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第三話 勇者の仕事

 夜が明けて、俺はギルドに戻る。

 最強スキルを手に入れたとはいえ、ドラゴンの卵の運搬に失敗し、食用の卵を産むドラゴンを殺したとして、受付嬢から叱責(しっせき)された。


「王様より認められた勇者ですから、今回の件は不問にしますけど、こんなEランククエストで失敗なんて、次はしないでくださいね」


 真っ白いシャツに、黒いベストを着た赤髪の受付嬢は呆れたように話す。

 対する俺は、さほど気にしていない。

 最強のスキルがあるんだ。

 こと討伐系のクエストなら、俺に比肩(ひけん)する人間なんているものか。


「まあ、勇者パーティから追い出されたと聞きましたので……ショックはあるかと思いますが、気を落とさないでください」


 受付嬢には俺が落ち込んでいるように見えたみたいだ。

 確かに、昨日までは落ち込んでいたが、今の俺はやる気に満ち溢れていた。

 

「えーと、なんか手頃のクエストないですか?」

「手頃……ですか。カイト様1人でできるクエストですと……」


 カウンターに乗せられた大量の紙束をめくって、俺に相応しいクエストを選定している。


「これなんてどうでしょう」


 見せられたクエストは、《薬草の採取》、Eランククエストだ。


「ちょっと待ってくれ! なんだってこんなしょぼいクエストなんだ!」


 カウンターに拳をダンダンと打ちつける。

 周りのクエストを受けに来た人たちが俺を見る。

 俺が勇者パーティを追い出された話が広まっているのか、周りの目線は冷ややかだった。

 

「ですけど、カイト様は卵の運搬にも苦戦しておられましたし、今私が案内できるものだとこれくらいしか……」


 クソ……。俺の力を知らないからこんな戯言(ざれごと)を言ってられるんだ。


「もっとあるだろう! 魔獣の討伐とか、秘宝の採取とか、未開の地の開拓とか!」


 今俺が挙げたクエストはどれもSランククエスト。勇者の刻印を持つ者のみ行うことができるクエストだ。

 王様より認められた勇者は、その力を持って常人では行えないクエストを率先してやる義務がある。

 

 魔獣と呼ばれる、最近その存在が確認されつつあるという(うわさ)の魔王の手下討伐。

 王国の暮らしを豊かにするために必要とされる魔力のこもった秘宝の採取。

 そして勇者の仕事として一番重要なのが、未開の地の開拓だ。

 王国の周りはまだまだ謎が多い。その謎の場所から魔獣が襲ってきているため、未開の地の開拓は最優先事項として挙げられていた。


 今の俺ならそのどれもが余裕で行える。義務もある。


「勇者はSランククエストをやんなきゃいけないんだから、Sランククエストを提示してくれよ」

「と言われましても……。私にもクエストを受ける人たちの安全を守る義務があります。力量以上のクエストの提示はできません」


 ぐぬぬぬぬぬぬぬ。

 聞きわけのない受付嬢め。乳でも揉まなければ分からないのか。

 

 押し問答をしてもしょうがない。

 クルリと振り返って一旦ギルドを後にしようとすると、扉が勢いよく開かれて俺の前まで何者かが飛び込んできた。


「ラキア!?」


 ピンクの髪のおさげを揺らしながらゼイゼイと呼吸を乱している。どうしてそんなに急いできたのか。

 

「カイト……さん」


 ラキアは俺の姿を確認すると膝から崩れ落ちた。

 そういえば他の勇者たちが見当たらない。

 一体なにがあったんだ。

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