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現職の魔獣掃除人

 〜アトラス王国〜


 国王の執務室に宰相であるヴェンゲルが駆け足で入ってきた。

 第13代アトラス国王は嫌な予感がした。


「国王陛下、緊急事態です。エンティティ村において魔獣の発生を確認。エンティティ村の住人は既に全員殺されたとのこと」

「ついに我が国から再び発生したか……。魔獣掃除人ビーストスイーパートウゴウの派遣は?」

「既に出立しております。しかし、万が一の事を考え、突発災害緊急警戒配備を発令した方がよろしいかと」

「うむ。近隣諸国への連絡も忘れるな」

「ではそのように」


 再びヴェンゲルは駆け足で執務室から出て行った。

 国王の執務室を駆け足で出入りする、本来であれば無礼極まりないことだが、それすらも気にしないほどの急ぎな事案であることを物語っている。


 アトラス国王は仕事を一度辞め、持っていたペンを机の上に置くと一つため息をついた。


「前回の発生から6年……我が国では15年ぶりの発生になるのか……。国の情勢によって大きく出現率は異なるが、やはり防ぐこと叶わぬか……」


 魔獣が発生した際、その凶報は近隣諸国にまで伝わるように協定が結ばれている。

 それは例え戦争時においても遵守されるべき国際間の暗黙の了解である。

 それほどまでに魔獣の出現は世界滅亡の危機があるとされている。


(果たしてトウゴウが倒すことができるのか……。ロートルに次ぐ神獣を有しているが、彼の魔獣掃除人ビーストスイーパーとしての経験はゼロ。もし彼が敗れるようなことがあれば…………)


 国王の中で様々な思考が繰り返される。


(魔獣の存在は国民に秘匿にしつつ、エンティティ村は凶悪な魔物によって侵略を受けたと公表する。他に被害が出る前に討伐が最重要課題。万が一エンティティ村に生き残りがおり、魔人と魔獣を見ていた場合は…………処分する。魔獣の存在は知られてはならない。否、魔獣だけならば魔物だと言い張ることができるが、魔人と同時に見られた場合は……)


 一国の王として国家間の秘密を守るための判断としては正しいが、国民を守るべき立場の王としては愚の極みとも言える判断であった。

 しかし、その結果としてアトラス王国は魔獣の発生を数十年単位で押さえ込み続け、今日までの発展に繋がっている。

 故に13代目アトラス国王もまた、この判断に従わざるを得なかった。


「もしもトウゴウが敗れた場合は……彼に要請するしかないか……」



 〜アトラス王国郊外、エターナル草原〜


 黒いオーラを発する生物を従えながら、ラグナが歩いていた。

 まるで内側から心の力が漏れ出しているように、歪なオーラが付き纏っている。

 ラグナの服はすでに血で染まり、時間が経っているのか肌についている血痕は乾いていた。


「一目見れば分かる。お前が魔人、そっちが魔獣だな」


 まだ若干の若さの残る男が血塗れの男の前に立ちはだかった。腰に剣を一本差し、堂々たる佇まいで相手を見据えている。

 彼がアトラス王国の現魔獣掃除人(ビーストスイーパー)として指定されているトウゴウ=ユースティアだった。


 五ツ星の神獣を授かり、6年前他国に出現した魔獣討伐の際に殺された前魔獣掃除人(ビーストスイーパー)に変わり、国王陛下直々に指定された。

 普段は冒険者として活動し、3つの人類未到のダンジョンを攻略するなどの実績を持っている。


「なるほど、雰囲気が魔物や神獣とは違───」


 魔獣の腕が伸び、トウゴウの心臓を貫こうとしてきたが、トウゴウは半身にし剣を抜いて、その不意打ちを逸らしてみせた。


「人の話を聞く気は無しか……。堕ちた者はもはや人間ではないということだな」


 トウゴウはカードを手元に召喚した。



 ────────────


鉄壁の闘犬王(ウォール・バンドッグ)】☆☆☆☆☆ Lv37


 ○攻撃力2850

 ○防御力3600

 ○素早さ3040

 ○特殊能力2880


 スキル:物理攻撃無効アンヴァリアブル盾壁シールドウォール反射鉄拳アイアンナックル


 ────────────


 ロートル=ベルガードに次ぐ神獣の持ち主。

 他国でもトウゴウの実力の高さは評判に上がっている。


「……顕現!」


 カードから光が放たれ、体長2mは越すであろうガタイの良い神獣が顕現された。

 すぐさまトウゴウはカードを透かしてラグナの魔獣を確認した。


「……おいおいマジか」



 ────────────


水泥人形アクアゴーレム】★★ Lv18


 ○攻撃力3000

 ○防御力3000

 ○素早さ3200

 ○特殊能力3000


 ────────────


「二ツ星のLv18でこのステータスだと……!?」


 先程の不意打ちを思い出し、トウゴウは少しゾッとした。

 油断をしていたわけではなかったが、魔獣のステータスがこれほどまでとは思いもしていなかったのだ。


「他国の魔獣掃除人ビーストスイーパーを待ってる余裕は無さそうだな」


 トウゴウは改めて剣を構えて気合を入れた。

 己の全てを懸けて、魔獣に挑む。

 魔獣掃除人ビーストスイーパーとしての誇りを胸に。

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