報告
「勝者!罪人の王、海琳!」
審判の叫びに、死合場に群がっていた観客の受刑者達は、一斉に雄叫びを上げる。
【罪人の王】が住む建物に隣接された野外の死合場で、毎月恒例の死合が行われていた。
四方を金網のフェンスが囲み、死合中には電流が流れ、相対するどちらかが死ぬまで出ることはできない。
そしてこの死合いは、死合場に設置されているカメラによって、本土の富裕層達の賭け事として楽しまれている。
もちろん、受刑者達は自分達の命が玩具として扱われているとは一切知らず、知っているのは【罪人の王】だけだ。
「これで十一勝!今回の罪人の王はつえーな」
「今までのやつらは二、三回で死んでる」
「俺も挑戦してみるか」
受刑者達の歓声に手を振ったあと、【罪人の王】海琳は隣接された居住区画へと向かう。
途中、部下が近づき、血で染められた上着を預かる。一瞬手にしていた刀に視線を移すが、海琳はいつものように血振りをすると、鞘に納め、腰にさした。
「見つかったか?」
「はい」
躊躇うことなく瞬時に質問の意図を察し、部下は答える。
「南西区画で該当する人物が目撃されたとのことです」
「それで?その女はどうした、まだ捕まえられていないのか?」
「は、はい。申し訳ありません」
部下の行動の遅さに、【罪人の王】は苛立ちを隠さなかった。その表情をみた途端、部下は死を覚悟したが、再び命令が告げられるだけで済んだ。
「明日までに俺の元に連れて来い。でなければ、俺が行く」
「あなたの元に、ですか?」
【罪人の王】の意図が分からず、間抜けな顔を見せる部下に【罪人の王】はうっすら笑う。
「送還する前に傷一つないか確認しておく必要がある。前に同じようなことがあったからな・・・その時は本土の人間に文句を言われ、報酬も一部削減された」
「!」
以前、同様の案件が発生した時、部下に任せて最終確認をしなかった結果、本土の人間から傷物にされたと、制裁を受けたことがある。
その際、それは事実だったようで、【罪人の王】の手で彼らを粛清した。
それを思い出した部下は、額に汗を浮かべながら佇まいを正した。
「承知しました。【罪人の王】の手を煩わせないよう、明日には連れてきます」
部下を一瞥すると、【罪人の王】は無表情で自室へと消えて行った。
誰もいない部屋に入るとソファに乱暴に腰かけ、両手で顔を覆う。
【罪人の王】海琳が、今どんな表情をしているのか、誰にも分からなかったが、零れ落ちた呟きは、ひどく感傷的だった。
「・・・・・瑠璃」