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負けず嫌いと、美味い話 2

本作のコミカライズ1巻

2024/06/25発売です٩( 'ω' )وよしなに


 その日、バッカスの家のリビングにあるテーブルに、不機嫌なような落ち込んだようなクリスとルナサがついていた。


 結局、ルナサのハイキックは通用せず、足を捕まれて場外へと放り投げられてしまった。

 しかしそれを見ていたクリスが、ルナサの代わりに勝ってやると意気揚々と挑み……そしてまた負けた。


 二人とも負けず嫌いである。

 こなくそー……と歯ぎしりしながら、何度も挑戦したのだが、結果はご覧の通りだ。


 バッカスの前世の感覚だと、1ロホークが3円ほどだろうか。

 挑戦に半銅貨が一枚……つまりは500ロホーク。日本円換算でおよそ1500円だ。


 この二人は躍起になって、それだけの価値のある半銅貨をぽんぽんとイーサンに投げつけていた。正直、見ててアホなんじゃなかろうか――とバッカスは思ったりもした。


 クリスとルナサの二人合わせて、5000ロホークは越える挑戦をしているので、イーサン的には酒さえ取られなければ負けても損のない状態になっている。


 さすがに、クリスはともかくルナサはそこまで金を持っていない。

 なので途中からはクリスが代わりに支払っていた。何がそこまで二人を駆り立てるのかは分からないが。


 ともあれ、他の挑戦者が何人もいたのを思えば、今日は青空武芸場は、一度や二度の敗北くらいでは赤字にならないことだろう。


 どうにもならないまま二人がボロボロとなり、完全に凹んだところで、バッカスは二人の課金を止めて、家に連れてきたワケである。


 その後のリアクションは、先にクリスが来たときと同じだ。


 テーブルに両肘をつき、手を組んで口元を隠すかのようなポーズで微動だにしない。

 目は半眼で、不機嫌さと悔しさと納得のいかなさと――とにもかくにも、そんな様々な感情を複雑に讃えた無表情という器用な顔をして固まっている。


 それをしているのがクリスだけでなく、ルナサもである――という点が、最初との違いというべきか。 


「二度目だし。今度は人数増えてるんだが?」


 嘆息混じりにバッカスがうめく。


「ここは落ち込みダメ女の流刑地じゃなくて俺の自宅なんだがなぁ……」


 文句を言いながらも、お茶と茶菓子を用意する辺りが実にバッカスらしい。


「でも実際問題、あのお爺さんについてどう思います?」

「難しいところではあるよな」


 落ち込み女×2とは別に、いつも通りの顔で席についてお茶を啜っているミーティの言葉に、バッカスは自分の下顎を撫でる。


 バッカスも落ち込み女×2は無視して、ミーティに向き直ると、花茶を傾けた。


「鋼体結界って、発生装置を複数身につけても、その仕組み上は統合されて、一枚の強度の高い結界になるんですよね?」

「ああ。その認識であってる」


 三度の攻撃に耐える鋼体結界を作る腕輪を二つ装備している場合、三回×2になるのではなく、六回×1という形に統合されるのだ。


 だが、どういう原理かイーサンは、三回×2という形で鋼体結界を発生させていた。

 その技術にはバッカスとミーティは大いに興味がある。


「原理に興味は尽きませんけど、攻略方法とかってどうですか?」

「そこもなぁ……ミーティ、鋼体結界は何枚張ってあると思う?」

「個人的に二枚かなぁ……とは思うんですけど、それだとクリスさんが二枚破壊したあとに攻撃が通らなかったコトに説明が付かないんですよね」


 うーん……と眉間に皺を寄せるミーティ。

 バッカスはそんなミーティに対して、自分の見解を口にする。


「俺は二枚であってると思うぜ。

 恐らく、鋼体結界は見抜かれるコト前提の防御手段なんだろうな。

 それが二枚重ねという時点で驚きだが、馴れてしまえば二枚壊すのも造作もなくなる。

 だからこそ、そこを抜けた先に、正体不明な防御手段が有効になるワケでもあるんだが」

「本命はそっち……というコトですか?」

「そうじゃねーかと俺は踏んでる。酒が欲しいなら、それを抜く必要があるが、見てる限りだと正体不明なんだよなぁ」

「本命の防御手段突破にモタモタしてると、鋼体結界が回復しちゃいますよね?」

「実際、何度目かのルナサはそうだったろ?」

「ですね。攻撃への耐え方が、途中から明らかに元に戻りましたもん」

「しかし、そうなると厄介だぞ。マジで攻略方法が見えねぇんだよな」


 どうしたモノかとバッカスは頭を掻く。

 クリスに任せていては、高級神皇酒『神桜輝山(しんおうかさん)』はいつまで待っても手に入らなそうだ。


 一杯二杯ではなく、ボトルでドンと貰えるのは大変ありがたい。是非とも美味しく頂きたいところなのだが。


 とはいえ、バッカス自らが挑むにしても、鋼体結界の先の攻略方法が見えない。


「試してみたくはあるが、さすがに内臓をぶっ壊すような技をぶちかますワケにもいかないしなぁ……」

「それが成功しちゃった時、大変なコトになりますよ?」

「分かってるよ。やらねぇって」


 口ではそう言うものの、バッカスは手加減して打ち込めば試せるかな?――などと考えていたりする。


 それが通用しない場合は、ちょっと手がないかもしれないが。


「鋼体結界――全身に魔力を纏う関係上、使用者の精神状況とか魔力状況の影響は大きかったはずだな?」

「そうですね。怒ったりすると枚数や強度増えたり、落ち込んだりすると枚数や強度が減ったりする報告はあったはずです」


 いくつか手段は思いつく。

 負けたところで、挑戦料はバッカスからすればそう高くもない。


「まだやってるようなら、ちょっと俺もやってみるか」



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