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何度も言うが面倒を招くな、幸運を招け 6

書籍3巻8/12発売です٩( 'ω' )وよしなに!


「ルナサ」


 名前を呼んで、取り出した魔剣を投げ渡す。


楔剥がし(エグべウ・ラボメル)?」

「原理はゾンビ化の魔剣より、魅了の魔剣に近そうだ。それでとりあえず斬れ」

「りょーかい!」


 即座に光の刃を展開して、ルナサは黒装束に向かって構える。


 バッカスは自分の分の楔剥がしを取り出すと、「光よ」と口にして刃を作り出した。


「また酷い頭痛で意識飛ぶかもしれないが、そこは勘弁な」


 告げると、クリスは無理矢理な笑みを浮かべながら両手を広げる。


「さすがの精神力だ。行くぜ?」


 クリスに向けて、バッカスは光刃(こうじん)を一閃した。

 物理的な作用の一切無い、呪いや術式を壊すことに特化した剣だ。


 クリスや黒装束がどういう原理で操られているのかは分からない。

 だが、ルナサの魔術を打ち消す魔術によって、黒装束が僅かな間だけ正気を見せたのだ。


 ならば、以前の魅了の魔剣による呪い付与と同様のことが起きているのではないかと考えた。


 そして、その考えは正しかったようで、クリスは糸の切れた人形のように力を失って、バッカスの方へと倒れてくる。


「おっと」


 それを受け止めて、大きく安堵した。


「さて、ルナサは……っと」


 そちらを見れば、黒装束の方も精神力と矜持でもって、ジッとしてるようだった。


「よし。そのまま堪えててよッ!」


 ルナサもバッカスと同じように光刃を一閃する。

 それを受けた黒装束も、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


 クリスと違って誰も受け止めなかったので、顔から石畳にダイブしたのは、些か痛そうではあるが。


 バッカスは受け止めたクリスを横抱きに抱きかかえて、ルナサの元へと向かう。

 そんなバッカスを見て、ルナサは訊ねた。


「これで一件落着かしら?」

「そうであって欲しいんだがな……」


 ルナサとバッカスは嘆息しあう。


「ところでルナサ、マーナはどうした?」

「検査終わってお屋敷へと帰る途中でクリスさんに襲われたんだけど、近くに騎士様がいたから預けてきたわ」

「騎士にクリス任せようとは思わなかったのか?」

「どうにも騎士様には見向きもしなくて、私とマーナさんを狙ってきたからね。軽く攻撃したら狙いをあたしに向け直したから、そのまま広場の方へ誘導したのよ」

「なんで?」

「だって、ここなら誰かいそうだったし。ムーリーさんのお店も近いでしょ? 騒動が起きたら誰かしら助けてくれるだろうなって。ギルドまで連れていくのはさすがに問題おきそうだしね」

「ほんと、成長したよなお前」

「なんかしみじみ言われるのムカつく」

「褒めてんだから素直に受け取れよ」


 半眼になってほっぺたを膨らませるルナサに、バッカスは苦笑する。


「事情聴取は二人が起きてからするとして……二人を操ったヤツの狙いはなんだろうな」

「マーナさんの可能性が高いわ」


 即答するルナサに、バッカスが目を(すが)めた。


「どうしてそう思った?」

「あそこでムーリーさんが抱えてる人、知ってる人が見れば似てないけど、知らない人からすれば似てる程度に近い容姿してるでしょ?」

「ああ」

「加えて、クリスさんは男性騎士を一切無視して、私とマーナさんを狙い続けた」

「なるほど。だが、近くにマーナがいたのに、クリスがお前を狙ったのはどうしてだ?」

「あたしが攻撃したからでしょ? バッカスだって黒装束とやりあってたじゃない。対象を狙いつつ障害となるモノの排除を優先する――って感じじゃないかな」

「……ふむ。一応、筋は通るか」


 ルナサの推測が完全に正しいとは言えないだろうが、考慮には値する。


「しかし、また楔剥がしが活躍する状況とかあんまり笑える冗談じゃねぇな」

「そうねぇ……とりあえず、また治療院かしら? あっちの人も連れて」

「だな。黒装束はどうすっか……」


 クリスはバッカスが、女性はムーリーが抱えているが、黒装束を抱えられる者がいない。


 どうしたものかと悩んでいると、覚えのある男が声を掛けてくる。


「バッカス。オレで良ければ手を貸すぞ」

「ストレイか、ちょうどいい。この黒装束を抱えてくれないか? 治療院へ連れて行く」

「わかった」


 うなずいて、ストレイは黒装束を自分の肩に乗せるように持ち上げた。

 それを見てから、バッカスはテテナに視線を向ける。


「あと、テテナ。お前も一応ついてこい。治療院で手当して貰え」

「でも大したケガは……」

「来い」


 遠慮がちのテテナに、バッカスはぴしゃりと言い放つ。


「この黒装束は誰かに操られてただけだ。だが、こいつ自身は職業暗殺者。武器に毒だなんだが仕込まれていても不思議じゃあない」

「なるほど。テテナ、バッカスの言う通りだ。お前も来い」

「わかりました……」


 ストレイにも言われたテテナは、大したケガじゃないのに――という様子ながら、ちゃんとついてきてくれるようだ。


「当然、ルナサもな」

「もちろん。今の話を聞いて行かないとか言わないわよ」


 うなずいてから、ルナサはテテナへと視線を向ける。


「テテナ。アンタ、毒に詳しいの?」

「え? 別にそんなコトないけど」

「じゃあなんで大したコトない大丈夫とか言ってるのよ。まったく」

「え?」

「遅効性の毒とかあるじゃない。明日になったら風邪っぽくなってて、明後日には五彩の輪に還ってました――とかあるかもよ?」


 ルナサに説明されて、ようやくテテナは理解したのか一気に顔を青ざめさせる。


「ほう。バッカス、ルナサの成長すごいな」

「だよな。こいつ自身、マジで色んなもんを貪欲に吸収してやがる」

「二人とも、若い子の成長に一喜一憂してるとさぁ、なんか急に自分って老いてきたなぁ……なったりしない? アタシ時々なるんだけど」

「なんてコトを言うんだムーリー!?」

「クソ! だが微妙に否定しづらいぞ!?」


 そんなやりとりをしている大人三人に、ルナサとテテナは何やってんだこいつら――という視線を向ける。


 そこへ、パタパタとミーティが駆け寄ってきた。


「すみません、わたしも行っていいですか?」

「ん? ああ。お前もケガがなくとも診てもらっとけ。そっちのやつのケガの手当してたんだろ?」


 結構な大所帯になった気がする――そんなことを思いながら、バッカスはいつもの治療院へと向かうのだった。


書籍3巻8/12発売です٩( 'ω' )وよしなに!

活動報告の方に表紙などをあげておりますので、そちらも是非ともご確認ください!

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