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第五話 魔獣ゴリラント

 未開の地、北10地区。

 北、南、東、西の4方向に未開の地は続いており、4パーティの勇者たちがそれぞれ受け持ち開拓を進めていく。

 

 俺は元々北区の勇者パーティだった。

 俺がいた頃は9地区まで行っていたはずだ。

 自分の力を慢心して先に進んだ挙句、敗北して病院送りとは。情けない。


 そもそも未開の地の開拓はハイペースで進められるものではない。

 9地区まで行くのでも2年かかったんだ。

 追い出した俺への当て付けだろうが……。


「カイトさんがいなくなってすぐに、ガイアさんは未開の地の開拓を強引に推し進め始めました。充分な準備もせずに……」


 木々の生い茂る密林を進みながら、ラキアが俺に話しかけてきた。


「どうしてそんな事し始めたんだ? 邪魔な俺がいなくなったんだ。悠々自適にやってりゃいいのに」

 

 枝葉をかき分けて進む。


 北区の特徴として、とにかく密林が続いている。たまに開けた場所があると思えば、すぐさま密林へと戻る。


「私も……それから恐らくガイアさんも感じていたんです。カイトさんの膨大な魔力に」

「なるほどね」


 嫉妬か。

 ガイアにしてはよく俺の成長性に気付いたな。

 ま、そんなことで命を張ってりゃ世話ないけど。


 北9地区と北10地区の狭間に辿り着く。

 ガイアの魔力の残滓(ざんし)が人間の頭部程のサイズでフワフワと浮いていた。

 これが到達したという目印。

 受付嬢に魔力の残滓を辿らせることで、どこまで行ったのかが明確にわかる仕組みだ。


「どの辺まで行ったらゴリラントは出てきたんだ?」

「10地区に入って最初の開けた場所で……ゴリラントの巣になっているみたいです」


 巣か……。

 3体ではすまなさそうだな。

 

 木々生い茂る土地を抜け出し、草木が全く生えていない土地に出た。

 所々に巨大な岩が置いてあり、中がくり抜かれている。まるで、誰かの根城であるかのように。


「さて、ここがゴリラントの巣か」

 

 くり抜かれた岩をまじまじと見つめる。

 ゴリラントの姿は見えないが……。


「カイトさん! 後ろ!」


 ラキアの呼びかけで後ろを向く。

 毛むくじゃらの二足歩行の魔獣、ゴリラント。

 鼻息を荒くして太い腕や脚を震わせている。


 ゴリラントは俺らが来ることを察知してあらかじめ配置についていたようだ。

 強靭な脚のバネを用いて突っ込んでくる。


 俺以外にとっては強靭だろうな。


「重力操作・下転」


 掌をゴリラントに向けた瞬間、ゴリラント周りの重力が変動し押し潰す。

 人間の胴体を遥かに超えるサイズの腕や脚を持ってしても俺が作る重力場から逃れることはできない。

 

「ゴァ……ッ!」


 全身から出血しゴリラントは地面と一体化した。


「す……凄い。カイトさん、いつの間にそんなスキルを……」


 ラキアは俺の横で羨望の眼差しを向ける。

 だが、まだ終わっていない。

 予定調和といったように周りからゴリラントが10体現れた。


「そんな! こんなにいるなんて聞いてません!」

「大丈夫だラキア。俺の横から一歩も離れるな」


 ラキアの頭に手を置いて安心させる。


 俺の重力場がまさか1箇所にしか発生させられないとでも思ったのか?

 常人の魔力量なら無理だろうが……。

 俺なら可能だ――!

 

「重力操作・強下転!」


 俺の周囲半径10m全てを作成した重力場に変える。

 ゴリラントたちは構わず俺への侵攻をやめないが、時すでに遅し。

 ズンッ、と地鳴りに似た音が鳴り大地共々ゴリラントがへしゃげていく。


「ゴ……ゴアァァァァァァァァァ!」

 

 悲痛の咆哮と共に、ゴリラントの体が薄く薄く、血という血が吹き出し大地を濡らす。

 俺の周りはゴリラントの死体と地割れだらけの地面が残った。


「やれやれ……この程度の相手に全滅とは……ガイアも情けないな」


 目をまんまるにしたラキアに俺は微笑む。


「よし、ゴリラントの首を持って帰るか!」

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