですか。

 だからかなぁ――って、この辺りでの採取に留めてます」

「よしよし。ちゃんとユウの話を理解して、守れてるな。偉いぞ」


 あの場所に生息する、もっとも危険度の高いとされる魔蟲は基本的には温厚だ。ナワバリに入った程度では怒らない。

 だが、奴らには特定の行動に対する激怒(げきおこ)スイッチが存在する。それをオンにしてしまったら最後だ。対処法を知らないと、親指の爪くらいのサイズの蟲たちの集団に集られ、身体の自由を奪われながら、生きたまま中身を食らいつくされる。


 ユウの言いつけを守らずに中に入っていたら、危険だったのは間違いない。


「興味があるなら、一緒に岩樹(ガンジュ)(りん)に入るか?

 俺が一緒なら、ユウも怒らないだろ」

「いいんですか?」

「俺の言うコトは聞けよ? 対処を間違えると、あっさりと魂を五彩に還される蟲が住んでるからな」

「は、はい!」


 テテナなら、こう言っておけば無茶はしないはずだ。


「ちょっと待っててくれ。ユウ宛のメッセージを馬車に残してくる」


 そう言って、バッカスは馬車のそばに、盗まれても困らない魔剣を一本刺しておく。

 柄の部分にはバッカスが造ったことを証明する刻印がされているので、ユウがそれを見れば理解してくれるはずだ。


 この辺りには盗賊もあまり寄りつかないので、十分なメッセージになるはずである。


 もっとも、ユウはどこかでテテナの様子を伺っている可能性もあるので、こうやって自分と話している姿を見ているかもしれないが。


「んじゃあ、行くか。採取用の瓶とかの用意は大丈夫か?」

「まだまだ余裕あります!」


 何はともあれ、バッカスはテテナをつれて、岩樹林へと足を踏み入れるのだった。


本日は準備が出来次第、もう1話アップ予定です٩( 'ω' )و

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